第151話アフター3 遊園地とこれまで……3
などと話していると注文していない料理が届けられた。
イタリアの隣国であるフランス料理などでいう前菜なのだろうか? でもコース料理を頼んでいる訳ではないのだが……
「前菜ですかね?」
「お通しかな?」
「突き出しでしょ」
妹と酒飲みは学が無いようだ。
「三人とも残念。でも強いて言えばコータローが近いかな? これはアミューズですよ」
「アミューズってアミューズメディア総〇学院の?」
「そこは普通にアミューズメントパークの? とかでいいでしょ!」
「はいそのアミューズです。アミューズは『楽しませる』と言う意味があり、お店によってはアミューズブーシュ『一口の楽しみ』やアミューズグール『動物の口』と言う事もあって、共通することは、そのまま食べられるモノで尚且つ料金が掛からないサービスなんです」
「料金のないお通しみたいなものってことね」
「フルコースの場合二種類以上のアミューズが提供されることがあって、アヴァンアミューズ、アミューズブーシュなんて言われます。1970年頃の新しい料理運動……ヌーベルキュイジーヌというものがあって、和食の先附を元に生まれた50年ほどの文化なんです。基本的にフォークやナイフ、スプーンと言った食器は使わずパンなら手摑みで、櫛にさしたものであれば櫛を摘まんで、匙に乗ったものはそのまま食べれば問題ありません」
「さすがトモエちゃん博学ね……あっ美味しぃお酒が進むわ!」
そういうとアミューズを肴にワインをガブガブ飲んでいる。
「食べ慣れない味ですけど美味しいです!」
「美味っ!」
美味しいのだが、後の料理の事を考えてかはたまた予算の問題かコクが強いものはない。
アミューズを食べ終え談笑していると、何故かマヨネーズが添えられたパエリアが出て来た。
ネットで調べてみるとアイオリソースと呼ばれる。ニンニクとオリーブオイルとマヨネーズなどが混ぜられたものが添えられることもあるらしい。
それの簡易版といったところだろうか?
初めてパエリアと言う存在を知ったのは、バカな高校生(CV下〇紘)が出てくる作品で、主人公の好物として出てきて数年後ピザの出前で食べたのが初。今回食べるパエリアも10回以内の食事だ。
量が少ない事はなんとなくわかっているので、サイドメニューを頼んでおいてある。また脂モノということもあって師匠は赤ワインを追加注文している。
予想通りというか案の定パエリア一皿(一皿で二人前扱いで二人前からしか注文できない)では腹は満ちず。かといってこのレストランでは追加注文は、サイドメニューとドリンク類しかできないので、他のレストランで海鮮を食べて昼食を終えた。
「梯子しないとお腹いっぱいにはならなかったわね……」
「でもこれなら海鮮から行ったほうが味が良く分かって良かったかもしれませんね……」
「病み上がりにはキツイです」
「俺はまだ余力ある感じですけど普段の探索を考えると十分かなって……」
探索者二人は「ああ……」と言いたげな目をしている。
「え? 何かあるんですか?」
――――と事情が呑み込めない妹だけが、困惑の表情を浮かべている。
「それはですね。コータローくんはダンジョンに潜るときはあまりご飯を食べないんですよ。カロリーバーと水やエナジードリンクなんかを軽く食べながらダンジョンを探索をするんです。で本格的な食事を取るのはダンジョンを出た後、いっぱい食べるんですよ……」
「つまり、戦闘中に気分が悪くなって戻したり、空腹で本来のパフォーマンスが発揮できないという最悪の事態だけを避けるような食事を取って居るのよ」
「他の探索者は違うんですか?」
「おにぎりとかサンドイッチを持ち込む人もいるわね」
「コータローの食事の中の娯楽はチョコ菓子とドライフルーツぐらいね。腹持ちがいいとか疲労回復効果があるからって、本人は食べているみたいだけど……」
「お兄ちゃん。ご飯ぐらいはしっかり食べようよ……」
――――とジト目で見られてしまう。
「劇場でショーやってるみたいですね」
「子供だましなショー見る必要なくない? 海側のエリア行きましょうよ」
「あ、売店とアトラクションが一つ無くなってる……」
「ああここなぁ10年ぐらい前はあったよな……記念メダル売り場があってお前強請ってたもんな」
「――――っ!」
顔を真っ赤にして起こる桃華、だが全く怖くな。
「ほらあそこにハビエル城……日本史で有名なハゲ、フランシスコ・ザビエルの生家の城があるぞ……」
「10世紀頃の城で礼拝堂と要塞としての側面を持ち、ザビエルの父はナバラ王国の宰相でした……ナバラ王国は、スペインのバスク地方に相当し自治が認められています。場所はイベリア半島のくびれの大西洋側です」
流石詳しい。
「えー灰かぶり姫城のが綺麗でカワイイ……」
「城塞に何を求めているんだ? 日本の山城はそんな見てくれよくないだろ? 平城のが美しいのは世の常なんだ」
「での山にあるノイヴァンシュタイン城は綺麗だよ? ってアレ? 海賊のアジトに乗り込むアトラクション無くなってる!?」
建物と船の発着地点である大型のガレイ船は残っているのに、下のレールが切り取られ船の一部も水が抜かれているのだ。
「千葉のピーターっぽいのがインスタントに遊べて良かったのに……」
「諸行無常の響だね……」
「っていうかこのエリアのアトラクション半分ぐらいしか原型とどめてないじゃん!」
「このエリアもスペインの街並みを再現したエリアも閑散としてますよ……」
「まぁアクセス悪いですし、仕方がないですね……」
「そんなぁ~~」
妹の悲しそうな声がパーク中に聞こえた。
………
……
…
豪奢な部屋の革のソファーにどっしりと腰を下ろした人影は、唸るような声音で部下と思われる人物に静かな怒りを露わにした。
「『テラ』……異界への進攻はどうなっているのだ? 最近は報告が少ないが……」
パイプから口を離し、ふーっと紫煙を部下に吹き付ける。
不快な顔一つすることなく、部下は淡々と報告を続ける。
「森猿と穴猿の協力を得た原住民の抵抗が激しく、進捗状況は予定を下回っております」
「我が所有する揚陸城も奪われたと聞いているが……」
部下は怒られるなら纏めて報告しようと思ったのか、現場からの報告を伝える。
「はっ! どうやら秘宝の模造品を森猿共が作り出したらしく……雑兵共では兵力として十分ではないようで……つい先日も生物兵器を誤って流出させてしまったようで……」
バン!
――――と机に握り拳が叩き付けられる。
「生物兵器の一つや二つどうでもいい! 儂は結果を持ってこいと言っておるのだ!!」
「はっ! 申し訳ありません。『テラ』側で秘宝が選びし、英雄と思われる人物の魔力が観測されました」
「ダエヴァ共め! 遂に
「かの秘宝は、英雄のなかの
「……フン。所詮は御伽噺だ。たった一人優れた戦士が現れた所で戦局をひっくり返すことは叶わぬ事よ……儂が直々に動く前に騎士を投入せよ! 御伽噺に過ぎぬ事……だがワシは兎を狩るのに全力を出すほど追い詰められても、落ちぶれても、おらぬ! 最適な力で打倒してこそ獅子の姿よ……」
「はっ。流石は大将軍閣下でございます。ではそのように……」
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