第14話

 カトリーヌが風になびく髪を押さえた。

「坊ちゃん、救難信号があがりました」

「てっ、事は負けたか」

 カトリーヌの問いにエルネストは答えた。

 スクリュー船の船足に蒸気船が追いつけるはずもない。

 どの国も巨神兵にお金をかけていて、戦艦の魔法防御は裏から表から削られている。

 空母打撃群ならともかく、ゴーストシップ相手では分が悪い。

 本気になるには小さい相手。

 到着すると浮いている兵士の救助にあたった。

 エルネストが甲板で指揮すると、謎の怪しい中国人と髪が2色のダンピール、狼男とは分からないが筋肉質の男、黒い影のような魔法で縛られた青い髪の少年。

「グレゴリ・クリストフ少佐だ」

 モアを足下に転がした。

「少佐の指揮下に入るよう、ユーロ軍の命令を受けたエルネスト・ブルターニュです」

 エルネストとカトリーヌが敬礼した。

「ブルターニュ、貴族の名だな、それとも語りか」

 それには答えなかった。

「お前、ユーロ軍壊滅時の階級は」

「少尉です」

「この船では出世は無理だな、それとも冷遇されたか」

「民間人の虐待は戦時国際法に違反します」

「少年みたいだが妖精(アルフ)はこれで大人なんだ。

 俺達より遥かに年をくってる」

「捕虜だとしても、他に扱い方があるでしょう」

「俺達は戦争をしていない。

 コイツには保護する国もない。

 難民申請できないグローバルテロリストだ」

「モア・サルディーラです、写真を見た事があります、見つけ次第殺さずに保護せょと、丁重に扱うようにと」

 カトリーヌは姿勢を崩さず大きな声で発言した。

「生意気な女アル」

「解いてやれ、逃げないように幽閉しろ。

 それからあのプレートも拾え、最新の反重力機器だ。

 行き先はカリブだ。

 潜水艦にはゴーストシップの追跡をさせろ。

 手をだすな。

 俺の手で殺してやる」

「この船の船足では風の精霊で加速しているゴーストシップには追いつけません。

 近く寄港して負傷者だけでも病院に搬送しては?」

「病院船だろう。

 治せよ。

 白魔法使いがいるんだろう。

 コイツがいれば向こうからやってくる。

 カリブについてから降ろせばいい」

 3人は立ちさった。

 カトリーヌがモアを介抱した。

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