第3話

 かつて聞いた事がある。

「モア、平等の国がいう勇者が偽物という発言は本当」

 勇者に敗れた魔族は共産主義を受けてさらに人間に牙を向けた、巨神戦争の時、資本主義のバレンシアや新大陸と同盟を組んだ時、日本の外交官は「大陸の情勢奇々怪界」と電文を打っている。

「ああ、200年ほど前不老の魔法ができた、金持ちは永遠の生命を手に入れたが、彼女は違う」

 不老の魔法は毎日かけねばならないし、男なら生殖細胞が分裂しなくなって子供が産まれなくなるし、女性の排卵回数は決まっている。回復魔法ではなく修復魔法を覚えて身体を管理しなくてはならない。

「サクラは魔王を倒した後は、自分の元いた世界トーキョーに帰った」

「知り合いだったの?」

「召喚の時から」

「知りたい」

「最初から話すと、エスカチオン王室が革命によって議会共和制に移行してギロチンによる恐怖政治。

 人を救うはずの宗教は魔女裁判で魔族狩り。

 666の獣は傷口から脳にいたる寄生虫を拡散、誰が支配されているか疑心暗鬼。

 法の下の平等を歌う議会は権力闘争。

 魔族という概念もなく魔法被爆者と呼んでいた。

 生まれつき常人より魔力や適正はあるが、身体に障害があったり、角や尾や毛が生えている程度の違い。

 義肢や手術で解決できる、しかし北の大地に魔法学校や秘密結社を中心とする集団は魔族を名乗る。

 人間より魔法に近しいものとして。

 些細な違い強調して信者を獲得するのが過激な運動家。

 新・旧問わずソフィア正教圏で魔女裁判が蔓延する。

 そんな中1人の天空人エンジェルが666と戦う為の白魔法を携えて降臨する、彼女達は月精人セレナイトと自称する。

 彼女の名はキャサリン。

 複数ある未来から最良の可能性を選びだす預言者」

 白魔法は科学が病原菌などを発見すると、キュアディジーズなど新しい魔法を天空人エンジェルに携えて、月世界の宇宙船から持ってくる。

「まあ、俺も金がない時、元手のかからない占い師とかやっていたが」

「何それ」

「自分の弱点を普段なら克服できます。

・まだ活用されてない才能が眠っています。

・外見的には規律正しいですが、内心はくよくよ不安になったりします。

・自分の判断が正しいかどうか真剣に悩むことがあります。

・新しいことを好むことが多く、制約されていることを嫌います。

・独自の考えを持っていることを誇りに思い、他人の主張には耳を貸しません。

・他人に自分の悩みをさらけ出すことが危険に思っています。

 てな事を言えばいい」

「何それ」

「聞きかじった個人情報を適度に広げて協力者にして、近々あなたの運命を決める出会いがあるでしょう。

 あと年代に合わせて人生相談を受ければよく当たる占い師の出来上がり、人は「自分を理解してくれている相手」を求め、「本当であって欲しい」を願い、そして「褒めていると分からずに否定せずに褒める」事ができれば完全に依存してくる」

「ロクでもない男ネ」

「俺詐欺師の手口を知っているから、キャサリンが本当にイカれているのを理解した。

 彼女は俺の下にきて、この世はよくわからないから案内して。

 俺も羽根の生えた化け物につきまとわれてはかなわないから付き合うことにしたょ」

「鉄道の乗り方とか知らかったなぁ。

 最初に見つけ出したのはフランチェスカ・エスカチオンというロストロイヤル。

 失われた王族の7女。

 勇者サクラに似ていて惑星の輪廻転生外から転生して、農業にはやたら詳しく遺伝学を執筆していた。

 品種改良をやり、田舎で指導的立場に居たのをキャサリンがスカウトした。

 最初はスローライフを満喫していたいと嫌がっていたが、頭のおかしいキャサリンにつきまとわれてはかなわないと思い、伝家の宝刀と鎧を取り出してきて受けてくれた。

 戦略は時代の技術によって揺れながら進化していく。

・マジックアイテムに固めた英雄の時代。

 防御優位の騎馬兵や要塞戦の時代。

 防御力を超える攻撃力を持つ英雄による、一騎討ちや一騎がけの時代、

・銃器による決戦時や場所で銃口を増やす参謀の時代。

 将軍による師団の運用が要。

 動員の大型化、常備兵と訓練。

 電信による組織の細分化。

 攻撃力が防御力を凌駕している時代。

・魔法・銃弾防御を施した内燃機関、魔導機器、人工筋肉で武装した巨神兵のエースパイロットの時代。

 塹壕と鉄条網と機関銃

 さらにそれを超える防御力を持った戦車、巨神兵、飛行機の時代。

 人間も魔法も出る幕がなく精鋭部隊による陣取り合戦。

 もはや王も後方もない総力戦。

 一般の人々まで巻き込まれる。

・核を持てる者の抑止力によるスパイの時代。

 これからは宇宙開発、付随する大陸弾道弾の時代。

 超攻撃力による相互確信破壊による一時的停戦。

 銃弾と魔法の飛び交う将軍の時代に剣と鎧はないだろうと思ったが我が家の伝統だと譲らなかった」

「2人目は魔族の実験体 ヴェスナー 魔王の妹にあたり研究所を脱出してきて、ユーロ圏の都市で魔力を隠して細々と暮らしていた。

 キャサリンの馬鹿が魔女裁判荒れ狂う中「魔族の魔法使いですね」大声で叫ぶ、俺は彼女に同情したょ。

 最初は人違いですとか叫んでいたけど、キャサリンの熱意ある説得を受け入れ、泣きながら仲間になるから静かにしてくれと泣きながら足にすがりついてきた」

「3人目はキャサリンの勇者召喚儀式で連れてこられたサクラ=サトウ。

 義務教育とかいうのがある異世界の女子コーセー。スマホとかいう写真を見ながら電波が来ないと泣いていた。

 フランチェスカが前世の記憶があり、二人でハラジュクとかの話をしていた。

 キャサリンのことを全っく信じてなかった俺は、失敗したと思ったが幻獣、モンスターまで魅了、動物の言葉がわかる。精霊やエレメントと契約できオリジナルスペルが使えた。

 俺の概念にない独特な軍団を作り上げた。

 魔族がチャンスと見て攻めて来たし、連合国の弱さから各地で離反や反乱が起きた。

 久しぶり政治の世界に首を突っ込んだ。

 軍隊の方も射程が1000メートルある先込め銃のエミー銃か射程が300メートルの後詰銃のどちらを採用するか揉めていた。

 後詰の方が匍匐のまま装填できたし、エミー銃は装填回数が1分に1回なのに後詰銃は5回。

 戦略論から言って遠距離攻撃アウトレンジは近距離攻撃回数増加に敗れている。

 歴史の必然、俺はすぐに分かったね。

 彼女達と一部の軍隊を率いて、後詰銃のプレゼンをしながら内戦を勝ち上がった。

 キャサリンの白魔法を他の白魔法使いに供給して666に対抗して、勇者を立てて権力を握り、魔法の必要性を説いて魔族や亜人の保護を民衆に啓発させた。

 彼女の幼稚な世界観もあって、社会矛盾を解決している時は関係は上手く行ったんだけどね」

「勇者と上手くいかなくなったの?」

「軍隊を掌握したが魔族との戦争は長引いた。

 国民統合の象徴、現場の慰問、戦時国債の発行宣伝、戦意高揚のコンサート。

 あの時代、彼女達に課した。

 俺はそうすることが正しいと信じた。

 彼女は俺をクビにした、政治の世界から離れた。

 彼女達は前線に行き魔王の暗殺に成功した。

 勇者サクラはトーキョーに帰った。

 今の勇者は大臣達の傀儡かつ偽物だ」

 モアは遠い目をした。

「他の3人はどうなったの」

「フランチェスカは引退して動植物学者になった。

 博物館に所属して世界中を飛び回った。

 魔法植物や幻獣の分類や体系化に努めた。

 子供を1人産んで育てあげて死んだ」

「青い髪の子」

 モアはバツの悪そうな顔をした。

 300年で34回の結婚して、婚外子を含めると200人以上の子供がいる。

「ロクでもない男ネ」

「キャサリンは女優になった。押しの強い女だし。

 西ユーロが敗戦で混乱しているから、もう一度勇者を呼び出そうという動きがあるらしい」

「寝た?」

「白魔法使いは処女じゃないといけないんだょ」

「立派、立派、よく我慢したねー」

「ヴェスナーは魔王を失って混乱する魔族社会に戻って共産主義運動に身を投じた。消息は分かってない」

「寝た?」

「アイツは重度のブラコンで俺なんか眼中になかった。

 ヤレた女よりヤレなかった女の方が未練が募る」

「ロクでもない男ネ」

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