第17話 償い
嫌な汗が滴り落ち、心臓が早鐘を打っている。
「浩史郎先輩……?」
「はい……。」
もはや、俺は下を向いたままりんごの顔を見ることができなかった。
「やっぱり見たんじゃないですか…。」
「……すみませんでした!」
気づいたら俺は床に手をついて土下座をしていた。
「えっ、何?今の研究の話全部嘘?カナダのなんたら大学って大学名まで出してましたよね!?」
りんごは驚愕の表情を浮かべ、俺を問い詰めてきた。
「す、すまん…。さっき読んでた本を書いた心理学者の在籍している大学がとっさに頭に浮かんで…。適当に研究の話を作ったんだ…。」
「よくとっさにあんな話でっち上げられましたね?そこまでして、どうして嘘を突き通せなかったの?
こ、浩史郎先輩?あなたはバカなんですかっ!?」
俺は容赦なく責め立ててくるりんごに返す言葉もなかった。
「す、すまん…。」
りんごは、事実をやっと受け入れると膝から床に崩れ落ちた。
「うわぁーん!!浩史郎先輩に見られたぁっ!」
「り、りんご…!」
真っ赤になって顔を膝に突っ伏し両手で膝を抱えると、そのままダルマのようにフローリングの床に横倒しになる。
「ううっ。恥ずかしい…。もう死にたいよぉ…。」
俺はそんなりんごに何と声をかけたらいいか分からず、取り敢えず謝り続けるしかなかった。
「いや、本当にすまない。なんと謝ったらいいか…。」
転がったりんごから呻くような声がした。
「嘘をついたのはともかく、見ちゃったのは事故みたいなものだったし別に浩史郎先輩が悪いワケじゃないけど…、ショックです……。ええ、所詮小ぶりですよ。とるに足らない胸ですよ。どうせ私だけが気にしてるだけなんです。いいんです。もう気にしないで放っといて下さい…。」
「い、いや、そうは言っても見てしまった方としてはいたたまれない気持ちになるよ。何か君に償いのような事をさせてくれないか?俺にできる事があったらなんでも言ってくれ。」
「できる事?」
「うん。君の気持ちが晴れるような事、何かないか?ああ、そうだ!限定20食の日替わり幕の内定食奢ってやるっていうのはどうだ?」
「日替わり幕の内…!」
床に転がっていたりんごの肩がピクッと揺れた。
お、これは好感触…!交渉成立か?
「それは魅力的だけど、なんかそれを奢ってもらう為に見せたみたいで、援交ぽくてなんかイヤですっ。」
くうっ、おしい…!まぁ、そうだよな。同じ理由で、お金をあげるのもダメだろうし、どうしたら…。
「もういいです。見られた人の気持ちは見た人には分かりません。しばらく一人に…。」
もはや、機嫌を損ねて追い出されそうになっていたところ、りんごは「あっ!」と小さく声を上げてこっちに向き直った。
「浩史郎先輩。だったら一つやってもらいたいことがあります!」
機嫌を直したどころか、爛々と目を輝かせてこちらに身を乗り出してきた。
うん。嫌な予感がする。
「服を脱いで裸になって下さい。」
ほらな。
あとがき*
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m(_ _)m
18話も同時投稿していますので、こちらもよろしくお願いします。
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