当て馬ポジションに転生してしまった件について

かんな

一章 〜全ての始まり〜

第一話 『前世』

唐突だが、私には前世の記憶がある。それは小さい頃から。昔は不思議だった。だって知らない女の子の夢をいくどもなく見せられたから。



最初はただの夢だと思っていた。だけど、ただの夢だとしたら妙にリアルな上に……今日見てしまったのだ。自分の姿が漫画の中に出ていることに。



それに凄くびっくりしたし、どうして……?とそう思った。そして、ふっと思ってしまったのである。私はもしかして転生してしまってこれは前世の記憶なんじゃないのかーー、と。



それは憶測に過ぎないし、違う可能性が大だろう。とゆうかそんな非現実なことがあってたまるか、とそう思っていた時期が私にもありました。だけど……父と母の薦めで白鷺学園にしなさい、と言われて、パンフレットにデカく書いてある『白鷺学園』という文字を見たそのとき、脳裏の中に秘めていたモヤモヤがパァーと晴れていった。



これ『貴方に花束を』に出てくる学園の名前と同じだということに。そして私の名前は漫画に出てくる城ヶ崎透華に転生したということにも気づいてしまったのだ。



何故学園の名前を見ただけで前世の記憶が蘇ったのかはよく分からないがとりあえず胸のモヤモヤは解消することが出来てスッキリしたはしたけど……よく考えたらこの状況がヤバイということに気付いてしまった。



だって……私が転生してしまった城ヶ崎透華って……将来逮捕される運命じゃん!と心の中で叫んだのだった。



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城ヶ崎透華は悪女だ。我儘で傲慢で、それでいて自分の可愛さを武器にして、男どもを誑しこむ姿は正に芸術だった。



そんな彼女も、伊集院冬馬ーー通称王子という作中で一番カッコいいキャラに惚れていた。持ち前の色気とテクニックで冬馬を惚れさせようとしたが見事に失敗。そんなイライラをぶつけるのにちょうどいい相手がいた。その相手は物語の主人公である月坂美穂だ。



美穂は高校から入ってきた女の子であり、お嬢様が多い中の庶民な上、王子より良い成績を取って女子に興味がない王子が唯一同い年の女の子を認識したことで更なるイライラが募り……嫌がらせをしてしまった。



だけど、その様子を冬馬本人に見つかり、軽蔑な眼差しで見られ、最悪な形で透華は認識されたのだった。そしてその後はというと反省して美穂に直接嫌がらせをすることはなくなった。



だが、それはあくまで表だ。直接的な嫌がらせはしなくなったが嫌がらせはなくならなかったし、主人公に逆恨みしていた程だ。そんな様子を学園の理事長の孫に見られ、論破され、見事に底辺まで落ちていった。



底辺まで落ちていった彼女は、それでも美穂に恨み続け、挙げ句の果てに美穂を刺そうとしたのだが……冬馬が美穂を庇ったのだ。そして見事な犯罪者になった彼女は牢屋行き。そしてその後の彼女の経緯は語られていないから分からない。でも、きっと惨めな生活を送ってるんだろうなぁ。家族にも見捨てられただろうし。



そして漫画のラストは……冬馬は意識不明の重体だったが奇跡的に目覚めてその後は結婚してめでたしめでたし、といった感じだ。それはハッピーエンドなのだが、透華に転生してしまった私にはそれどころの話ではない。



「うん、決めた」



主要キャラにはなるべく関わらないようにしよう。そっちの方が私にも主要キャラ的にも良い筈だ。私という障害がいないんだからもっとスムーズに話が進むだろうし、二人の恋愛模様を遠くで見ていたい。



「よーし、二人を見守るモブに徹底するぞー!」



と言っても、美穂ちゃんはまだ出てこないんだよね。漫画の話は高校生からだし。今は中学一年生だから美穂ちゃんが出てくるまでまだまだ時間があるから見守るのは先の話になってしまう。



「まぁ、王子は女に興味がない設定だから変なことしなかったら認識すらしてもらえない筈だし……」



うん、大丈夫だな!これが『フッ。俺に興味がないなんて……面白い女』という性格なら確実にこの学園に入学なんてしていないし、両親に無理を言って変えて貰うけど。



「まぁ、こっちが変な動きしなかったら大丈夫しょ!」



と私は楽観的な考えを持ちながら入学式を迎えたのだった。

 

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