〜桜和 椿椿(52)〜
「え・・・?」
「桜和さんの話を聞いて、桜和さんにも私と同じように怖いって思ったり、傷つきたくないって気持ちがあるって知った。当たり前の事のはずなのに分かってなかった。それでも、話を聞いて桜和さんを軽蔑する気持ちなんて沸かなかった。むしろ、そこまで抱えてたのに私には何もできない事に、無力感がすごいかな・・・。桜和さんは自分を弱いって言ったけど、やっぱり桜和さんは私が尊敬する桜和さんだよ。自分の事も、周りの事もちゃんと見れる所も、人の事を考えられる所も、悩んでたって自分と、人と向き合おうとする所も。自分の弱さを弱いって認められる所だって強さだよ、簡単に出来る事じゃないって私は思う。・・・今回の件に関して、私にできる事があれば言ってほしい。悩みがあるなら、話せるような存在になりたいと思う。もちろん無理にとは言わないけど、・・・。悩んだって、頼ったっていいんだよ。そう思っている人間がいることを知っていて欲しい。」
真っ直ぐ私の目を見て、私のことで泣いてくれる友達は、こんな弱い私を憧れだと言ってくれる。何かあれば、頼って欲しいとも。ずっと目を逸らしていたものが、目の前にあった。どこか深く入り込まれる事を恐れていたものが。失っちゃいけないものがあるような気がした。
「椿さん。僕からもいいかな?」
「はい・・・」
「君の言った通り、変わる事は怖いし、向き合う事も怖い。それでも前に進まなきゃいけないし、でなければ今まで通りだ。僕は神様じゃない。何かを変える能力は無いし、君を救う事の出来る言葉も知らない。どこまで行ったって、自分の人生の責任は誰も取ってくれないから、結局自分自身が頑張るしかないんだ。でも、変わらない物の中にも苦しくないものはあるよ。・・・少なくともここに一人、どんな状況にあっても変わらず君の味方でいてくれる人が」
「・・・!」
「・・・・。」
変わらない味方・・・。薬立さんは私を心配して、ここまで来てくれて、私の弱さを受け入れてくれると言う。変化はとても怖いけれど、この友達の思いに応えられなければ本当に私は弱いままだ。ここまでして貰っていて、これ以上言い訳に逃げれば、私が私を許せなくなる_______________
「帰ります。しっかり両親と向き合って、私の想いを話してきます」
「桜和さん・・・。大丈夫?」
「うん。もうこれ以上目を背けたくない。自分の人生からも逃げたくない。怖いけど、覚悟は出来た。それに、心強い味方もいるしね」
「っ!・・うん!任せてっ!!」
「はははっ!頼もしいねぇ」
数十時間ぶりに心の底から笑顔が溢れた。重かった心が軽くなったのを感じた。この人達がいてくれるなら恐怖も傷つくことも大丈夫な気がしたのだ。それに気づく事ができて本当に良かったと思う。
「そういえば!桜和さんのやりたいことってなんなの?」
「えっ、あぁ・・・。えっと、幼稚園の先生・・・」
「いいね!桜和さんならなれるよ!」
「っ!・・・・。」
「あれ?桜和さん大丈夫?」
「・・・うん。大丈夫。ありがとう・・・」
思わず背けた顔から、涙が出た。苦しさは感じなかった。今日の陽光は爽やかで心地いい___________
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