第16話

 カトリーヌがモアの幽閉された部屋へ食事を持ってきた。

 モアはベッドで横になって窓を見ていた。

「モアさんは博士と呼べばいいですか、王様と呼べばいいですか、それとも作家先生と呼べばいいですか?」

「ペンネームを使ったのに」

「「聖騎士リンデルの悲劇」読みました。

 リンデルは童貞を失って白魔法が使えなくなった。

 でも同じくレイプされたヘレナと打ちひしがれた2人は互いによりそい背教者と言われながら、神の教えを守りました。

 どうしてヘレナを殺したんですか」

「作家の仕事は教えをたれる事じゃない。

 問いかける事だ」

「賢者は難しい事を言うんですね」

「なるべく簡単に言ってるつもりだが」

 モアが起き上がった。

「今時細工物のブローチをつけているのは珍しいな」

「コレは我が家に伝わる家宝なんです。

 旅が長いから身に着けているんです。

 今ではそんなに価値がないんですょ」

「300年前は細工物が主流だった。

 中でも小人ドワーフの細工物が最高だった。

 光の精霊の普及で夜が明るくなり、女性が腕やデコルテを露出させて、金のブルスレットやペンダントを着けるようになった。

 光かキラキラ反射するのは昼光では考えられない。

 キラキラ輝くカットされた宝石がチヤホヤされる。

 ダイヤモンドが結婚指輪ともてはやされるのは最近。

 昔は養殖ができる前の真珠が一番価値があった」

「気をつけろ、ソイツはアンタを懐柔しようとしてる」

 二人が入口をみるとグレゴリが立っていた。

「食事の時間だ。ダンピールはおよびじゃ・・・」

 ツカツカ。

 モアの側に立つと太ももをダガーで刺した。

「痛ーッ」

「何をするんですか」

 カトリーヌが声をあげた。

 グレゴリが拳銃を抜いてカトリーヌの額につきつけた。

「白魔法を使えるんだろう。シスター治せょ」

 カトリーヌは小刻みに震えだした。

「1日に与えられる神の恩寵は限りがあります。

 治癒魔法薬ヒーリングポーションをとってきます。

 万一にもゾンビ感染が起きた時、白魔法が必要ですから」

 カトリーヌをベッドになげた。

 民族浄化と亜人種人間化の名の下に兵士の武器によるレイプは公然としていた。

 昼間路上で衆人環視のなか。

 父親の分からない子が問題になっている。

「やめろ、神官へのレイプはソフィア正教への攻撃だぞ。

 普通のレイプと訳が違う」

 傷を押さえてモアが叫んだ。

「ソフィア正教」

 ニヤりと笑った。

 丸い金のペンダントを懐から取り出した。

 新教・旧教・東方派と大きく3つに分けれるが。

 どの宗派にも過激派が存在する。

「退魔師(エクソシスト)」

 旧教の過激派。

「ダンピールだろう。同族殺し」

「俺は名誉白人なんだ、優秀であることを示し続けないとな」

「あと何人裏切り続ける気だ」

「もう数えられないし、これからも数えられない」

 カトリーヌに覆いかぶさる。

 怪我しているモアが止めに入るが簡単に向こうの壁に吹き飛ばされる。

「あの男何者だ、ダンピールを見ても目が怯えていない」

「ブルターニュ伯爵です、500年前、十字軍クルセイダーを率いた聖騎士パラディンの血脈です。

 革命で財産を没収されたのです」

「伯爵」

「私は従者の一族です。

 伯爵家が宮殿に住み直した時、執事やメイドとして。

 屋敷に転落した時は近所に住み直しました。

 坊ちゃんが神父の修行する時は、一緒に入学しました。

 坊ちゃんが人妻と不倫して放校された時は、一緒に退学しました。

 冒険者をやっている時、一緒にパーティを組みました。

 義勇軍に志願した時は一緒に入隊しました。

 私から白魔法を奪わないで下さい。

 坊ちゃんから必要とされなくなる」

「もう、神から心が離れているじゃないか。

 何で白魔法が使える」

 ドサ、

 入口でバーナードが転がされた。

 エルネスト。

 左腰に十字架をかたどった聖剣ディバインソードをさしていた。

「ソフィアは昔から融通がない。退魔師エクソシスト

 剣に親指をかけた。

「物騒な物下げているじゃないか」

「我が家に残った唯一の財産でな」

 カトリーヌから離れた。

「冗談だょ、少尉。話がしたかっただけだ」

 バーナードを連れて立ちさった。

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