第24話 生徒会室にて中継(実況つき)
生徒会室に備え付けられたテレビの画面には憤っている西園寺と他の風紀委員の姿が映し出されていた。
「西園寺の奴、怒り狂っているな。」
ポニーテールの長身の女生徒は、面白がっているような笑みを浮かべて画面に見入っている。
彼女は、生徒会長の
しかし、この学園で、りんごを守るべく西園寺に対抗するには生徒会の協力がぜひとも欲しいところ。
俺は宇多川と共に、石狩会長に頭を下げ、西園寺が何か仕掛けて来た時にはすぐに対応してもらうよう事前に頼んでいた。
そして、登校時、風紀委員の服装チェックに引っかかり、理不尽な呼び出しを受けた事をりんごから知らされた俺達は、
りんごの制服のリボンに小型カメラ、盗聴器を取りつけてもらい、その様子を生徒会室で中継し、いざというときは、彼女を助けに行けるように待機する事にしたのだった。
「りんご、頑張って!」
傍らの宇多川が画面の中のりんごを見守りながら、小声で呟き、ファイティングポーズをとっていた。
なお、宇多川は、昼休み学級委員の集まりがあったそうだが、体調が悪いなどうまく言って抜けて来たらしい。
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『でも、本当の事です。理事長に聞いていただければ分かる事です。それに、私と浩史郎先輩はそんな関係にはありません。私は家政婦としてシェアハウスに住み込みで働いているだけです。』
『信じられるものですか?一つ屋根の下に一緒に生活いて、何もないですって?しかもあの里見様が…!』
『信じられないのも無理はありませんが、事実です。
私は清い身体です。何なら病院で調べて頂いても結構ですよ?
確かに浩史郎先輩は今まで女性関係が派手な方でしたが、交際されてた方達のタイプは大人っぽい美人で、グラマーな方達ばかり。私と似通った部分が少しでもありましたか?』
『確かに…、里見様が交際していた女は皆Dカップ以上の巨乳ばかり。それに比べてあなたは…。』
画面の中の西園寺は眉間に皺を寄せてりんごの控え目な胸部をガン見して鼻で笑った。
『はい…。Bカップです。浩史郎先輩は私に対して女性としての興味は一切ありません。』
画面の中のりんごは神妙な顔で頷いた。
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「ぷぷっ。浩史郎の性癖が、風紀委員の議題に上がってる気分はどうだい?」
「るっせーな!恭介。」
俺は気まずい思いで、恭介に顰めっ面を向けた。
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『これはあまり使いたくなかったのですが…。』
『!?』
りんごはブラウスの胸ポケットに挿したペンを手に取り、高く掲げてカチッとボタンを押した。
『…君を初めて見たとき、俺の好みから一番遠いところにいる子だと思った。女だと思えない。つまり君は俺にとって『モブキャラ』でアウトオブ眼中だ。…頼むからこの話断ってくれ!』
ボイスレコーダーから俺の必死の叫びが部屋一杯に響き渡った。
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「おやおや、仮にも許嫁に対して、なんて言いようだ…。」
「ええ、本当に最っ低ですよね…。」
「い、いや、これは、勝手に許嫁を決められた直後で、りんごの事もよく知らなかったからで…!」
これ、こんな場面でも使い倒すのかよ…!石狩会長と宇多川の白い視線を受けながら、俺はゴニョゴニョと言い訳をした。
「ま、まぁ、今回は森野さんに想いが伝わっていないからこそ、その言葉に嘘はないわけだし、風紀委員を説得するには真実味があってよかったじゃないか。」
「まあ、な…。はあ…。」
恭介に苦笑いしながらそう言われたが、風紀委員との対決が終わった後、りんごと想いが通じる道のりは遠そうで、俺は嘆息するのだった。
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風紀委員の女子達がざわざわっとどよめく中、西園寺が呆れたように言った。
『あなた…、めちゃめちゃ嫌われてるじゃないの!』
『そうなんです。分かって頂けたようで。ちなみに、ここで浩史郎先輩が断ってくれと言っているのは、私が家政婦としてお仕えするというお話についてです。
これは証拠物件として風紀委員に提出させて頂きます。声紋鑑定でもなんでもして頂いて大丈夫ですよ。』
りんごはペンを近くの風紀委員の女子に渡し、西園寺の元に運んでもらっていた。
西園寺と風紀委員会幹部は、もう一度その音声を再生させて、頷き合った。
『そうね。里見様にはあなたに対して何の思いもなく、男女の関係にないということは認めてあげてもよくってよ?』
『そ、それじゃ…!』
西園寺の言葉にりんごが明るい表情になった時…。
『だからと言って、あなたが里見様に邪な想いを抱き、嫌われているにも関わらず、既成事実を作るため、同居を強要した疑いが晴れた訳ではないわ。』
『えっ!?わ、私は、そんな事…。』
西園寺に言われて、りんごは目に見えて動揺してしまった。
『怪しいわね…。では、風紀委員会内で決を採りましょう!
皆さん、この件に関して、森野林檎が有罪と思う者は立ち上がって下さい!!』
『…!!』
ガタガタッ!
勢いよく音を立てて、その場にいた風紀委員女子全員が立ち上がり、りんごを憎悪の目で睨み付けた。
「「りんごっ…!」」
一触即発の空気に、俺と宇多川は、同時に生徒会室の出口へ向かったが…。
「里見先輩はここにいて!!」
「はあ?!何でだよ!りんごが危ない時に…!」
宇多川に止められ、俺は声を荒げた。
「いざと言う時はあなたをスケープゴートにするつもりだけど、あなたが今りんごを庇うと、余計に風紀委員の女子達の嫉妬を買って、りんごの立場が危うくなるわ。りんごは私が守るから安心して?」
「ちょっ…待っ…!」
宇多川は、言うなり、会議室へ走って行った。
「くそっ…!!」
その後ろ姿を見送りながら、想い人の危機に何も出来ない自分が歯痒くて、俺は拳を握り締めた。
*あとがき*
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