【完結】道真様は異世界に飛んでも満喫〜ご祭神の転生スローライフはワックワクドッキドキ!!〜
櫛田こころ
第1話 天神様のお仕事
今日も今日とて、参拝してくる人間は数多くいる。
私も、もとは人間だったが……それははるか昔。
太平の世となった今より……はるかに昔のことだ。
経緯は色々あったが……今の私は、『天神』とも呼ばれる神の一端と言う存在だ。
人間は貪欲の塊とも言われているが……私とて、人間だった時は神に縋りつきもしたさ。
その神の一端に、己が成るとは思わなかったが。
『……穢れがまた溜まっているね?』
社の一角……絵馬などの、願いが集まる場所。
その場所は……定期的に穢れが溜まってしまうのだ。
今の人間らには、基本的に霊力があまり無い。
多少はあれど、気づかず力を発揮しない者がほとんどだ。
だから、この社の神自身である私が祓わねば。
気に入りの扇子を持ち、その場で仰いだところ。
何故か、いつもとは違って……一陣の風が吹いたのだ。
『……くっ!?』
私が吹き飛ばされる?
穢れが思った以上に……濃く溜まっていたのか?!
確認しようにも、風は私を吹き飛ばした。
本殿まで飛ばされるかと思ったのだが……何故か、途中で意識を失っていた。
目を開けた時には……むせ返るような、濃い梅の香りを感じたのだ。
「……ここ、は?」
社でもどこでも無い。
深い森の中のようだが……私が居る場所は、どうやら大樹の根だった。
たしか……宮司らが観る『テレビ』とやらで、少し覗き見た『縄文杉』とも似ているほどの……素晴らしく大きい樹の根の上に居たのだった。
だが……周りの風景とやらが、社でも日本でないことがわかった。
見たことがない、キラキラと輝く動物に植物。
浮かんでいるのは、光か何か。よく見れば、羽の生えた小さな小人のようなのが楽しげに仲間と語らっていたのだ。
加えて、私の居る樹のところも……いくらか輝いていた。神々しい御神木とも言えるような具合に。
とくれば、これもテレビなどの知識を借りれば……思い当たることが出来た。
「……アニメとやらでもあった、『異世界』とやらか?」
転生か転移かははっきりしないが……どうやら、私は異世界に来てしまったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます