7 坂岡視点
「貴様これがどういうことだかわかってるのかッ!?」
捜査本部が置かれた警察署の一室で、坂岡は耳をほじりながら千葉管理官の怒声に返答した。
「現役警察官が容疑者と共に行方不明。しかも警察官は拳銃を所持したまま。無線もケータイ電話も繋がらない。こりゃぁ、マスコミ各社愉しげに叩きますね」
「ッ、それを分かっていて、どうしてそんな態度でッ」
「……まあまあ千葉君、それくらいにしといて」
そう口を挟んだのは警視庁捜査一課長の山岸だ。今日はあの「魔法使い」を
山岸には坂岡なりに丁寧な挨拶をするのを見て、千葉はさらに青筋を立てる。上役の山岸がいなければまたすぐに怒り出すであろう彼を尻目に、坂岡は山岸に対して言いたいこと言う。
「一課長、このまま捜査を続けさせてください」
「OK、と言いたいところだけどね、一応規則だ。君と伊藤瑠依君が共謀して藤森を逃がしたのでないことが明確になるまでは、
穏やかながら有無を言わせぬ口調で山岸は言い切った。
そういう判断だというのは分かっていながら、しかし坂岡は舌打ちをする。
「そもそも、アイツが
「またその変な話か。鑑識や科捜研に確認させているが、彼らが消えた現場に光を出すような物はなかった。見間違いか、妄想だろう。愛娘が犯人と逃げたっていう現実からの――」
ゴンッという鈍い音がして、千葉は自分の横の壁を揺らす坂岡の拳を見た。
呆れた顔で山岸は頭を振る。
「千葉君の言葉が強かったとしても、それはやり過ぎだ、坂岡君」
「手が壁に当たっただけでしょう。これ以上
坂岡は千葉を一瞥すると、彼らの間を抜け部屋の出口に向かった。
「じゃ、俺は
「結果が出たら、また連絡するよ」
山岸は手を振ってそう答えた。千葉はまだ先程の衝撃から回復しないらしい。これだからキャリアは。
「それから。アイツは犯罪に対して、強い憤りを感じています。そんなヤツが容疑者を逃がすはずがない。もし、そんな感情が本当にあったんだとしたら、逃がすより先にソイツが無罪である証拠を見つけに行きますよ」
瑠依の名誉のために、それだけは伝えておく。
穏やかな笑みを崩さない山岸を尻目に、坂岡は捜査本部を後にした。
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