シャヴォンヌ湖の白竜

らんた

シャヴォンヌ湖の白竜

「アンナ、くじ引きの日よ」


「分かってるわよ!」


今日の母の声はどこか鋭い。


オルモン=ドゥスーの村ではくじ引きで一年間村の近所のシャボンヌ湖の住まう白竜の世話をする「聖女」が決められるのだ。


そして当たってしまった……。


自分が。前任者のエマから引き継がれるのだ。


エマは肩の荷が下りたかのように自分に「後はよろしく」とか言う。


大丈夫かな~。


なんでも竜の好物は鳥の餌と同じだというのだ。本当かな。


翌日、アンナは シャヴォンヌ湖に行って掌に鳥の餌を載せた。


すると……どうだろう。白い煙を上げながら本当に雪のように白い竜が現れたではないか。


――君が1年間世話してくれる娘? よろしくね


(えっ? 直接声が響いた!)


――怖がることないよ。竜は人間の心と直接会話ができる能力を持ってる。人間の心を読み取ることが出来るんだ。


(へえ?)


――大丈夫。よっぽどの事しない限り。僕はなにもしないよ。さ、餌をおくれ


そういわれてアンナは掌を竜に近づけた。


するとなんと餌が竜の口に吸い寄せられるようにしていった。


――ありがとう。


そういうとお辞儀するではないか。


その後……湖に飛び込むと白竜は姿を消した。


(これでいいの?)


アンナはなんかしっくりこないまま村に戻った。


村人曰くオルモン=ドゥスーの村に他国の軍隊が攻め込まれたときに白竜は勇敢に守ったという。そのお礼として白竜が村人に要求したのが週一回「鳥の餌」か「少女の歌声」のどちらかだというのだ。もしこの約束を破ると湖からうなり声が上がるという。


アンナは隔週一回のペースで白竜の前で歌声を披露する。だからこの村では必死に教会で合唱を猛特訓してたのか。


――うまいうまい。なかなかだよ君の歌は


アンナと白竜の平和な日々はこうして続く。週に一回白竜の前で鳥の餌か歌声を披露する日々が一年間続くのだ。


(終)

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