〜桜和 椿(35)〜
いつも通り席に座って勉強に励んで、放課後に桜和さんと勉強したり、カフェに行って心助さん達と話す。定着してきた楽しい日常。今日もそう過ごすと思って疑っていなかった。
三限目が後半に差し掛かった頃問題を解くのに集中していた時、私の席の隣に西方先生が来ていた。先生は桜和さんにの方を向いていて雑談をするように進路について話し出した。桜和さんは先生の話を流すように返事をしていたが、話が終わる事はなかった。
話が伸びるほど桜和さんの顔色は暗く、悪くなっていく。先生は桜和さんの様子に気がついていないようで、話が止まらない。
「先せ_____________________
私が口を挟もうとした時、ガタンッ!!!!と隣から大きな音が鳴った。桜和さんの座っていた椅子の音だった。
「桜和さん・・・?大丈夫?」
「あっ・・・」
顔色の悪い桜和さんに声を掛けると彼女ハッと現実に戻ってきたような反応をした。周りの反応に気づいた彼女はすぐに教科書類を鞄に入れて具合が悪いと教室を出て行ってしまった。
「桜和さんっ!待って!!」
私の言葉が彼女に届く事はなく、走り去って行った。
「・・・今、何時だろ・・・。」
時間を確認すると学校から抜け出してから四時間半も経っている。景色が夕日で染まり始めるまでそのことに気づかなかった。
あの後、当ても無く彷徨い続けて気づけばいつもの公園の前まで来ていた。意識をしていなかったが、足は自然と馴染みのある場所に向かっていたらしい。
福寿さんいるのかな・・・・?
多分話を聞いて欲しくて、ここまで来たんだろう。でも、その感情と同じか、それ以上に誰にも会いたくない。話したくないという相反する思いが湧き上がって心が染まっていく。
結局私は手前まで来て引き返した。
とっとと家に帰ろう。今すぐ家に帰ってベットで寝転びたい。よく分からない疲労が体を重くし、街の喧騒が煩わしく感じて仕方がない。人の話し声や、車などの音、温度、些細なストレスでいちいち心がささくれ立つのを感じる。それがまたストレスになるからどうしようもない。
だめだ。今日は。だめな日だ。
早く家に帰ろうと、早足に街を抜けた。
「ただいま。」
よく分からない感情を抱えたままやっとの思いで帰宅した。いつもよりも時間がかかり、とても疲れてしまった。すぐ2階に上がって休もうとした時、左手の扉が開く。
「やっと帰ったか」
低く固い声が聞こえ顔を上げるとそこには、
「お父さん・・・」
二週間ぶりの父親がいた。
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