本編

起きたら「おお、勇者様!」と言われたが身に覚えはない

 ――ジャァーン!!

 いきなりシンバルの音が鳴った。気分の悪い目覚ましだ。

 あれ?確か自分は電車にひかれて・・・


「おお、勇者様!」

「いかにも私が王様だ!」と言わんばかりの姿をしたやつが突っ立っている。

 は?勇者?ここはおとぎ話の世界なのか?

 周りを見渡すと豪華絢爛な部屋が広がっている。――いかにも「お金使ってますよ!金持ちでしょ!」という雰囲気をかもし出している。まるで物語の城のようだ。いや、実際城なのかもしれない。

「僕は勇者なんてものじゃないんですが・・・」

 王様風のやつに日本語は通じた。

「ありぇ?確かから出てきた人は勇者と言い伝えには書いてあったのだがな」

 そう言ってあいつはニャポニカ学習帳を出した。

「まさか、あれが言い伝え?」

 ほかの守衛風のやつは頷いた。僕だけが混乱していた。だって、ニャポニカだぞ。言い伝え。

 というか、自分はなんて言うたいそうなもので召喚されたのか。

「あの、歴代で一番むずかったよな」

 家来の声が聞こえた。まさか、僕のって、模様のほうじゃなくて、数学とかのほうだというのか。一気に自信がなくなった。


「言い伝えを読んだ結果、あなた様は勇者だ!ぜひモンスターを倒し、この世界を救ってくれ!」

 よくわからないことになった。整理すると、一般人の僕が勇者と呼ばれ、この国を救ってくれと言われているということだ。

 整理しても意味が分からない。

「てなわけでヨロシク!装備は支給するからね。」

 勝手に話が進んだ。国王に決定された。

「いっ!」

 嫌です、と言おうとしたが、言い切れなかった。言わせてもらえなかった。守衛が殺意ライフルを構えていたからだ。

 そういうわけで、勇者生活が(強制的に)始まったのだ。

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