2 薬草採集――名探偵リエリー
街の近くの草原へと向かうと、草元素が辺り一面を満たしているかのようで、草原スライムたちがうようよとしていた。
「大丈夫です! 草原スライムたちはこちらが攻撃しなければ敵意を向けてくることはありませんよ」
リエリーさんがそう教えてくれたので、私達は指定された極一般的に使われるという薬草を集め始めた。
「どうやらこのような群衆を形成して繁茂しているようですね」
名探偵スキルの恩恵でしょう。リエリーさんが薬草が繁茂している範囲を限定してくれたおかげで、私達はあっという間に依頼された量の3倍もの数の薬草束をゲットすることができた。
「それでは、依頼者の元へ薬草を届けましょう!」
「はい」
リエリーさんの一声で私達は依頼者の元へと向かった。
依頼者は街のはずれに住むミサオさん。
呼び鈴を鳴らすと、十数秒して優しいほんわかとした雰囲気を漂わせる女性が顔を見せた。
「こんにちは、冒険者のリエリーとセーヌです。薬草採集の件で伺いました」
「あらあら、これはどうも私はミサオと言います。薬草採集お疲れさまでした」
ゆっくりとこちらへ向かってお辞儀をするミサオさん。
私は集めてきた薬草束の全てをミサオさんに手渡した。
「まぁ、こんなに沢山取ってきていただけるなんて……そうだわ。冒険者さんたちには完成品をお裾分けしますね!」
「え! いいんですか!?」
リエリーさんが嬉しそうに声を上げる。
私も興味津々といった様子でミサオさんを見ると、
「えぇ、ちょうど薬草の下処理が完成したところなんですよ」
ミサオはそういって家の奥へと戻ると、乾燥して粉状になったらしき薬草を持ってきた。
「これをこうして、水に湿らせた布などに塗ってください。その布を患部にあてれば傷薬になります。お風呂のお湯に入れることで全身の打ち身などにも効きますよ」
ミサオさんは丁寧に薬草の使い方を教えてくれる。
思わぬところで、薬草知識を教えてもらった。
そうして薬草粉の入った瓶を2つ受け取ると、私とリエリーさんはそれを一つずつ分け合った。
「それでは、これで依頼達成ですね。こちらの書類をギルドへ提出してください」
ミサオさんから最後に依頼達成証を受け取り、私達はミサオさんの家を後にした。
ギルド会館に戻ると、私がギルド受付として達成証を受領。
晴れて任務達成となり、報酬をゲットした。
完成した薬草粉までゲットしていたから得をした気分だ。
冒険者カードを水晶に当てて確認すると、スキル【新米冒険者S】と【薬草知識S】の2つが新たに私のスキルに加わっていた。
「リエリーさんありがとうございました。おかげで目的としていた新米冒険者のスキルを獲得できました」
「いえいえ、私は何もしていませんよ」
そうかしこまるリエリーさんだったが、私は名探偵スキルのおかげで薬草採集が目安時間の1/3以下で終わった事をしっかりと理解している。
「ところで、リエリーさんが持っている名探偵スキルなのですが……」
私が名探偵スキルについて聞くと、リエリーさんが答え始めた。
「生まれた頃にはなかったものなのですが、8歳くらいの時でしょうか。日課の指回しをしていた時のことです。唐突に頭が良くなったような気がしたんですよ」
リエリーさんが名探偵を得たらしき当時の事を話してくれるが、『日課の指回し』という以外に名探偵に繋がるらしき情報は得られなかった。
「なるほど、日課の指回しですか。差し支えなければどのようなものなのか教えていただけますか?」
私がそう問うと、リエリーさんは丁寧に日課の指回しについて教えてくれた。
それから明日また依頼を共にする約束をして、リエリーさんと別れることにした。
私はその後もギルドで受付業務を行いつつ折を見て冒険者カードを水晶に当てながら、今日得たスキルについて考えていた。
まず第一に【新米冒険者S】。
今回リエリーさんについたのも同様に新米冒険者Sであったが、その指導を受けて【研修生S】の効果を経て獲得した私の新米冒険者にもSランクのスキルランクが付与されている。
このスキルは冒険者としての経験を飛躍的に成熟させる効果がある。
次に【薬草知識S】。
ミサオさんに薬草の使い方を丁寧に教わった事で得たこちらはなんと、薬草の効果量を1.5倍に引き上げるという驚異的効能が付与されていた。
新米冒険者にはうってつけであると言えるだろう。
低級モンスター退治で傷を負ってしまった際には重宝するスキルになるに違いない。
そして最後が【精神統一S】。
これは恐らくリエリーさんに日課の指回しについて教わった時に獲得したものだ。
効果は『精神を統一する。』という一文の鑑定結果のみで、具体的効果については記されていない。
すべてのスキルが研修生Sの効果を受けて、目論見通りにSランクを獲得しているのを眺めて、私はほくそ笑んだ。
また明日もギルド受付と冒険者の二足の草鞋で頑張っていこうっ!
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