第5話

よしっ、謎の妖精とやらをボコボコにしたら、なにもかも日常に戻った。

ちょっと普通と違う気がしても、日常とあたしが感じたら、日常になるの。


妖精とやらが、この後どうしたかはあたしに関係ないし、どんなに依頼が来ようとどうにかするつもりはなかった。


今は、恋に悩みたいお年頃。

あたしの理想とする王子様を発見したいな。

発見できなくても、作ればいいの。


鼻くそほじっても、あぐらかいても、爪かんでも、お風呂1日くらい入らなくても、

あたしらしく生きれればいいの。

結婚なんて楽勝。

嘘ついてればできてしまうの。


だけど、幼なじみだけは騙せない。

幼なじみなんて、あたしの本性とか知ってるもの。

幼なじみの牛縞うしじま君。

幼なじみというか、小学生の頃からずっと知ってるの。


嫌な思い出とかあったよ。

給食を運んでる時にぶつかってきたり、

あたしに「デブ」「最近、太ってきてね?」とか言ってきたり、

お団子ヘアーにした時なんか「おばさんみたい」とケラケラ笑われた時には、堪忍袋の尾が切れていた。


「思うんだけどさ」

「何?」

あたしは、不機嫌そうに返事をした。

どうせ、あたしのことを馬鹿にしたいだけでしょ?


「髪、お団子以外にした方が可愛いと思うんだけどさ…」

へ?

あたしの顔は真っ赤になっていた。

牛縞君の口から、そんな言葉が出るとか思ってなかったから。


「どんなヘアースタイルがいいかな…?」

「どんなヘアースタイルだっていいんだよ。

とにかく、お団子以外にしろよな」

「どんなって何よ?」


牛縞君とあたしは、一緒にいればすぐに喧嘩ばかりしていた。

喧嘩だけで、1日過ごせるんじゃないかってくらい。


牛縞君があたしを好きとか絶対にないよ。

あたしとは小学生の頃から、

何でも知ってる幼なじみだし、

会えば喧嘩ばかりだし、

あたしのことをからかうけど、

褒めたことはないし、

優しくされたこともないし、

ピンクと赤は嫌いな色と聞いたことあるし、

嫌いな食べ物はいちごみたいだし、

あたしとは趣味が合わないもん。


だけど、不思議なくらい一緒にいるのはどうしてだろう?

あいつのことは大嫌いなはずなのに。

嫌いなら、無視していけばいいのに。


嫌いで無視する人、

嫌いだから喧嘩する人、

どんな違いがあるのかな?


とにかく、明日からお団子ヘアー以外にしよう。

イメチェンもいいかなって思ってる。

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