第21話
「ヨハンネス」
倒れたヨハンネスの心臓に耳をあてる。
もう鼓動はない。
カウマ、カエデ、ブラハム船長、スケルトン、マミー、
「白魔法を使って蘇生はできないの?」
静かに聞いた。
「出血が酷い、
それに誰が私達に手を差し伸べてくれる」
無情にもカエデが宣告する。
「魂を輪廻転生の環から外し、アンデットにすることはできますが、お望みですか?」
ブラハム船長は聞いてくる。
私が一方的に想っていて、
彼と話し合う時間はなかった。
彼を普通の人間として死なせるには、
ここで私が諦めるしかない。
ドレインタッチ。
手の平でこぼれた血を吸収する。
ガブリ。
残りの血を吸いだした。
「ヨハンネス。
私、あなた好みの妖艶な美女になれたかなぁ」
若い
笑える。
「ネェ、船長。
私とヨハンネスの心臓を白木の杭で貫いて。
私、灰になって彼に覆い被さるの」
「姫様」
みなが沈痛な声を上げる。
「もう、いいの。
もう、生きていく意味がない」
「「「姫様」」」
子供達が駆けつけてくる。
「マールズ」
カエデが怒鳴った
「あなたはこの子達に責任がある。
ホーリーシップはコッチに向かってくる。
いま、決めねば全員ここで野垂れ死ぬ」
カエデがホーリーシップを指差した。
「全員に意味のある生と死を」
カエデが拳を握った。
「カエデ・・」
思わず顔を上げてカエデを見た。
「姫様、生きていただけませんか」
船長が口にした。
「姫は待てるじゃないですか、生まれ変わったヨハンネスさんともう一度会えばいい」
「私、分からない。前世の記憶がある人なんて、ほんのわずか」
「偶然出会えるぐらい、世界は狭いもんです。
魂は運命を選んで生まれてくる。
きっと分かりますょ」
「船長・・」
「姫様、ここでお別れです。
あっしらここでホーリーシップを止めます。
近付いて飛行石を爆発させます。
姫は子供達と陸に向かって下さい」
「私達はモア様を脱出させます」
カエデの言葉にカウマはギョッとしたが、直ぐにコクコクコクとうなずきだした。
半身を起こした私に子供達が抱きついてくる。
そうなのだ彼らは親と引き離された子供なのだ。
「どう、生きれば」
「あっしら、今日。
ゴーストシップ伝説になります。
姫様も次に産まれてくる世代、そして生まれ変わる人々に勇気を与える伝説になって下さい」
子供達が手を引いて連れて行こうとする。
スケルトン達が棺桶を積んだ小舟を下ろした。
ヨハンネスの手を組ませ床にそっと寝かせた。
「さようならヨハンネス、私、行くわ」
子供達を小舟に乗せた。私はコウモリに変身して飛べるのだ。
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