第10話 私はもう一人じゃない

まさかの隣の部屋の住人が如月グループの令嬢如月と判明してから翌日、隣の部屋だから朝は一緒に登校しようと言われたので今は四人で学校に向かって歩いていた。


「……スゥ…スゥ……」


「ねぇ、玲奈」


「ん、どうしたの?」


「なんで里奈をおんぶしてあげてるの?」


 そう聞くと、玲奈は「ああこれね、」となれたような調子で答えた。


「この子朝弱いくてね、何度起こしても起きない時はこうして私が背負って登校するの」


「主人におぶられるなど、付き人として失格ですね」


 これまで黙っていたエリナが口を開いた。恐らく彼女も同じ付き人として思うところがあるのだろう。


「まぁこの子は付き人っていうより、世話のかかる妹みたいな感じだから私はこの関係がとっても気に入っているの」


 そう言う玲奈の姿は普段の淑女のような雰囲気はなく、まるで妹を見守る姉のように見えた。


 ついついその顔に見惚れていると、後ろからすごく嫉妬の籠った眼差しを感じたので急いで目を逸らした。


 


 

 教室に入るとそれまで和気藹々と盛り上がっていたクラスメイト達の視線が一瞬で自分達に集まった。


「おい、あれ鳳条グループと如月グループの令嬢じゃないか?」


「ライバル企業だろ、あんな仲良くていいのか?」


「綺麗……」


 クラスメイト達が自分達のことを話しているという恥ずかしさを耐えながら優菜は席についた。


「流石に噂が広まっているわね」


 荷物を置いてきた玲奈がきて言った。里奈の姿が見えないので席の方を見てみると机に突っ伏し、爆睡していた。


 初授業の朝から突っ伏すとは……中々に猛者だな。


「そうみたいだね、変に注目されないといいんだけど」


「まぁ無理もないわ、だって国内で5本の指に入る大企業グループの娘達なんだもの」


 その通りだ。本来なら一つの高校に二人もいてはいけない存在だがここは名門天慶学院だ、いても変ではないが目立つものは目立つ言動は気をつけた方が良さそうだ。


「浮きそうだよねー、孤立しないかな……」


「ご安心ください。私はいつでも優菜様の側を離れません」

 

「そうよ、そんなに心配することはないわ私たちがいる限り孤立することは絶対にないもの」


「二人とも……」


 そうか、私にはもうすでにこんなにも優しい仲間がいたんだった。わたしはもう一人じゃない。


「二人ともこれからも、よろしくね。」


「はい!」


「ええ。」


 話が終わったところで鐘が鳴り、3人は急いで先に戻った。


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