ガラスの少女

虹のゆきに咲く

僕達 

プロローグ


波が悲しく泣いている。

雪が舞っている

そこには一人の少女が立っていた。

舞う雪は静かに何を見つめているのだろうか。

少女の死なのか生なのか



テーマ


私は何のために生きているんだろう。

人に迷惑ばかりかけてきて、何が幸せなの

もう、海の中に沈んだ方がいいのかな。

もし、生き返るなら鳥がいいな。

自由に飛んでいける。

今の私は貝殻の中に閉じこもっているだけ。

飛び込む勇気すらないじゃない。


「君、どうしたの?」

「こんな寒い港の岸壁で何をしているの?」


「あなたこそ、どうしてここに?」


「僕は海に飛び込もうと思って来たのさ。」


「どうして?」


「君こそ、どうして?」


「それがよくわからないのです。」

「あなたは、どうして?」


「自分でもよくわからないよ。」


「私と同じですね。」


「そうだね。」

「でも、飛べる自信がなくて帰ろうとしていたところさ。」

「僕と一緒に帰ろうか。」


「どうしてですか?」


「なんだか、そんな気がするんだ。」

「二人なら、帰れそうな気がする。」


「どこに帰るのですか?」


「それが、わからないけど、一緒に歩いていこう。」


「はい。」






「おい、利夫、例のレポートは出来たか?」


「いえ、まだです。」


「馬鹿野郎、期日はとっくに過ぎているだろう。」


「申し訳ありません。」


僕は大手の出版会社で働いている。

昨年に入社したばかりの新人だ。

有名な大学を卒業したけど、なんの役にもたっていない。

ただ、大学名というレッテルの貼られた男に過ぎない。

守るべき人もいない。

僕はどこへ行き、何をすべきなのだろうか?






「礼子、気分はどう?」


「お母さん、私の病気は治るの?・・・」


「礼子・・・」

「大丈夫よ、ゆっくり休んで、音楽でも聴いていなさい。」


私は気持ちが落ち込む病気を持っています。

主治医からは良くなるといわれていますけど、不安でたまりません。

どうして、普通の人に生まれなかったの。

私はこれから、どう生きていけばいいの?






僕は酒場にいる。

グラスから運命らしき声が聞こえ

そのとたん、グラスを落としたんだ


バシャーン


「利夫、怪我はないか。」


「大丈夫です。」


僕は割れたグラスを拾った。

まるで、自分のようだった。

グラスの割れた音がいつまでも耳に残ったんだ。






鳥が窓にとまっています。

窓をつつく音が聞こえます。


コツコツコツ


「お母さん、窓に鳥がとまっています。」

「お母さん。」


「どうしたの?」


「鳥が空へ飛んでいきました。」


空が輝いています。

私も輝く時がくるのでしょうか?



テーマ


「君には夢があるかな?」


「ありません。」

「あなたはどうですか?」


「今、不思議な瞬間なんだ。」

「夢が見える。」


「あなたには守るべきものがありますか?」


「今はあるかもしれない。」


「それは何ですか?」


「君が見える。」


「私は何色ですか?」


「透明なグラス色かな。」

「触れると壊れてしまいそうな気がするよ。」



波の音がささやきはじめた。

瞬間がはじけた。

静かな音をたてて






「そんな、馬鹿な。」


「利夫、それが現実なんだ。」


「それじゃ、今まで僕がしてきたことは何だったのですか?」


「無駄だったということだよ。」


僕はその時になんともいえない感情を覚えた。

あれはなんだったんだろう。

夢に過ぎなかったのか。

遠き夢だったのか。

それとも、元々から存在しなかったのか。






「お母さん、タンポポが咲いています。」


「本当ね。」


「あ、風に吹かれて飛んでいきました。」

「私の命も飛んでいくのかな・・・」


「礼子、駄目よ。」

「そんなことを言ったら。」


「だって、私は病気なのでしょ。」


「礼子・・・」


私は病気です、治らないかもしれません。

生きている価値があるのでしょうか?

遠くに虹が見えます。

でも、いつか消えていくのでしょう。




テーマ


「もう浜辺につきました。」

「どこに行くのですか?」


「浜辺を二人で歩こう。」

「そこから、何か見えてくるような気がするんだ。」


月夜が静かに浜辺を照らしている。

雪が静かに消えていく。

二人はどこへ歩いていくのだろうか。

浜辺は遠く果てしなく、果てしなく続いているのだった。

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