みっくすじゅーす。
だずん
第1章 みんなが大好き
第1話 はじまり
私は
これは決して果物のことじゃない。
果物みたいに甘いけど、それとはまた別の甘さ。
――キーン、コーン、カーン、コーン。
4時間目の授業終了を告げるチャイムが聞こえてくる。
緯度やら経度やらの話をされてよくわかんなかったから、また後で復習しないとだなー。まだこの中学に入ってから1か月も経ってないというのに、もう難しい内容が出てくるだなんて。この先ちょっと不安だなー。
そう思いながら社会の教科書とノートをパタンと閉じて机にしまっていると、前の子が振り返って私を見る。
「ねーねー、クッキー作り楽しみだね! 次の授業終わったらクッキーだよ! クッキー!」
そう言って机の上に戻した私の手を握ってくるのは、
葡萄は幼稚園からの幼馴染で、こういったスキンシップを取るくらいには仲がいい。髪は短めだけどボーイッシュってわけでもなくて、ちゃんと可愛らしさが感じられる。背も私よりちっちゃい。こうやって食い意地が強かったり、興味がある事にすぐ飛びついたりするところもまたかわいいと思う。
そんな葡萄が私は好き。
「いやいや、そんなすぐ食べれるわけじゃないからね? まあ楽しみだけど」
「え、りんちゃんたちクッキー作るんだ! 家庭科部いいな〜」
私の後ろで友達と立ち話をしていた
いちごちゃんも背がちっちゃくて、顔がまんまるで、いつも愛嬌のある笑顔を見せてくれてかわいい。いま見ててもやっぱりかわいいなぁ……。
そんないちごちゃんが私は好き。
すると、いちごちゃんと立ち話していた友達もこちらを向く。
「え、ほんまに!? うちもクッキー食べたいんやけど!
この子は
そんなみかんちゃんが私は好き。
「でも基本やってるの裁縫とかだし、それ目当てで入ったら大変じゃない?」
私はみかんちゃんにそう忠告する。
お菓子作ったりするのは月に1回らしいからね。だから今回のお菓子作りは初めてだったりする。
そんなお菓子作りを一応は楽しみにしてる私は
大して取り柄のない平凡な女子中学生……だと思う。みんなのことが好きなくらいで。でも別にみんなのことが好きでも、たくさん幸せを感じられるんだから何も悪いこと無いし、いいよね?
正直この好きって感情がなんなのかはわかってないけども。でもとにかく好きなんだよね。プラスの感情に分類されるのは間違いないはず……。
「うえ、まじか。それやったらバスケしてた方が楽しいかもしれん……」
「まあでも、余ったクッキー家に持って帰るし、明日うちに来なよ。明日土曜だし
「空いてる空いてる!」
「え、それいちごも行きたいな〜! 行ってもいい?」
「もちろんいいよー。葡萄も来る?」
「うん!」
「それじゃあ明日のお昼過ぎ……1時くらいでどう?」
「わかったー!」「いいよ~!」「おっけー!」
「じゃあ決まり。でもクッキー食べてるだけじゃ時間余っちゃうし、なんかして遊ばない?」
「ええな! 何があるん? りんちゃん家って」
「えーっと」
みんなで遊べる家にあるもの……。確かみんなでわちゃわちゃできるレースゲームがあったけど、コントローラーが足りない。他にはこの前家族で遊んだモノポリー……。モノポリーありだな。
「モノポリーがあるよ」
「モノポリー? なにそれ、知らんわー。どんなん?」
どんなゲームって言われても説明が難しい気がする。
ボードゲームで、すごろくみたいで、土地を買って、同じ色のエリアを独占して、家を建てて、お金を巻き上げるゲーム?
うーん、その言い方はちょっと良くないなぁ。
「んーと、すごろくみたいな……会社経営みたいな……。でも一度やってみたら楽しくてさー。説明とかはちゃんとするし、よかったらやらない?」
「ええでええでー!」
「葡萄といちごちゃんもいい?」
「大丈夫!」「いいよ~!」
そんなわけで明日遊ぶことが決まったけど、モノポリーみんなでできるのほんと楽しみだなー。
……おっといけない、クッキーのこと忘れてた。クッキー、みんなのために多めに作らないとだ。次の授業終わったらすぐ始まるから楽しみだなー。クッキーというよりかは葡萄と仲良くできることの方が実は楽しみなんだけどね。
キーン、コーン、カーン、コーン。
あ、次の授業始まっちゃう。
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