take・14

まずは名前と活動内容、活動方針を決めていかなければいけない。一人でやっていくんだから、一人で何とか出来て、それっぽい結果の出るものでないと部活として存続出来ない。一人でこなせるものとなると範囲は狭まってくる。一人で・・・、ちょっと待て・・・、一人・・・。


「あ‼いた‼ちょっと善樹君‼私を置いていくなんてひどいよ‼」


アンタが俺に付きまとってるだけだろうが。


「あの、先生」

「悠紀でいいよ。善樹君だけ特別に」

「先生、もしかして部活って、何人以上いなきゃダメとかってあります?」

「もぉ~、善樹君ったらぁ~。わかった、教えてあげてもいいけど、一回悠紀って、名前で~、耳元で~、囁いてお願いしたら~、教えてあ・げ・る♡」


コイツマジデメンドクセェ・・・。


「悠紀早く言え」

「あん‼耳元でそんな刺激的ッッッ‼善樹君って、意外とSなんだねッ」

「どちらかというと先生に対してはDEATH(殺したい)じゃないかと」

早く言え。

「そうだね、最低三人はいないと、同好会にすらなれないかな。だから、校長から許可があっても、何か校外で参加するってなった時に参加出来なかったりしちゃうかも」


ダメやんそれ・・・。どうにかして部員を集めねば・・・。けどどうやって?友達なんていないし、ましてや新しいクラスメイトなんてもう全員に嫌われてるから絶対に入ってくれない。昔の知り合いなんかいないだろうし・・・。昔の知り合い・・・。


「奴がいるじゃないか」


 ここは一年の教室。窓から差し込んでくる日差しが、とても眩しい。黒板には、誰かが書いた落書き、机や椅子も乱雑になっていたりして、新入生らしい若さを感じる。そっと、窓を開けると、既に運動部が練習を始めていた。顧問の笛の音と共に、生徒たちの大きな掛け声と、シャーペンの先が俺の耳の内壁を、


「って痛いわ‼」

「随分と前置きが長いので端折らせてもらった」

「先輩の徳のあるお話を最後まで耳に納めろよ」

「黙れ。つーかなんでお前がここにいるんだよ?」

「それはな早生、お前に大事な話があるからだ」

「え・・・」


この時、咲川早生の心は、とてつもなくトゥンクしていた。未だかつてない程の、トゥンクを覚えていた。(言いたいだけです。すいません)


「な、何だよいきなり・・・、さ・・・」

「いいか、よく聞けよ」

「うん・・・」

「お前・・・」

「ッッッ・・・」

「俺の部活に入らないか?」

「は?」


この時、咲川早生の心の中には、沸々と湧き上がる何かがあった。未だかつてない程の、何かがあった。


「五百万で手ぇ打ってやるよ」

「はい?何で?」

「どうしようもないくらいお前がどうしようもないからだ」

「あの~、入部という事で宜しいでしょうかね」

「調子乗んなよテメェ‼アタシが何でもお前にホイホイ付いてくと思ったら大間違いだからなぁ‼この脳内大旱魃地帯が‼」


何か気に入らない事でもあったのだろうか?それともカルシウムが足りてないのかな?新入生も大変だな。


「頼むから入ってくれ、頼む」

「何で?」

「なんでも」

「アタシにメリットは?」

「何にもしなくていい」

「なんだそれ?部活の意味無いじゃねぇか」

「頼む」

「他に頼めばいいだろ」

「頼む」

「何でアタシなんだよ?」

「お前・・・、じゃないと・・・、ダメ?だから・・・」

「何で疑問形なんだよ」


「頼む‼早生‼お前が俺には必要なんだ‼」

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