夜に紛れる前に
:Ret
プロローグ
~プロローグ (1)~
夜には、人を感傷的にさせる力がある。
昼の疲れを癒す為に神経がリラックスする時、不安に襲われやすくなるんだと言う。
ではもし、そのまま『夜』に襲われてしまうと、人はどうなるのだろう。___________
子供の頃、空の絵を描く時青いクレヨンで空を塗り、オレンジや赤で太陽の色を染めたが、実際の空は太陽の中の色の波長が散乱していて空が青く見えたり、赤く見えたりしているのであって、実際の太陽の色は白なんだ。と中学校の理科の先生は、誰が質問したわけでもないのに自慢げに語っていた。正直そんなこと知っていても「そうなのか~」くらいで、僕から見る空の色は変わらず青や赤で仕組みを知ったからどうという事は何も無い。受験の時に出題されて初めて役に立つ話だなと思うくらいだった。
ところで今、瞼に滲む白は太陽の色なのだろうか。
「、きて、_ぃ、じょうぶで、か。」
あれ?僕、日向ぼっこしてそのまま寝たんだっけ・・・?
「おき、下さい。」
確かにこんな優しい日差しを浴びてたら眠気も誘われ_____。
「起きろっ!!」
「はいっ!!」
あれ?僕は日向ぼっこしてたんじゃなくて天国にいたんだっけ?
「やっと起きましたか。何回呼んでも起きないから、もう死んだのかと思いましたよ。」
瞼を開いた先に見えた光は太陽の光ではなく、やや白く光る天井?そして天の声の正体は、高校生くらいの青年だったようで不機嫌そうな顔で僕の顔を覗いていた。
「おーい。大丈夫ですか?意識あります?」
「あ、はい。大丈夫です」
僕を起こした青年は白いワイシャツに青いジーンズを履いていて、白髪に白い瞳をしている。だが、顔は明らかに日本人の顔で、涼しげでキリリとした端正な顔立ちをしている。いかにもモテるタイプの顔だ。ていうか、髪染めてるのか・・?それにカラコン?どう見ても高校生・・少なくとも僕より年下だと思うんだけど、不良か?どちらにしろ僕の苦手なタイプだ・・・。でも、不良の割に敬語使っていたような・・・。人情があるタイプの不良かな・・・。
「今あなた失礼なこと考えてるでしょ。」
顔に出ていたようで思っていた事を読まれて、思わず肩が跳ねてしまった。
「す、すみません。」
「いいですよ。今までの方達も皆似たような反応をされていましたので。この頭と目は余程珍しいのか驚かれる方が多いんです。ちなみに、この髪も目も元々なので貴方達の言うカラコンとかいうやつじゃないですからね。あとなぜか怖がられる方もいますが、とって食べたりしないので安心して下さい。」
端正な顔立ちに、感情が読めない表情も相まって最初こそ怒っているように見えていたが、これが彼の普段通りのようだ。それに、僕より年下のようだが僕なんかよりずっと丁寧で礼儀正しい。
「は、はあ、。いやでもすみません。」それでも失礼だったと思い、もう一度謝ると「だからいいですって。」と大して気に留めていないように言った。
彼が怒りを感じていない事ことは分かっていたが、それでも僕は謝らずにはいられなかった。彼に対して失礼なことを思っていたこともそうだが、それ以上に彼を先入観だけで見ていたことに罪悪感を感じてならなかった。それと同時に自分への嫌悪感と過去の消し去りたい苦い記憶が僕の体を埋め尽くす。
これじゃあ、あいつらと変わらない・・。結局僕も一緒だ・・。だからあの時も________________
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