変幻仮面

鷹島隆夫

厚い仮面

 人というのは何面も仮面を被っており、人々の一人一人が同じ仮面を持っていたり、全く違ったり予想がつかなかったりするものである。そしてそれがバラバラな順場になっているのも事実。しかしそれが本当の面かどうかは本人以外知るすべはあまりない。

 誰かの仮面を取ったと思ったら、あるいわ取れたと思ったら。それは霧でできた偽物で本物はもっと奥に存在するかもしれない。そうなると人は本物の仮面を見つけたい、そして見たいなどの好奇心が己の心を操る事がある。

 読者諸君はイギリスのことわざ『好奇心は猫を殺す』を知っているだろうか?理性が切れ、好奇心が打ち勝った時に人はそれに夢中になり詮索をする。しかしそれは己を死に誘う誘惑だということを知らずに。例えるなら猫とマタタビか、死神の操り人形といったものだ。

 スパイと警察がこれに大きく当てはまるのだ。ターゲットの悪を暴き、法の裁きを下したいという決断を皆が持っている。しかし結末は二手に別れており、それは時と場合・神と運命に委ねるしかない。死か生か。

 つまり真実の仮面を見たいという好奇心を実行したときには、己も誰も揺るがす事ができない運命が遠近の方で大きく手を広げて待っていさせているのだ。

 近々発生した事件もそれに該当するかいなや、それは読者に任せるとしよう。

 その事件というのは警察の捜査と手を瞬く間にすり抜けて山根蒼の手を煩わせた一人の怪人の仕業であった。

 その怪人というのは様々な顔に変幻すること、つまり変装の達人と言った方が早いだろう。時には八百屋で働く年老いた老人。そして時には風俗で働く女。そいつは貴族や浪人・老若男女とはず人間程の動物だったら瞬き一秒でなってしまうのだ。

 そして、初めてそいつの存在を世間に知れたのは『人間消失』から約一ヶ月後、10月18日のことだった。

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