123 ミドリーさんと早馬
王への謁見を終えた私達は、レイナ姫と別れ冒険者ギルドへと戻っていた。
午後の議会が終るまでの間の時間潰しをしようと、何か依頼がないか依頼掲示板を見る私達。
そこへ、クラン鋼の女傑の人たちが戻ってきた。
クララさんにミザリーさんとサンディさん、それにクワランド・ミドリーさんも一緒だ……!
「クワランドさん! よくぞご無事で」
私が声をかけると、クワランドさんは恥ずかしそうに「あぁ……世話をかけた……」とだけ返す。
「野盗との交渉は無事に?」
私が聞くと、クララさんが「あぁ、無事に金と人質を交換したよ」と答える。どうやら戦闘にはならなかったらしい。
私は気になったのでクララさんに聞いた。
「クララさん、野盗の中にリードリヒ・サトゥルヌスさんをお見かけしませんでしたか?」
「リードリヒ・サトゥルヌスっていえば貴族だろう? いや、クワランド・ミドリーさん以外には貴族は野盗の中にいなかったと思うが……」
「そうでしたか、ありがとうございました」
それではリードリヒさんはサトゥルヌス家を離れた後にどこへ向かったというのだろう?
まさかリオネスベルクに向かったわけではあるまい……。
野盗に合流したわけでもないとなると、あの時は私達から離れるために逃げただけで、またサトゥルヌス家へと戻っているのかもしれない。私はなんとなしにそう思った。
∬
午後の議会が終わった頃、ツバキさんがダンビエールさんと共に冒険者ギルドへとやってきた。
「ふぅ……ようやっとニールのやつめが重い腰を上げよったわ……なんとかリオネスベルクでの開戦は回避されたぞ! こちらが送った使節団には、はようライエスタの使節団を連れて王都へ来いと命令が出された。これでもう安心じゃろう」
ツバキさんがそう言って自身の額を軽くこする。
「はい。これも天狐様のおかげですとも、感謝致しますぞ」
ダンビエールさんも笑顔でツバキさんに感謝を述べて続ける。
「いかがでしょう皆さん、今夜は開戦を防いだ祝いに我が家で食事でも」
ダンビエールさんの誘いに、「良いですね!」とリエリーさん、「是非とも!」とネルさんが応じた。そんな時だった。
冒険者ギルドに一人の青年が駆け込んでくる。
「早馬です! レアさんはいらっしゃいますか!?」
「はい。少々お待ちくださいませ」
私が対応し、執務室でトリスタルさん達に護衛されながら業務するレアさんを呼んでくる。
レアさんが受付へと現れると、男は持っていた手紙を出しながら言った。
「リオネスベルクで開戦したとのことです……!」
「なんですって……!?」
驚きながらレアさんが手紙を開封する。
手紙はセーフガルドのホウコさんからのものだ。
「……」
手紙を読むレアさん、そして読み終わると私へと渡す。
「……これは! イアさん達の報告で、リオネスベルクで開戦したとのことです……!」
私はみんなに報告すると、詳細を読んだ。
「どうやら商人同士のいざこざから街を巻き込んだ食糧争奪戦に発展、王都アレリア側に雇われた冒険者が、共和国側の陣営に手を出したことから開戦に及んだとか……」
「それで被害は!?」
リエリーさんが必死の形相で問う。
「分かりません……双方ともに被害が出ていなければ良いのですが……。
それにイアさん達も心配です。開戦すれば共和国側に付く手筈ですから……」
私はリオネスベルクにいるイアさん達を案じた。
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