第8話 新たなる世界へ

 転生・・・まさか本当に実現するとはな。俺を狙った相手のことは気になるが、今はその転生先の世界が優先だ。ファンタジー世界なら最高だ。


「それで行ってもらう世界じゃが、お主がこれまで生活していた文明とは異なる地での、大まかなことを説明しておく」


「はい!」


 おお、期待感が跳ね上がる。


「なんかえらいワクワクしておらぬか?」


 してるよ!


「まぁ、よい・・・その世界は『アルスガルド』と称されておるな。お主がいた星の半分くらいの大きさかの。様々な種族・・・人族、魔族、精霊族、亜人族など。人々を襲う意思のない魔獣もおる。」


「おお・・・おおお!」


 まさに、俺が夢描いていた世界。興奮が冷めやまない。


「ちょぉ、近い! 顔が近い! 実体のないお主に詰め寄られると、なぜか身震いするのじゃ」


 なんか、神様が俺から顔を背けガクガク震えていた。


「ああ、すまない。つい興奮して」


 興奮のあまり無意識で神様に触れそうなくらい近寄っていた。


「でじゃ、アルスガルドは大地や大気に尽きることのない魔力が常に生成されておる。人々はその恩恵を授かり様々なことに役立て生活しておる。じゃが、人々はその恩恵をすべて授けられるわけじゃないでの。生が宿った時点で恩恵を授けられる魔力保有量や属性が決まるのじゃ」


「じゃから、その魔力保有量・使用可能な属性数の差で優劣が決まってしまうのじゃ。こればかりは生後、魔力保有量を増幅したり属性を増やすことは不可能じゃ」


「なるほど・・・理解した。しかし、神様詳しいね」


「まあの、アルスガルドはワシの管轄じゃからな。しかし、お主は冷静じゃのぅ。こんな話聞いたら動揺すると思ったのじゃが」


「ええ、慣れてるんで!」


 そら、さんざんこれまでアニメ・漫画や小説で見てきたからな。許容範囲だ。


「慣れておる? お主の世界はこういう文明じゃないはずなのにのぅ。管轄じゃないからよくは知らぬが」


「アルスガルドのような世界が架空で表現されていた。といえば理解できると思う。それを俺が興味を持っていたという訳」


「なるほどの・・・おっと、お主の魂の揺らぎが弱まっておる。もう時間もないから手短に行くぞ」


 言われて魂を見ると、確かにさっきより青白い炎の勢いが小さくなっている気がした。


「了解!!」


「お主にこれを授ける」


 そう言い放った神様は宙に手をかざし、その先に直径50㎝ほどの空間が開いた。その穴に手を差し入れ、そこから直径3cmほどの小さな球体のようなものを取り出した。それは、とても美しく虹色に輝くものだった。


「なんだ、それは?」


「これはじゃな、種じゃよ」


「種?」


「うむ、この種は『マテリアルシード』と言っての、アルスガルドの生物はこの種を魂に宿して生まれてくる。先ほど述べた魔力保有量と属性に大きく関わるものじゃ。むしろ、これがないと魔力を授かることは一切できん。この種を媒体とし主となる大地・大気からの恩恵を授かり具現化させることを『マテリアライズ』と敬称されておるのじゃ」


「なるほど。マテリアルシードにマテリアライズか・・・いいね!」


「例えば、この種が真っ赤なら火に精通し火の魔法や火の扱いが得意となる。他も似たようなものじゃな。水なら青、風なら緑とかな。複数持ち合わせているなら種の色が混じりあうか、色が分離した状態になる。その辺は魔力保有量や適性値で変わる」


「じゃあ、この虹色の種はどういうものなんだ?」


「これはの、全ての属性に適合し魔力保有量はほぼ無限じゃ」


「無限!? そんなすごい物を俺にくれるのか!」


「お主は、何かの陰謀に巻き込まれたか、もしくは存在そのものが疎ましくなり消されたかもしれないからの。もし、生きていることに気づかれたらまた狙われるじゃろうて。じゃから、超例外的な特別な計らいじゃ。遠慮なく受け取れ」


「ありがとう」


 これは、チートキャラになれるのか? 俺としては初めは弱く絶えず努力して天を頂く展開の方が好きなのだが。


「じゃがの、それはあくまでも素質の原種であって、活かすも殺すもお主次第じゃよ。最初からうまくいかんぞい。頑張るのじゃな」


「ああ、わかった。望むところだ!」


 よしよし、理想の展開だ。俺は武者震いした。


「最後に1つ忠告しておく。魔力量が無限に近いことだけあって、いたずらに魔力を行使すると制御できず超特大暴発するからの。物心ついて魔力制御が可能になるまで、絶対に安易に使うでないぞ」


「お、おお・・・分かった。というか、物心? そういえば転生後ってどんな感じになるんだ? 今の記憶も消えるのか?」


「ああ、それ伝え忘れていたの」


 忘れるなよ! そこ結構重要でしょ。


「記憶はきえん。じゃが、赤ん坊に転生するからある程度成長しないと、思考も身体もうまく働かぬぞ。あと、これから生誕する赤ん坊に転生するのじゃが選ぶことは不可能での・・・まあお主なら問題ないじゃろ。環境悪な場所に転生はしないから安心するのじゃ」


「選べないのに、なぜそんなことが分かる」


「神じゃからの」


 納得いった!


「よいか! 制御できるまで安易に大規模な魔法は使うなよ。お主自身や大切な人を巻き込む可能性も十分にあるからの」


「了解。肝に銘じておくよ」


「では、始めるぞ。ワシの前に立つのじゃ」


言われるがまま俺は神様の前に立った。すると神様があの虹色の種を手に携帯し、それを俺の魂の元に近づけた。


「目をつむれ!」


 目を閉じて数秒後、神様の手から温かく全身を優しく包まれたような波動が伝わってくる。


 すると魂が大きく燃え輝きだすのが目を閉じていても分かった。


 その直後、徐々に意識が遠のいていく・・・



 あぁ、俺は本当に念願の転生をすることになったんだな。誰に狙われたのかは分からないけど、とにかく次はそいつに殺されないよう圧倒的に強くなってやる。そして、これから出会う大切な人たちを必ず守り抜く。その為の力は授かったんだ。絶対に無駄にはしない。待ってろよ! 俺の第二の人生・・・最高の・・異世界転生人生を・・・おう・・か・・・して・・・・・やる・・・・・・・



 光に包まれ神界から去り新たな世界へ旅立つ蓮は、そう心に誓ったのだった。


「頑張るのじゃぞ。ここで見守っておるからの」



                                序章 完




________________________________________


 

 これにて、序章は完結です。いかがでしたか? 私なりに「転生しても妹の愛は不滅だった」の序章でこれから本編に向かう異世界編で主人公の性格や今後どういう生き方をしていくのかある程度纏め上げましたが、うまく表現できていたでしょうか。


 暫くは、妹・凛の出番はありませんが、くだらない登場のさせ方はさせないよう愛着を持って執筆していくので、今後もこの作品をご閲覧していただければ幸いです。


 閲覧していただいた読者様方、ありがとうございました。それではまた1章でお会いできればと思います。

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