第7話

 紗良は、大西の言いなりになる自分が情けなく抱かれるたびに泣いていました。それに真帆には申し訳ないと思ってまた泣きました。

 乱暴された後に絶対妊娠だけは出来ないと思い、お風呂で身体を隅々まで洗いました。大西の臭いが付くのも嫌でした。そして翌日、病院へ行って常用したいと医者に頼んで避妊薬を貰いました。

 そして真帆が13歳になるころ、大西の真帆を見る目に異変を感じたのです。子供を見る目じゃなく女を舐め回すようないやらしい目付きになってました。特に真帆が風呂上がりでバスタオルを一枚身体に巻いただけでリビングを通り過ぎる時などは、舌舐めずりをしている姿を見て血の気が引きました。何とかしないとと思って、真帆に「風呂場でパジャマに着替えておいで」と何回も注意したけど「だって、暑いもん」そう言っていう事をききません。

 そんなある日です、大西が友人と釣りに行くと言うので準備していたリュックを大西に渡す時、見覚えのあるキーホルダーがぶら下がっているのを見つけたのです。

頭を金槌で殴られたような衝撃が走りました。

そのキーホルダーは、私がまだ涼真と付き合っている時、涼真の誕生日にプレゼントした特注品だったのです。

 大西にどうしたのか訊くと、「昔一緒に釣りに言った時、良いなと褒めたら上げますと言われた」そう説明するのよ。私は、有り得ないと思ったの。だって、その表面には紗良と涼真のイニシャルを、裏面にはハート型の中にLOVEと言う文字を専門家に頼んでデザイン化させたもので、20万円もかけた誕生日のプレゼントだから、その事を知っている涼真が他人にやるなど考えられないことだったのです。

 私は、あの時の事故には何か有るんじゃないかと強い疑念を持ちました。

それで私は、今日、大西達が帰って来たら、恐らく釣った魚を自宅で調理し宴会を始めるはずだと考え、自分も参加し友人を酔わせて泊まらせ、事故のいきさつを聞き出そうと考えました。そして証拠を残すために、昼間のうちにホームセンターへ行って録音器を買い求めました。

 このころの真帆は私への反感もあって言う事を聞かなくなり、夜遊びもするようになっていたのです。

 夕方、大西が友人二人を連れて帰って来ました。想定通り宴会が始まったので「私も参加させて」と頼んで、飲んで酔ったふりをし場を盛り上げ、いつも以上に客に酒をたくさん飲ませました。大西は私の真意など知らずに喜んでいました。客は二人とも酒癖が悪く私の身体に触ってきましたが、いやな顔を見せず、無理して色気を振りまきました。大西が友人から「大西!お前、やっと手に入れた女がいると随分口数多いし、飲むペースも早いんじゃないか?夜の楽しみあるからか?」とにやにやしながら言われているのを、私は笑顔で腹を立てながらしっかり聞いていました。客は二人とも40過ぎの独身者で彼女もおらず、傍に女性が居るだけで嬉しそうでした。想定通りの進行でした。

 夜の10時頃には3人ともすっかり出来上がっていて、大西は既にソファで寝ていました。真帆はまだ帰っていませんでした。

 座っているのは友人の杉本と言う男だけ。私は隣に座って甘えるふりをすると、女性に飢えている杉本はキスしようと私に迫って来るのです。私は相手の口を手で押さえ「だめよ、まだ」と言ってじらしました。

何回かそれを繰り返していると、力ずくで私にキスしようとするので「キスさせてあげるけど、ここじゃ嫌だし、その前に教えて欲しいことがあるの」と言って、杉本を立たせ私の肩を抱かせて自分の部屋へ連れて行きました。

杉本はふらつきながらも「何でも、教えちゃう」と言ってついてきました。

 私は部屋に入ると覚悟を決めて自分から杉本の唇にキスをし、そしてベッドへ導きました。並んで座ると、すぐに杉本が私にキスをしようと迫ってきたので「あの事故のこと教えてくれたら、何でも好きにして良いわよ」と言うと、にやにやして「わかった」と言って、事故の真相を話し出しました。私はすかさず録音器のスイッチを入れたのです。腸が煮え返るような話で涙だが零れそうでしたが何とか我慢しました。

 話が終わって、「これで全部だ」と言ったので「トイレ行くからここで待っててね」と言って部屋を出て、大西を起し「杉本さんが、私を強引に部屋に連れて行ってレイプしようとするから逃げてきた」と告げたのです。

 すると酔っていた大西でしたが一瞬で醒めたようで勢いよく立ち上がり、私の部屋へ行き、その後物凄い音が続いてぎゃっと叫ぶ声がして静かになり、少ししてから大西が部屋から出てきて「救急車」と叫んでその場に倒れてしまいました。

 真帆が帰って来たのは、怪我をした二人と付き添いの古川を乗せた救急車が動き出した時でした。

 その夜遅く、私は大西の殺害計画書を作成したのです。

 

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