第5話 今度こそ!初めての防衛!


俺はスキルを得た次の日、水晶から聞いたことのない警告音が鳴っているのに気づいた。

なんだこの音?

「マスター! この音は侵入警報です! 人間がやってきましたよ!」


「!!」


 ついに来たか……今は……早朝2:13分。ん? 人間は睡眠が必要だが……まあ、1日なら大丈夫なのか?


「ガイド。ダンジョンの様子を観察できるか?」


「はい。どうぞ。」


 俺はガイドに水晶の画面を切り替えてもらう。そこには、なんの変哲もない服を着た1組の男女がいた。


 たった2人か?


 俺は驚きつつも、20歳くらいの若い男女の言葉に耳を澄ます。


=====


「ねえ、ほんとに大丈夫なのかな? いきなり迷路だよ……」


「まあ、ダンジョンってくらいだしな……。尻込みしてても、仕方ない。俺たちは何としてもレベルアップ? しなければならないんだ!」


 2人とも足が少し震えているが、男の方が女を励ましている。


 なんだなんだリア充か?腹たつがたった2人で来てくれたし、いい感じにレベル上げさせようかな?


 俺は一部屋目の魔物たちに一体ずつ攻撃を仕掛けるように命令する。

 すぐに、迷路という1本道で2人の男女はスケルトンに遭遇した。


「きゃ、きゃあああ!」


「お、落ち着け! あれはスケルトン……最弱のGランクだ!」


 ! 詳しいな。やはり昨日ダンジョンに行った口か?いや……それにしてはキョロキョロと怯えた視線を向けているし、全身ぶるぶる震えている。人間も殺しや血に対する忌避感はなくすと最初に神が言っていたが……?


「う、うおお!」


 男が×と頭蓋骨に刻まれたスケルトンに殴りかかる。

 勢いよく振り下ろされた拳はスケルトンの頭蓋骨を粉砕しながら突きぬけた。


 バラバラになり、光の粒子となって消えるスケルトン。


「え?」


 男の呆然とした声が聞こえる。


 ……わかってはいた。でも武器も持たない人間が一撃で倒せると知って自信がなくなってきた。


 男女は訳もわからず、自分たちは強いと思ったそうだ。どんどん先へいく。


 まだ30分しか経ってないが……すでに20体のスケルトンと2体のムーシュがやられている。ムーシュは小さいから体内に入り込んで嫌がらせしようと思ったが、飛ぶのが遅すぎて叩き潰されてしまった。蝿を潰しても経験値が手に入るぞ!と喜んでいた。……気の毒なムーシュよ……


そして21体目のスケルトン……男が倒したモンスターの数が14体目になった時。


「……!?」


 男はバッと周りを見回した。

 ん?この反応は……頭の声──俺は天の声と呼んでいる──が聞こえたんだな?


「ゆ、結奈! れ、レベルが上がったぞ!」


「えっ! ほんと!?」


「ああ! これで待遇が良くなるかもしれない! 結奈も急いでレベルを上げよう!」


「う、うん!」


 待遇? なんだ? 気になるな。

 あいつらを捕まえたら、色々聞けるかもしれない。【奴隷】にするのは気が引けるが……そしたら戦わせられるかもしれない。

 だが、まだその時じゃないはずだ。2人の人間で、30分で30DP。レベル1だが、損失は21DP。一応黒字だ。もう少し力をつけさせて、調子に乗って墓地まで来たらスケルトンと一緒に脅して勧告を下そうかな。


=====


 ……にしても全然人が入ってこないな。


 結局あの2人は女……結奈だっけ?がレベル2になったらすぐ引き返していった。得たDPは49。失ったDPは30。たった19だがなんとか黒字になった。


 その後は誰もこない時間が続く。


 こんなギリギリの生活できるのか……?

 俺は不安になりつつも、失ったスケルトンたちを補充して次の侵入者に備えた。


「マスター。外の様子をご覧になってみては?。」


 それもそうか……俺はガルーダに命じて感覚を共有し、ダンジョンの外を見にいく事にした。


 初めてのダンジョン外だ。周りにはダンジョン以外何か残ってるのか?


 俺は人が来ない理由を探しに、外へ出た。


=====


「……そういうことか。」


 原因は一瞬でわかった。

 俺にダンジョンの前には“刺激禁止”と書いた看板が置いてあった。

 看板の内容によるとダンジョンには難易度が設定されるらしく、順番に調査するから今は立ち入り禁止らしい。ここの市長はなかなか計算高いタイプなのか? 


 それに、他にも色々有意義なことが書いてあった。


 一つずつダンジョンを調査するにあたって、『調査隊』に参加するものは役所まで申し出ること。全員のレベルと能力を管理し、適材適所に派遣すること。簡単なダンジョンは残す必要があるから絶対コアを破壊しないこと。そして……


「人類はこの場所に固まって住んでるのか。」


 移住スペースへの案内が書いてある。それで人気がないのか。

 にしても『調査隊』ね……


 なんだか怪しいな。


 待遇がどうとか言ってたからな……


 とりあえずしばらくは来ないということが分かって俺はコアルームに戻る。


=====


「というわけだ」


「なるほど……」


 俺は先程のことをガイドに話した。まあ、どうにかなる訳じゃないが、とりあえず誰かに話したかった。


 先程のことから考えられる現状は、何日か後にまとめてくるってことだ。それまで人が来なければDPがたまらず、後になればなるほど勇者たちは強くなる。


 だいぶ困ったもんだ。


そうこう考えていると、さっきの二人組が侵入してきた。


「ん? ってことはこいつらこっそりレベル上げして他のやつ出し抜こうってことか?」


「そうですね。そう思われます。」


 今は夜中22:40分。やはりこっそりと抜け出してきてるんだろう。でも、なんだか少し痩せ細っている。


「? 人間なのに食料も満足に与えられてないのか?」


 まあ、生産も滞っているだろうがまだ2日目だぞ? しかも4日の準備期間があったはずだ。


 二人組は今朝と同じように迷路を侵略している。


 途中まで道がわかっているからか、わずか15分で今朝の地点まで来られてきてしまった。

 だが、入手DPが15ではなく19になっている。


「レベルが上がってるからか?」


 強い者が入ってくるほど取得DPは多くなる。まあ、当然と言えば当然か。


 さて、観戦でもするかな。


=====


「それにしても、結奈。今日すごかったな! まさか魔法使いなんて!」


 男が女……結奈に言う。


「ゆ、雄二さんだってモンスターのランクと名前が見えるんでしょ? すごいじゃないですか!」


「いや、俺と同じ“鑑定士”は結構いるが……魔法使いは9人しかいないんだぜ!?」


 ほう……? 鑑定士、とやらは魔物の名前とランクが見れるのか。そして魔法使い……?


「で、でもまだ能力が判明してない人が9割じゃないですか。まだわかりませんよ……」

 

 なるほどな。ポロポロ情報をこぼしてくれてありがたい。1割の人がすでに戦うことを決意してるのか。


 2人はそのまま2部屋目に到達する。


「お……? 短いダンジョンかと思ったら部屋分けされてるのか……」


「こんなダンジョンもあるんだね……」


 2人は再び迷路に入っていく。だが今度の迷路は……


「きゃああああ!!」


「うわああああ!!」


 ちと初見じゃ厳しいぞ?

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