第12話 ドスケベ淫乱暗殺者の登場。
「せんせ。せんせ♡」
股間をクチュクチュといじりながら近寄ってくるミスト。
「な、何だ?」
「せんせに会えなかった時が長すぎて……もう、我慢できないんです……♡」
「な、何が……?」
「せんせのお〇んぽ♡」
クラッ……。
こいつ、言いやがった……!
直接的な単語を、遂に言いやがった。この凌辱ゲーの世界でいつかこういう人間があらわれるとは思っていたが、遂に目の前に現れてしまった……!
このミストというキャラは女キャラでありながら、クライスの味方サイドに位置するキャラである。
凌辱ゲームの定番として、主人公の目的のために協力する女キャラというのが存在する。
凌辱されるヒロインにデマを吹き込み、周囲から孤立させたり、ヒロインと親密になったところで監禁し、主人公に引き渡すという、凌辱という一点の目的を達成することにおいて、かなり便利な立ち回りをするキャラクターだ。
そう言ったキャラは大抵主人公に本編開始前に調教され、忠実なしもべと化したキャラクターでありミストもその
クライス・ホーニゴールドが、ナグサラン王国を転覆させるために手を借りている隣国———ニア帝国。そこの暗殺部隊の病弱な落ちこぼれで、病にかかっていたところをクライスに治療———という名の調教をされ、体は完治したが精神はズタボロに破壊されてHなことしか考えられない性格と変わり果ててしまった。
ドスケベ
「せんせ♡ せんせ♡ 早く頂戴♡ あのダークエルフに出した精子の残り物でいいから、早く私にゴックンさせて♡ もう我慢できないの♡」
頭が痛くなってくる。
どうしていきなり発情してるのか。
夜が明けたばかりだぞ?
それに、昨日の夜俺がアリスと寝たと思い込んでいるし……。
ただ、マッサージを受けていただけなのに。
「早くせんせの立派なお〇んぽ見せて♡」
「見せない」
「どうして?」
「外だし朝だし、疲れることはやりたくない」
「外出し? 朝出し? 寝起きのモーニング顔面ぶっかけフェラがしたかったの?」
「頼むから俺に理解できる言語で話してくれ……」
ベロを突き出して、指でわっかを作り口の前で前後させる。完全にAV女優の仕草だ。
「……そんなことより、お前はここで何をしてるんだ?」
ミストのペースに合わせてばかりだとずっとドスケベなことばかり言われてしまう。ので、話題を打ち切る。
つれない俺の態度に若干気分を害したようで唇を尖らせて、股間から完全に手を放す。
「ぶ~……報告ですよ。ニア帝国軍本隊が明日の深夜にシーア村に到着予定。だから、それまでに少なくともレン・ナグサランは無力化をしておけ、と〝あの男〟からのお達しです」
肩をすくめるミスト。
その口調からするに、ミストが言う〝あの男〟のことを彼女は嫌っているらしい。
そんなことよりも———聞き逃せないワードが出た。
「〝本隊〟って……もう来るのか?」
「ええ、計画通りでしょ?」
あっれぇ⁉ そんなシナリオだったっけ⁉
「スレイブキングダム」のシナリオ―——それはクライスが自分を不遇な目に合わせたナグサラン王国を転覆するために、隣のニア帝国の力を借りて、王女たちを犯し、国を内部から崩壊させると言う流れである。
そのためにまずレン、ルリリ、アリスのような国にとって重要なポジションにある女の子たちを「人体支配」の力を使って無力化、からの精神をすり減らさせての洗脳。
そして、性奴隷化。一人を奴隷化させたらまた次の女の子を奴隷化させ、全てのヒロインを奴隷にしたら、ニア帝国の軍隊がナグサラン王国を侵略し、男は殺され女は犯され、性奴隷国家を設立される。その後、レンたちはひたすら男に奉仕しつづけるシーンが流され、最後は大乱交パーティで占められるという———まぁ、普通に地獄な光景でエンドクレジットが流れるゲームだ。
だから、いずれ侵略軍が来るとは思っていたが、時間はかなり余裕があると思っていた。
「マジかよ……まずいな……」
ニア帝国の軍隊はゴブリン・ゴーレム・スライムのような魔物も使役する大規模な
それらを撃退するには
あいつが
俺がなんとかするか?
だが、「人体支配」がどこまで能力を発揮するかわからない。俺にとってまだフルポテンシャルがわからない未知の力なのだ。
クライスは本当に劇中ではエロいことにしかこのスキルを使っていなかったので、魔力をブーストする効果があるなんていうのも昨日初めて知った。
それに〝人体〟を〝支配〟すると名が付いたスキルなのだ……魔物に
「まずい? 何がまずいんですか? せんせ」
「あ」
考え込んでいると、ミストの眉間にしわが寄っているのに気が付いた。
明らかに俺を怪しんでいる。
「いや、早すぎる、と思ってな……実はルリリ姫に俺の本質を見抜かれて、拒絶をされている。城の人間の信頼をまだ勝ち取れていないんだよ」
「大丈夫ですよ。せんせなら。せんせみたいに強くてかっこいいオスならすぐにメスはメロメロになります♡ それに早速姫のメイドのダークエルフを手籠めにしたみたいじゃないですか♡」
オスとかメスとか……言い方が動物的……。
それに目にハートマークを作って俺を見ているが、クライス・ホーニゴールドはデブでブサイクだ。全く強そうじゃないしカッコよくもない。
そう思わされるまでに、彼女はクライスに調教されてしまっているのだ。可哀そうに……。
「いや、アリスとはまだ寝ていない。じっくりと計画を進めているんだ。だからまだ時間がかかる……ミスト、〝あいつ〟に本隊の到着を遅らせるように言ってきてくれないか?」
「嫌です。だって私、〝あの男〟のこと嫌いだもん! 私乱暴な奴は嫌いなんです。マッチョだし将軍だからって偉そうにして! せんせの親友じゃなかったら、殺してましたよ」
そっぽを向いてしまう。
しかもいつの間に抜いていたのか、抜き身のナイフをくるくると指先で回している。
よほど〝あいつ〟が嫌いらしい。顔を合わせたくもないほどに。
だが、それでも明日にニア帝国の軍隊が侵略するのはまずい。流石にいろいろ準備がしたい。
俺は手をパンッと合わせる。
「ミスト! 悪いが〝あいつ〟に頼み込んでくれ! レン・ナグサランを攻略するのにまだ時間がかかりそうなんだ。情けない話ではあるけれども、今、来てもらうと失敗する可能性がある! だから、頼む!」
嘘を交えつつ、誠意を込めて頼み込む。
ミストはクライスの忠実な奴隷だ。
だから、これだけ言ったら、聞いてくれるだろう。
そんな———愚かな期待を抱いていた。
「———え、あなた、誰です?」
低い———敵意がこもった声だった。
「え?」
顔を上げる。
そこにはまっすぐにナイフの切っ先を向けるミストの姿があった。
「先生はそんなことを言わない。〝頼む〟なんてことはしない、先生はいつも私に〝命令〟をするだけ。逆らったらおしおきをして、絶対に私に言うことをきかせるの。重ねて〝頼む〟なんてことは絶対にしない! 絶対に私のことをそんな人みたいに扱う弱いオスじゃない。メスをおもちゃとしか思っていない絶対的な支配者! それが先生なの……それなのに……もう、一度聞きます」
彼女の瞳には———確かな殺気が宿っていた。
「あなたは一体、誰ですか?」
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