本科一年生
第1話 国家術師養成学校へ入学
1-1 本編時系列始まり
現代から転生し、祖母と両親と姉2人の6人家族という前世と同じ家族構成で育った少年の名前は
今年の四月から国家術師養成学校に入学し、5年間はここに通う。現在15歳。現代人感覚が残っている里見の気分的には、専門的な学科がある高校へ通いだすイメージだ。
同時に家を出て寮生活が始まる。生徒は特別な事情がない限り全員寮に入る決まりだ。
入学案内を受け取った後日、学用品の購入、制服の採寸、身体測定、予備の学力試験等々の用事を済ませれば、あとは入学式の日を待つだけだった。
ヒロインが入学するのは今年か、それとももう在籍しているのか、気になって今世の上の姉・雨月(装備管理班という部署に所属)に恐る恐る聞いてみようとしたが、ヒロインの名前がデフォルト名『
調べようにも今更遅すぎる、とゲームのストーリーとメインキャラたちについては放置、出会うことがあれば遠巻きに、と決めた。
尋常小学校に通っていた頃から、とある術師関係者から「国家術師養成学校からスカウトがくる可能性が高い」と言われていた里見は退学することがわかっていたので、進学はしなかった。成績と授業料は大丈夫と父から言われたが、母が12歳のときに海難事故で亡くなり、以降、家のことを誰かが代わりにしなくてはならなくなったこと、身体が弱った祖母に誰かが付いていなければならなくなったことから、里見は術師学校に入るまでの間はフリーターのような生活をすることを選んだ。
※※※※
あてがわれた寮の部屋は六人部屋だった。
2段ベッドが3つ。前もって入寮を済ませた同級生が3人、里見のように入学式当日に荷物を運んできたのが3人。前者は地方出身、後者は帝都出身だ。
帝都出身の他2人は都会っ子らしく根明で朗らか、文武の『文』の方が得意そうな雰囲気。
地方出身の3人は三者三様。1人は細面のツンとすました顔の京風男。この世界の京都、ではなく洛山と呼ばれている土地の出身らしい。言葉に独特のアクセントがあった。1人は痩せっぽちで、せかせかと落ち着きがない男。京風男も柳のようにほっそりしているが、こちらは栄養不足という言葉が脳裏に浮かぶ。もう1人は本当に同い年か、と疑いたくなるような逞しい体格の男だった。肩幅が痩せ男の2倍あるように見える。手のひらも木の皮のようにゴツゴツしていたので、長年の武道の経験あるのだろう。
元公家っぽい子息が1人、元武家っぽいのが1人、平民が4人(内1人は貧困層と思われる)と里見は推測した。出身地も身分も実家の資産の多寡も混ぜこぜになるように部屋分けが決められる、と聞きかじっていたので驚きはしない。ただ帝都出身の2人は心配そうだ。
身分で色々なことが決められてしまうこの時代、異なる社会階層の者同士が交流する機会は少ない。あっても軋轢が起きて良い結果にはならない、そういう話をよく聞く。里見はその心配は当たりかもしれない、と京風男と武士風男がお互いを視界に入れないように、存在を無視しているのに気がついて、そっとため息をついた。
女子寮の方はこちらより人数の少ない四人部屋だと聞いている。女子寮で同じように荷解きしているだろう幼馴染を羨ましく思う里見だった。
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