take・51
第七章
週明けの朝は、誰しもが憂鬱で、何故にこんな目に合わなければいけないのか、いっその事死にたい、などと思う。そんな朝だろう。
そしてここにも一人、そんな事を必死に考えている男が睡魔と格闘していた。
「あぁ・・・?、何だ朝か・・・、あぁ~・・・、死にたい」
昨日、日曜日は今隣に寝ている幼馴染の咲川早生に一日中振り回され、「俺昨日ここに来たんだけど・・・」と思いながらショッピングモールを巡り、夕飯は再びの手料理を食らわされ、入浴後は夜中までゲームに付き合わされ、そして最後は同じベッドで眠りにつかされるというハードスケジュールを強制的に執行させられていた。
「このクソガキ、ダンベルで殴るとかマジで頭イカれてるだろ・・・」
添い寝を拒否したところまでは記憶しているが、それ以降は記憶が無い。
このクソガキが今俺だと勘違いして抱き締めているダンベルで、おそらく殴られたのだろう。
「何で俺の周りにはこう、リアル犯罪者が多いんだ・・・」
人を平気で誘拐したり、思い通りにいかないというだけで鈍器で殴ったり。
高二になってから、寿命がどんどんと縮んでいる気がする。
「おい、起きろクソガキ。窓から放り出すぞ」
「う~ん、ダマレ。シネ・・・」
寝言ですら俺を罵倒してくるその姿勢は、流石としか言いようがないが、とにかく早くどいてほしい。
「起きろッ・・・」
「イヤだ・・・」
「起きてんじゃねぇか」
「あと五時間だけ・・・」
「昼まで寝てんじゃねぇよ。いいから起きろ」
「・・・、んん~・・・、ぬんッッ‼」
「おぁがぁッッ‼」
円○プロ直伝の目覚めの伸びが、帰ってきたと俺に力強く語りかけるように胸部を激しく蹴りつけ、早生さんはスッキリとした朝を迎えたのだった。
「おはよ‼善樹‼」
先程まで「あと五時間」だとか余裕をブッこいてた奴が、当たり前のように他人に罪をなすりつけながらリビングを走り回っている。
「何でもっと早く起こしてくれなかったんだよ‼」
「お嬢様自身が、昨晩「自分で起きる」と仰っておりましたので」
「そこはちゃんと考えて気を利かせるのが執事ってもんだろ⁉」
「申し訳ございませんお嬢様」
俺は一体何を見せられているんだ。
「本当に・・・、朝から元気なお子様だこと・・・」
「・・・」
「あら、おはよう善樹君。ちゃんと迎えに来たわよ」
本当に、朝から神出鬼没な蜜鎖さんだこと。
「おはようと普通に挨拶したいところだが・・・、そんな約束をした記憶は無いぞ」
「貴方の目が、そう言っていたわ」
「成程」
このタイプの女の子は、まともに相手をしてはいけないな。
「お待たせ・・・、ってお金持ちのお嬢様が、朝から一体何の御用ですかぁ~?
帰れよ」
昨日、同じような奴が一人いたような・・・。
「それ、誰がどの口で言ってんだよ」
「アタシは最初から善樹と暮らしてるから別に問題無い」
「いや暮らしてないから。お前ん家隣のクソデカい家だから」
「善樹ん家もそこそこデカくしてやっただろ」
「確かにそうかもしれないけど、その返しは返しとして成立してないから」
「お嬢様」
「あぁ~‼善樹行くぞ‼」
きちんと制服を着られていないまま、早生は急いで車に乗り込む。
その後ろを「やれやれ」と俺も続いて乗り込む。
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