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「そ、それです! もしかしてお二人もあの神殿から?」
「はい、〈三ノ神殿〉……今は廃墟となっていた神殿で、大規模な魔力の揺らぎがありました。我々はたまたま近くの、こちらとは山を挟んだ反対側の村に居たため、様子を見てくることになったのです。その神殿の礼拝堂の中で見つけました」
リヴィウスから手帳を渡された。手にかかる重みは、拝命された時から変わらない。中を開けば見慣れたエンブレムと緊張した面持ちの自分の写真が、瑠依が確かにそこに所属しているのだと示してくれる。
「ありがとう、ございます……っ」
「無事にお届けできて良かったです」
ふわりと笑うリヴィウスに今度はハンカチを渡され、瑠依は自分が涙を流している事に気付いた。泣いたのなんていつぶりだろうか。恥ずかしくなってリヴィウスのハンカチを慌てて受け取った。「あとでちゃんと洗って返します!」と返す瑠依に、旅用に
「それで、お前はどうやってこっちの世界に来たか覚えているか」
「ああ、それは……」
瑠依は言いかけてはたと止まる。これを言うことは守秘義務違反になりえないか。地方公務員法上、職を退いた後も職務上知り得た秘密は漏らしてはいけない。ここが異世界であったとしても同じように守秘義務があるのではないか。
「……職務中、公園で人とぶつかってしまって、地面に倒れ込んだときに急に変な光に包まれました。そのまま気を失って、気付いたらえっと、〈三ノ神殿〉に」
「光、か」
「どういった光か、それも覚えていますか?」
核心には触れないよう、状況だけを説明する。彼らは原因よりこちらの世界への移動手段の方が気になるようで、どういう内容でぶつかっていったかまでは気にしていないようだ。
「光り方、ですか……。えーっと、確か白っぽい光で、ああ、感じはお二人が盗賊のアジトから戻って来たときのに似ていた気がします。あれも魔法、なんですよね?」
「正確には”魔術”と言います。魔法は女神や精霊、または古代の存在が自然的に使っていたモノのことを。その魔法を元に体系化し、誰でも得られるようになったモノを魔術と言います。まあ魔術の方も使用者の素質によってかなり行えることの差はありますが」
瑠依の確認にリヴィウスが答える。同じように思っていた「魔法」も「魔術」も、本当に使う
「へぇ~」と感心する瑠依にリヴィウスたちはまだ何か聞きたそうだった。だが瑠依はそれ以上伝えられそうなこともなく、首を横に振った。
「すみません。巻き込まれた光についてはそれくらいで……。そういえばあの神殿、私のほかに誰か居ませんでしたか? もしくはあの神殿までに会った人とか。その、ぶつかった男性も一緒に光に巻き込まれたはずで――」
「それは本当か!?」
瑠依の言葉にアゼルは一瞬落ち込んだ。しかし続く質問に大きな声を上げると、急に掴みかかってくる。それを瑠依は思わず躱してしまい、両者の間に微妙な空気が醸し出された。
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