第5話

「だから俺のところに来たのか。」

そういうと彼女は

「もう生きる意味を見失っておられるようなので。」

と言った。はっきり言って全く信じられなかったが、もう本当だと信じて寿命を売るのもありだなと思っていた。

「ちなみに寿命はいくらで売れるんだ。」

そう彼女に尋ねると、

「一日につき三千円です。」

と彼女はいった。

自分の一日が三千円…。安い。安すぎる。でも、もういいか。

「一週間だけ。一週間だけ残して残りは全部売る。残りの人生全部買ってくれ。」

と彼女に言った。やけになっていたと思う。でも、もうよかった。何もかも失った人生なんて一週間で十分にカタがつくと思った。

「わかりました。では一週間を除くあなたの寿命、五十一日と八時間、金額は十五万四千円になります。」

彼女はそういってどこからか取り出したお金の入った封筒を自分に渡してきた。

「一日一回経過観察であなたに会いに行きます。それ以外は何も気にしなくて大丈夫です。それでは。よい余生を。」

そういって彼女はどこかへ行ってしまった。また違う人のところへ寿命を買いに行くのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る