第25話

 小舟が浜辺に到着した。

 子供達が棺桶をはこぶ。

 できる事なら太陽が上がる前に影になる所に、

 それがダメなら最低棺桶に入って昼をやり過ごさなくてはならない。

 空が白で輝いた。

 沖で輝いた。

 ああ、みんな逝ったのね。

 モアさんは無事に脱出したかしら。

 目の前に黒い人影が現れた。

「巨神兵」

 作業用の水陸両用機が陸へ上がってくる。

「マールズ、会いたかったぞ。

 これは運命だな」

 例のダンピールがコクピットにいた。

「みんな、棺桶を置いて逃げて」

 子供達が驚いて棺桶を取り落とした。

 私がこの子達を守らなくては。

 手首を切って血を流した。

 血液を操作してブラッドソードを作った。

 巨神兵相手にどこまでやれるか。

「私が、そんなに憎いかダンピール」

 海から上がってきたら私は駆け出した。

 子供達との距離を稼がなくては、

 私が死んでも子供達は生きて欲しい。

 異国の地でどう生きるかは自分で考えて。

「イヤ違う。世界がお前を殺そうとしている」

 巨神兵の左足で蹴ってくる。

 すれ違い様切りつける。

 魔法防御がほどこされて傷がつく程度だ。

「私を殺そうとしているのはお前だ」

 私は敵の左手に握られた。

 巨神兵が高く掲げ、私を握り潰そうとする。

「いや世界だ。この種の滅亡を神が望んでおられる」

 身体が軋みをあげる。

「グワ」

「「「姫様」」」

 子供達が悲鳴をあげてこちらに走ってくる。

 魔法は近距離の方が威力が上がる。

 悪魔使いヤクトが悪魔召喚を行う。

 餓鬼が巨神兵の肩に噛み付く。

 エレメント使いのトパズが雷の精霊を召喚した。

 サンダーを吐く。

 ファイルーズが鳥に変身した。

 イェシムがサイコキネスを発動させた。

 巨神兵の指を動かそうとする。

 プリウム精霊魔法を使う。

 私は白い光に包まれる。

 防御力を上げたのだ。

 ズハラが呪歌を歌う

 みんなに勇気を与える

 ハナフは触媒を撒いて呪文スペルを唱えた。

 マジックミサイルがコクピットを割る。

 ワルダがコマンドドールを置いた。

 人形が歩き出す。

 ボン。

 コウモリに変化して敵の手が逃れた。

 子供達の前で変化を解いた。

 傷を受けた私は幼児体型にまで戻った。

 もはや子供達より背が低い。

「私はどうなってもいい。誰か人間の子供達を助けて」

 巨神兵の背後に猛烈な勢いで反重力プレートが近づいてくる。

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