元アイドルと出会って

@Rui570

元アイドルと出会って

 ここは日本のどこかにあるフリー技術大学。この大学のとある教室で一人の青年が自宅から持ってきたパソコンを打っていた。授業終了後の自習をしているのだ。その青年を一人の教師が声をかけた。

「川井沢君、君のゲームはどんな感じなんだ?」

川井沢と呼ばれた青年はパソコンを見せた。

「教授、完成いたしました。それがこちらです。」

青年のパソコンには青緑色の肌のゾンビが映っている。教授はパソコンを見て言った。

「このゲームとはなんなのかね?」

「こちらはデッドランというゲームです。自分で作った主人公を操作してゾンビから逃げながらエリアである廃ビルから脱出を目指すゲームです。よろしければプレイしてみませんか?」

「そうだな。時間があれば…」

教授は時計を見た。既に5時30分を回っていた。

「申し訳ないが君のゲームは明日の授業でよろしいかな?」

「今じゃダメですか?」

「もうすぐ会議の時間があるのでな。申し訳ない。」

教授はそう言うと教室から出て行った。そこへ、一人の青年が声をかけた。

「琉弥、俺にやらせてくれよ。」

そう言われた青年は黙ってパソコンを閉じると自分のリュックに入れた。

「僕のことを気安く呼ぶな。それにそんなこと言っている暇があるならとっとと作れよ。」

青年は教室を出て行った。




彼の名は川井沢琉弥。フリー技術大学のゲーム科に所属している青年で年齢は18歳。成績は優秀である一方で性格は冷たいのが特徴的だ。琉弥はしばらく歩いて自宅であるマンションの3110号室に到着した。部屋中にはラッキーピースというアイドルグループのメンバーの一人のグッズが飾られている。

「そろそろだな…」

そう呟くと琉弥はテレビの電源を入れた。ちょうど歌番組が始まったところだった。テレビにはラッキーピースのメンバーである6人の女性の姿が映っている。琉弥はその内の一人に注目していた。

「浅藤飛鳥ちゃん…今日も可愛い。」

琉弥がつぶやいた直後に浅藤飛鳥がそれに反応するかのようにカメラめがけて投げキッスをした。

「うわああああああああ!」

テレビを見ていた琉弥は声を上げてしまった。テレビに映っている飛鳥が笑顔で言った。

「これを見ているファンのみんな!盛り上がっていこうねっ!」

そんな飛鳥に琉弥は一人で見とれていた。




翌日。授業が終わって帰り支度を済ませた琉弥は昨日のゲームを教授に見てもらうために教室で待機していた。やがて教授が琉弥に声をかけてきた。

「川井沢君、昨日のゲームをプレイさせてくれないか?」

琉弥は自宅から持参してきたパソコンが置かれた席に教授を座らせた。

「わかりました。早速ですが、その前に教授に質問です。教授はキーボードと専用のコントローラーのどちらを使ってプレイしますか?」

琉弥の質問に教授は驚いた。

「これってどちらか好きな方でいいのか?」

「もちろんです。お好きな方をお選びください。」

「そうか。ならコントローラーでいいかな?」

それを聞いた琉弥は赤、青、黄色、緑の四つのボタンと黒い十字型の方向キーとラバー素材でできた黒い突起がついた水色のコントローラーを出してパソコンにつなげた。

「では基本的な操作方法を説明します。コントローラーの黒い突起・コントロールスティックで主人公を動かせます。十字方向キーでも主人公を動かせますが、どちらでもいいです。コントロールスティックまたは十字方向キーで主人公を移動させながら赤いボタンを押せばダッシュします。青いボタンを押すとジャンプができます。ジャンプしてステージの中にある倉庫や棚の上等に逃げたりすることができますよ。基本的な操作方法はこれで終了ですがよろしいでしょうか?」

説明を聞いていた教授が質問した。

「ロッカーや棚の上とか言っていたが、ゾンビがそこまで来ることはあるのか?」

「ロッカーや棚の上などにジャンプしてくることはありませんが、階段を上ってくることはありますよ。」

琉弥はそう答えた。教授がさらに質問した。

「この黄色と緑のボタンは何に使うんだ?」

「この二つのボタンはアイテムを手に入れた時に使うボタンです。ステージのどこかに虹色の宝箱があります。黄色いボタンを押すと宝箱を開けることができます。その宝箱に入っているのがアイテムです。コントローラーの緑のボタンを押すことでアイテムを使用することができますが、アイテムにははずれがありますのでお気をつけください。」

「なるほどな。ではプレイしてみようじゃないか。」

教授がコントローラーを手にした。

「パソコンのスペースキーまたはコントローラーの赤いボタンを押せばゲームがスタートします。」

琉弥がそう言うと教授はコントローラーの赤いボタンを押した。すると、画面に廃墟となったビルが映し出された。その直後に「何者かによって廃ビルに閉じ込められた数人の男女。脱出する方法はただ一つ。屋上のヘリポートにある一台のヘリコプターが脱出のカギ。だが、ビルの中には大量のゾンビ…」と画面いっぱいに出た。やがてその文字が消えてメインメニューとなった。メインメニューには初めからという青い文字が出ている。琉弥が言った。

「黒いコントロールスティックでメニューの選択をして決定する際は赤いボタンを押してください。」

「わかった。」

そう言うと教授は「はじめから」を選択した。するとキャラクター制作の画面に変わった。

「主人公を作る際は髪型や服装など色々ありますのでご自由にお選びください。」

教授は髪の色を金にしてスーツ姿の主人公を作った。

「名前はどうしますか?」

「そうだな…。私の下の名前である栄次郎にしようじゃないか。」

名前を付けて作り終えた直後に3、2、1の順に数字が浮かび上がり、ゲームスタートという文字が出た。




教授はコントローラーで栄一郎という名の主人公を操作した。教授の操作で栄次郎は暗いビルの一室の中を歩いていく。周りにも色々なキャラクターが暗い部屋の中を歩き回っている。次の瞬間、少し離れた場所で一人が倒れこんだ。緑色の肌のゾンビに捕まったのだ。

「ゾンビが出たな。」

そう言うと栄次郎はその場から離れるが、逃げた先に潜んでいたゾンビが突然目の前に出現した。突然の襲撃に驚き、教授が操作する栄次郎は捕まってしまった。その直後に画面が真っ暗になり、ゲームオーバーという文字が赤く浮かび上がった。




「いやあ…びっくりしたぁ…」

教授は笑いながらそう言うとコントローラーを置いた。琉弥が言った。

「教授、自分が作成したゲームはいかがでしたか?」

「そうだな。何者かによって廃ビルに閉じ込められたというところなんだけどストーリーみたいで面白いな。ところで川井沢君、ゲーム開始から何分か経ったらゾンビが増えるというシステムはあるのか?」

「それはないですね。」

琉弥はそう答えた。

「そうか。その数分経つと鬼が少しずつ追加されていくみたいな感じのやつを追加するともっと面白くなりそうだと私は思う。素晴らしいゲームをプレイさせてくれてありがとう。」

「わかりました。貴重なアドバイスありがとうございます。」

教授のアドバイスを聞いた琉弥はお辞儀をしてから荷物をまとめて教室を後にした。




大学を出た琉弥は近くの電気屋に入っていった。そして一人でCDのコーナーへと歩いて行った。そこでラッキーピースのメンバーが写った写真が入ったケースをレジに持っていった。店員が言った。

「お客様、ファンなんですか?」

「はい。もちろんです。」

会計を済ませた琉弥はそう答えると電気屋を後にし、自宅へと帰っていった。自宅に帰ると琉弥は早速購入したCDのケースを開けた。中にはCDのディスクと一枚の小さいカードが入っていた。これは新発売されたCDに付属している握手会のチケットで一枚につきメンバーの誰か一人と握手することができるのだ。

「よし。次の握手会が来週の金曜だな。」

琉弥はカレンダーを見てそう呟いた。握手会がもうすぐだと思うと楽しみで仕方がない。




そして握手会当日。その日は授業が午前中で終わる予定であったため、琉弥は授業が終了してすぐに握手会が行われるライブメッセという会場に向かった。たくさんの人が長い列を並んでいる。もちろん琉弥もだ。それからしばらく経ち、もうすぐ琉弥の番だ。相手は推しメンでもある浅藤飛鳥だ。琉弥は緊張していた。その時、係の男性が声をかけてきた。

「次の方、どうぞ。」

琉弥はチケットを係の男性に渡した。琉弥の目の前には浅藤飛鳥が立っていた。

「こんにちは!また来てくれたんだね。すごく嬉しい!」

飛鳥は琉弥と握手しながら言った。

「飛鳥ちゃん、僕の名前覚えてくれてるかな?」

「うん。琉弥君でしょ?ちゃんと覚えているよ。」

笑顔でそう答えた飛鳥を見て琉弥も嬉しそうだ。その時、係の男性が声をかけてきた。

「申し訳ございませんが、まもなくお時間です。」

それを聞いた飛鳥は少し寂しそうな表情を浮かべた。それを見た琉弥が励ました。

「短時間だけど飛鳥ちゃんと握手できて嬉しかったよ。これからもずっと飛鳥ちゃんを応援するしライブとか握手会とかも見に行くからその時にまた会おうよ!」

「ありがとう。私もライブとか握手会で待っているからまた来てね!」

飛鳥は笑顔でそう言うと琉弥も優しい笑顔を浮かべて言った。

「いつ見ても飛鳥ちゃんの笑顔…大好きだよ!」

琉弥は手を振ってその場から歩いて行った。飛鳥も笑顔で手を振る。

 家に帰った琉弥は部屋に飾られた自身と飛鳥が映った写真を見つめた。これは数か月前にライブに行った際に撮った写真でメンバーと大勢のファンでジャンケンをやって最後まで勝ち残った一人は推しメンと写真撮影することができるという内容だったのだ。それに見事勝ち残った琉弥は飛鳥と写真を撮ってもらったのだ。

「次の握手会またはライブが楽しみだな…」

そう呟くと琉弥は一人でベッドに眠り込んだ。この時、琉弥は知らなかった。数日後に普通とは思えない日常がスタートするということを…。




握手会から2か月ほど経った。ライブまたは握手会がいつどこで開催されるかに関する情報が入ってこない。それどころかラッキーピースのメンバーの中で飛鳥だけが最近テレビに出ない。しかも琉弥が行ったあの握手会瓦解された日以降からだ。

「一体どうしたんだ…」

琉弥がそう呟いて朝食を口にした直後にテレビに映っているアナウンサーが驚くべき事実を口にした。

「大人気アイドルグループ・ラッキーピースのメンバーとして活動している浅藤飛鳥さんが来月いっぱいで芸能界を引退することを発表しました。調べによりますと飛鳥さんは来月のライブと同時に握手会も行ってから活動を終了しますと述べています。」

このニュースを見て琉弥は驚きを隠せなかった。

「飛鳥ちゃん…どうして…」

そのニュースを知って以降琉弥は彼女の身にいったい何が起きたのか気になって仕方なかった。だが、彼女の最後のライブと握手会には必ず参加したい。琉弥はそう思っていた。

朝ご飯を食べ終えた琉弥は新発売のCDを購入するために近くの電気屋へと向かった。しかし、そこには長蛇の列が待っていた。しかもCDのコーナーから店の入り口まで続いている。こうなってしまったら並ぶしかない。琉弥が並び始めてしばらくしてから誰かが言った。

「聞いたか?今回は飛鳥ちゃん卒業ライブと握手会一緒にやるからCDにライブと握手会のチケットが一枚ずつ付属しているらしいぜ。」

「まじかよ。これは絶対手に入れないとだな!」

(僕だって…絶対に手に入れてみせる…飛鳥ちゃんのためにも…!)

数時間後。列が進んでいき、琉弥も店に入っていった。いよいよ買える。そう思った次の瞬間だった。店員の口からは意外な言葉が出てきた。

「お客様申し訳ございません。売り切れとなってしまいました。」

「えっ?マジっすか?」

「はい。前のお客様でちょうど売り切れてしまったのです。」

琉弥は落ち込んだ表情でその場を後にした。

(僕は…彼女にまた行くと言ったのに…)

琉弥はそのまま自宅マンションに戻ると落ち込んだ表情で座り込んだ。

ライブ当日。ライブはテレビでも生放送されていたため、琉弥はテレビで見ていた。だが、いつも通り楽しい気分になれない。これまでライブに行くだけでなく、テレビで見たりしてきたことが何度かあったが今回はちっとも笑顔になれなかった。

(本来なら僕も生で飛鳥ちゃんを見れたのに…)

そう呟くと琉弥は涙を流してライブがまだ終わっていないのにも関わらずテレビの電源を切った。




飛鳥がラッキーピースを卒業して数日が経った。琉弥は大学の授業を終えて荷物をまとめた。帰ろうとした時、一人の男子生徒が声をかけてきた。

「琉弥、最近変だぜ。どうしたんだよ?」

「別に…。なんでもないよ。」

そう答えると琉弥はイライラした表情で大学を後にした。大学から出た琉弥はそのまま近くのゲームセンターに一人で入っていった。琉弥は飛鳥の卒業ライブのチケットを手に入れられなかったことがきっかけで自暴自棄になっているのだ。ゲームセンターのスタッフが琉弥を見て隣に立っていた同僚に言った。

「ねえ、あの人って最近よく来るよね?」

「そうだね。いつも同じゲームやってばかりいるよね。」

そんなことは気にせずに琉弥は一番奥にある機械の前にある椅子に座ると格闘ゲームを始めた。琉弥がゲーム機のスイッチを押してキャラクターを操作するが、相手のキャラクターの動きにまるでついていけずそのまま負けてしまった。琉弥はイライラした表情でそのキャラをにらみつけるとその場を後にした。

「なんで最近僕はイライラしているんだ…」

一人でブツブツ言いながら自宅マンションに向かった。その時、赤黒い帽子と白いマスク、更に黒い眼鏡で顔を隠した一人の女性とぶつかって尻餅をついた。その拍子に女性の帽子などが外れて女性の顔が露になった。琉弥が帽子などを拾って私ながら謝った。

「すみません。大丈夫ですか?」

「はい、こちらこそすいません。」

女性は帽子などを受け取ろうと琉弥の方を向いた。その女性の顔を見て琉弥は驚いた。

「え…う…嘘だろ…飛鳥ちゃん?」

琉弥とぶつかった女性はなんと大人気アイドルグループ・ラッキーピースの元メンバーの浅藤飛鳥だったのだ。飛鳥も琉弥を見て一瞬驚いた。

「琉弥君、どうしてここに?」

「どうして…ってそれはこっちのセリフだよ。何があったの?」

飛鳥は赤いスーツケースを右手で持って左手で琉弥の手を握った。

「説明は後でするから一緒に隠れて!見つかったら助けてください!」

そう言うと飛鳥は琉弥をゲームセンターの駐車場に連れて行き、そのまま車の陰に隠れた。すると黒いスーツに黒いネクタイに黒いサングラスをした一人の男性が全身白ずくめの3人の男性を連れて歩いてきた。まるで誰かを探しているようだ。その男性たちは琉弥と飛鳥に気づかずにその場から歩き去っていった。琉弥が言った。

「よくわからないから色々と聞きたいけどまずは僕の自宅マンションに行こう。」

「そうだね。そっちの方が安全だと思うから連れて行って。」

琉弥はうなずくと安全を確認しながら飛鳥を自宅マンションに連れていった。




自宅マンションの自分の部屋に無事到着した琉弥はほっとした。

「なんとか何事もなく帰ることができた。」

飛鳥もほっとして荷物を床に置いた。琉弥はお茶が入ったコップを飛鳥に渡して言った。

「これ良かったら飲んで。」

「ありがとう。」

飛鳥はお礼を言って飲み物を受け取った。琉弥はベッドの上に座って言った。

「飛鳥ちゃん、一体何があったの?」

「あの人はマネージャーなんだけど私がアイドルを引退してからすごいしつこくてね…」

琉弥は黙って聞いている。

「私の自宅マンションも知っていて毎日私の家に来たり、電話をかけてきたりしてきたの。限界になったから私は町から出て行こうとしたけどその際にまーねージャーに見つかってマネージャーが雇った科学者たちが開発した変な薬を飲まされそうになったの。」

「変な薬…?科学者…?なんでそんなことを…」

琉弥は驚いた表情だ。飛鳥は泣きそうになりながらも続ける。

「その薬は…飲んだ人の記憶を消す効果があると言っていて…金儲けのために私を操ろうとしているということも言っていて…なんとか逃げ切れたけどあの人たちが私を探していると今でも怖くて…」

琉弥は今にも泣きだしそうな飛鳥の顔をハンカチでふきながら言った。

「大変だったね…。けど安心して。君のことは僕が守ってみせる。」

「…ありがとう。でも私…」

飛鳥は不安そうだった。外にはマネージャーとその部下がいるからだ。

「大丈夫。ここで僕と二人で暮らそう。」

「そうだね…。それじゃあここで一緒に暮らす。」

飛鳥の顔に笑顔が戻った。琉弥が言った。

「君の笑顔を見れて僕も嬉しいよ。」

飛鳥も涙を浮かべて頷いた。琉弥は立ち上がって台所の方へと向かった。

「飛鳥ちゃん、今日の夕飯なんだけど何か食べたい物ある?」

「ハンバーグを食べたいんだけど作るなら一緒に作ろうよ。」

飛鳥はそう言うと台所にいる琉弥の隣に移動した。

「そうだね。一緒に作ろうか。」

飛鳥も笑顔で頷いた。琉弥はハンバーグを作りながら飛鳥に声をかけた。

「飛鳥ちゃん、できるだけ一人で外出することは控えてくれるかい?外出するとしても帽子とか眼鏡とかで顔を隠すようにして。それか僕も一緒に行くからさぁ。」

「そうだね。その方が安全だと思うからそうするよ。」

やがてハンバーグが出来上がった。二人は出来上がったハンバーグを皿に乗せてリビングにあるテーブルの上に運んだ。琉弥と飛鳥はリビングの床に敷かれたじゅうたんに座った。

リビングには二人で作ったハンバーグだけでなく、ご飯やサラダが並んでいる。

「琉弥君、食べようか!」

「ああ。そうだね。食べますか!」

二人はいただきますと言って箸を手にした。夕飯を食べながら飛鳥が言った。

「琉弥君、今思い出したんだけど私の卒業ライブ…」

「ごめん。チケットを手に入れることができなくて行けなかった…」

飛鳥の言葉を遮って琉弥は立ち上がって頭を下げた。琉弥は一瞬思った。飛鳥は怒っているに違いないと。しかし、謝罪の直後に飛鳥の口から出たのは意外な言葉だった。

「いや、私の方こそ…突然芸能界を引退することを報告しちゃってごめん。」

予想外な一言に琉弥は驚いた。

「僕のこと…怒っていないの?またライブとか握手会を行くって言ったのに…」

「そんなことないよ!急に引退した私にも責任あるし…」

琉弥は一度箸を置いた。

「どうして引退したんだい?」

「だって…ごめんやっぱり言えない。」

飛鳥はそう答えると琉弥は不思議そうな表情を浮かべた。

「なんでだろう…」

琉弥がそう呟いた直後に飛鳥が箸でハンバーグを持って琉弥の口の前に運んできた。

「琉弥君、あーんして。」

「えっ?いいの?」

琉弥は驚いて顔を赤らめた。飛鳥は笑顔で答えた。

「もちろんだよ。あの時のお詫びだから。」

琉弥は顔を赤らめながら口を開けてハンバーグを食べさせてもらった。琉弥もご飯を箸で持って飛鳥の口の前に運んだ。

「飛鳥ちゃん、僕からもライブに行けなかったお詫びだ。口を開けてくれる?」

「えっ?いいの?恥ずかしいよ。」

飛鳥も顔を赤らめた。ちょっとしてから口を開けてご飯を食べさせてもらった。

「琉弥君、私今すごく嬉しい。ありがとう!」

「いやあ…別に…気にしないで。」

琉弥も顔を赤らめた。まるで二人はカップルのようだ。




夕飯を食べ終えた琉弥は皿洗いをしていた。そこへテーブルを布巾で拭いてきた飛鳥が近づいてきた。

「琉弥君、聞きたいことがあるんだけどトイレとかってどこにあるの?」

「トイレは台所のすぐ近くにある扉を開けるとあるよ。」

琉弥はそう答えた。皿洗いを終え、琉弥はリビングに戻ってベッドの上に座り込んだ。リビングにある椅子に座っていた飛鳥が声をかけた。

「琉弥君、お風呂に入りたいんだけどどうやってお湯を沸かすの?」

「今から教えるよ。」

そう言うと琉弥は飛鳥と共にリビングを出てすぐ近くにあるトイレの隣にあるバスルームの方へと向かった。バスルームのドアの前まで来た時、飛鳥が言った。

「琉弥君の部屋ってお風呂とトイレ別々になっているんだ。」

「まあね。前の家だとどうだったの?」

「私が前まで住んでいたマンションは別々じゃなかったんだ。」

「そうだったんだね。」

飛鳥がドアの近くの壁についた機械を指さして言った。

「これを使って湯を沸かすみたいだけどどのスイッチを押せばいいの?」

「この湯を沸かすって書いてある赤いスイッチを押せば自動でお湯が沸かされるよ。」

琉弥が機械の赤いボタンを押して答えた。琉弥はリビングに戻るとパソコンを開き始めた。パソコンには数名の男女と緑色の肌のゾンビが映っている。これは以前琉弥が教授に見せたデッドランというゲームで琉弥が作成したのだ。そんなことを知らない飛鳥はパソコンを見て言った。

「ねえ琉弥君、このゲームって何?」

「これは僕が大学で作成したデッドランというゲームだよ。簡単に説明すれば自分で作った主人公を操作してゾンビから逃げながら廃ビルからの脱出を目指すゲームだ。このゲームを始める前にプレイヤーは自分の分身である主人公を作らなくてはいけないんだ。ただ髪型とか服などを選ぶだけだからとても簡単に主人公を作れるよ。」

琉弥の説明を聞いて興味がわいてきた飛鳥はパソコンに近づいた。

「琉弥君、このゲームやってみてもいいかな?」

「もちろんだよ。」

飛鳥はパソコンの前に座った。

「ねえ琉弥君、これって続きからというのを押すとどうなるの?」

「それは前に僕がプレイしたやつだから続きから始まるんだ。はじめからというところを押すと新しく主人公を作らなくてはいけないんだ。どっちでもいいよ。」

飛鳥は画面を見つめて考えた。

「じゃあ…続きからでやってみるよ。これってゾンビに捕まったらどうなるの?」

「ゲームオーバーになってセーブする前のデータが消去されちゃう。だもんでこまめにセーブするようにね。あと、聞き忘れたんだけど飛鳥ちゃんはキーボードとコントローラーのどっちでプレイする?」

それを聞いて飛鳥は少し驚いた。

「これってコントローラーでもプレイできるんだ。こんなゲーム作るなんてすごい!」

琉弥は顔を赤らめて照れた。

「そ、そんなこと…」

琉弥は嬉しそうな表情だ。飛鳥は最初にキーボードでやってみることにした。

「キーボードでの操作方法を説明するよ。数字の0~9を押すとキャラクターが前進するよ。アルファベットだと基本的にはA~Dしか使わないよ。AでジャンプしてBでダッシュ、Cでエリアにある宝箱を開けてたあら箱に入っているアイテムをゲットできるよ。アイテムには当たりとはずれがあるから気をつけて。Dを押すと持っているアイテムを使うことができるよ。セーブしたいときはShiftを押せばセーブ画面に切り替わるよ。メニューの決定する際はカーソルを動かしてクリックする。その際はマウスを使ってもいいし使わなくてもいいよ。覚えられたかな?」

「大丈夫だと思うけどやってみるよ!」

飛鳥はそう言うとゲームをスタートした。




飛鳥の操作でリュウという名前のキャラクターは暗いビルの中をゆっくりと歩いていく。やがて金色の鮮やかな光を発したケースが目の前に見えた。宝箱だ。宝箱を開けると赤いボールのようなものが入っていた。これは爆弾であり、ゾンビに向けて投げつけるとゾンビは10秒間動けなくなるのだ。その時、ゾンビが近づいてきた。リュウは先程手に入れた爆弾を投げつけた。それによってゾンビは仰向けに倒れて動かなくなった。そのすきにリュウはその場から逃げ出した。なんとかゾンビを振り切ったリュウはまた宝箱を発見した。

「ここでセーブするね。」

飛鳥がそう言うとShiftキーを押した。すると画面にセーブして続けるという文字とセーブしてやめるという文字が浮き出たセーブメニューに変わった。飛鳥は「セーブして続ける」を選択した。飛鳥は再びリュウを操作して目の前の宝箱を開けた。次の瞬間、ゾンビが飛び出てきた。

「キャア!」

飛鳥が悲鳴を上げると同時に画面が真っ暗になり、ゲームオーバーという文字が赤く光った。ゾンビに捕まってしまったのだ。




 ゲームを終えた飛鳥に琉弥が声をかけた。

「どうだった?」

「ゾンビがはずれの宝箱から出てきたのはびっくりしたけど面白かった。」

飛鳥がそう答えた直後にバスルームの方からピーという音が聞こえた。

「何か聞こえたけど…今の音って何?」

「お風呂の準備ができたという合図だよ。」

飛鳥に対して琉弥はそう教えた。それを聞いた飛鳥は座っている琉弥の手を掴んだ。

「えっ?どうしたんだい?」

琉弥は飛鳥が何をしようとしているのかわからない。

「琉弥君、一緒にお風呂に入らない?」

「えぇっ?」

琉弥は驚いた。飛鳥は琉弥の後ろに回り込んで背中を押しながらバスルームへと向かっていく。琉弥は歩く方向を変えてリビングに戻ろうとするが、飛鳥は琉弥をリビングに連れていこうと背中を掴む。琉弥はなんとかリビングに戻ったが、飛鳥はまだ追いかけてくる。

「琉弥君、本当は一緒に入りたいんでしょ?」

「そう言う飛鳥ちゃんはどうなんだ?」

すると、飛鳥は突然しゃがみこんだ。

「うう…私は…琉弥君と…」

琉弥はそんな飛鳥を見て急に心配になった。

「飛鳥ちゃん…」

琉弥がそう呟いた瞬間、飛鳥が小さい声で言った。

「まだ…気づかないの…?」

「飛鳥ちゃん…ごめん。…僕は…」

次の瞬間、飛鳥はクスクスと笑い始めてやがて大笑いし始めた。

「あっはっはっは!な~んてね!冗談よ、琉弥君!」

飛鳥の冗談だと知った琉弥は「冗談かよ」と言って座り込んだ。

「ごめんごめん。琉弥君の反応が見たかっただけなの。別に悪気があったわけじゃないよ。」

琉弥も笑みを浮かべた。

「正直びっくりしたよ。マジで言っているのかと思ってどうしようって一瞬焦った。」

「フフフ。じゃあ先お風呂入って来るね。覗いちゃ駄目だよ。」

飛鳥はスーツケースに入っていたパジャマとタオルを持ってバスルームの方へと向かっていった。琉弥は笑顔で飛鳥を見届けてからパソコンのゲームをやり始めた。




 琉弥が一人でゲームをやっている間、飛鳥は一人でお風呂に入っていた。その時、飛鳥はあることに気づいた。

「あっ!洗顔クリームがバッグに入れっぱなしだった!」

飛鳥はリビングにいる琉弥に声をかけた。

「琉弥君、私のスーツケースから洗顔クリーム取って!」

それを聞いた琉弥は飛鳥のスーツケースを開けて洗顔クリームと書かれた容器を出した。琉弥は後ろを向いた状態で飛鳥のもとへと向かい、後ろ向きで容器を渡した。

「ありがとう!あと一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「いいけど…どうかしたの?」

琉弥は後ろ向きで返事した。お風呂に入りながら飛鳥は後ろを向いている琉弥を見つめた。

「琉弥君、今なんで後ろ向いているの?」

「いや…僕は……今前むいちゃダメでしょ…」

琉弥は小さい声でそう言うと扉を閉めてそのままリビングに戻っていった。まるで恥ずかしがっている子供のように。その様子を見た飛鳥は笑みを浮かべた。

「可愛い。」




 琉弥がテレビを見ていると風呂上がりの飛鳥がバスルームから出てきて声をかけてきた。

「琉弥君、今上がったから入ってきて。」

「わかった。じゃあ入って来るね。」

琉弥はそう言うとパジャマなどを持ってバスルームに向かった。琉弥がバスルームに入っていた後、飛鳥はリビングを見回した。飛鳥のタオルやサインなどが飾られている。琉弥がライブや握手会などに何度も行って手に入れたのだ。しばらくしてパジャマ姿の琉弥がバスルームから出てきた。飛鳥が声をかけた。

「琉弥君、めちゃくちゃ私のタオルとかサインとか写真飾ってあるじゃん!」

「まあね。アイドル時代の飛鳥ちゃんの大ファンだったから。」

琉弥は笑顔で言った。飛鳥も琉弥を見つめて言った。

「アイドルを卒業しちゃった私が言っちゃあなんだけど今の私はすごい嬉しいよ!ありがとう、琉弥君!」

琉弥も嬉しそうに顔を赤らめた。

「そ…そんな…僕は…」

照れている琉弥を見て飛鳥も嬉しそうだ。飛鳥が言った。

「明日って何か予定ある?」

「明日は大学休みだよ。よかったら近くのショッピングモールでも買い物行かない?」

「いいじゃん。行こうよ。」

飛鳥は笑顔でそう言うとベッドに寝転んだ。琉弥が質問した。

「僕のベッドで何してるの?」

「夜はここで寝ようと思ってね。いいかな?」

「僕はいいと思うよ。」

琉弥はそう言うとクローゼットから何かを取り出そうとした。ベッドで寝ながら飛鳥が聞いた。

「何しているの?」

「クローゼットに入っている寝袋を出そうと思ってね。」

琉弥はそう答えてからテーブルに置いたペットボトルのコーラを飲んだ。

「それなら私とベッドで一緒に寝ればいいんじゃない?」

それを聞いた瞬間、琉弥は驚いて吹いてしまった。

「それ…また冗談…?」

「いや、これは本当だよ。だって寝袋をクローゼットに入れたり出したりとかしないで済むじゃん。私はそう考えているけどどう?」

琉弥は恥ずかしくて何も言えないでいると飛鳥が立ち上がって琉弥の手を引っ張ってきた。

「本当に大丈夫なの?」

琉弥が聞くと飛鳥が笑顔で答えた。

「いいから早く寝ようよ。」

「わかった。じゃあ二人で一緒のベッドで寝ようか。」

琉弥はベッドに寝そべった。その隣で飛鳥も寝そべっている。大人三人が寝れるほど大きいサイズのベッドで誰かと寝るのは初めてだろう。そう思うと琉弥は恥ずかしくて眠れなかった。




 翌朝。琉弥がベッドで寝ていると何かが自分の上に乗ったような気がして目を覚ました。

飛鳥が琉弥の体の上に乗っかったのだ。

「おはよう!もう朝だから起きて!」

「飛鳥ちゃん…起きるの早いねぇ…」

琉弥がまだ眠たそうにそう言った直後に飛鳥は声を上げた。

「何言ってんの!もう8時過ぎてるよ!」

それを聞いた琉弥は時計を見た。もう8時半を過ぎようとしている。琉弥はベッドから起き上がって洗面所で顔を洗い始めた。飛鳥が後ろから声をかけた。

「私もちょっと前に起きたばかりで朝ごはん今作っているからね。」

「わかった。朝ご飯できる前に着替え済ませておくよ。」

琉弥はそう言うとリビングに戻ってパジャマを脱いでシャツに着替えた。着替え終えると同時に飛鳥が卵焼きやサラダ、パンを持ってきた。琉弥がそれを受け取って言った。

「僕も運ぶの手伝うよ。」

「うん。ありがとう。」

リビングのテーブルに卵焼きなどを運んだ琉弥と飛鳥は早速朝ご飯を食べ始めた。卵焼きを食べながら琉弥が言った。

「飛鳥ちゃんが作った卵焼きめちゃくちゃ美味いね!」

「ほんと?」

「本当だよ。これはもういくらでも食べれる。」

それを聞いた飛鳥は顔を赤くして琉弥の背中を叩いた。

「朝っぱらからやめてよ!照れるじゃん!」

「フフ…ごめんごめん。」

笑いながら謝る琉弥に対して飛鳥もにこりと笑った。




 朝ごはんを食べ終えた二人はリビングで話し合っていた。飛鳥が言った。

「このマンションの近くにショッピングモールがあるのが見えたんだけどそこ連れてってくれるって言っていたよね?」

「もちろんさ。けど、君が行くと騒ぎになるから帽子とか眼鏡とかをしておいた方がいい。」

そう言う琉弥に飛鳥は賛同し、黒い帽子をかぶってから眼鏡をかけた。

「準備はできたかな?」

琉弥にそう聞かれて飛鳥はうなずいて答えた。準備の方はこれで大丈夫だ。




 琉弥と飛鳥はマンションを出るとそのまま近くのショッピングモールに向かった。向かっている途中、白衣を着た三人の男性を従えて歩いている黒いスーツに黒いサングラスをした一人の男が二人の前を通り過ぎた。以前飛鳥を追っていたあの男たちだ。飛鳥は驚いて琉弥の後ろに隠れるが、その男たちは琉弥たちに気づかずにどこかへと歩き去った。琉弥がほっとした次の瞬間、飛鳥は落ちていた石につまずいた。

「キャッ!」

転びそうになり、飛鳥が悲鳴を上げた瞬間、男たちが飛鳥の声に反応して振り向いた。琉弥が飛鳥の体を受け止め、なんとか転ばずに済んだ。しかし、帽子と眼鏡が転びそうになった拍子に外れてしまった。よって顔は丸見えだ。白衣を着た男の一人が言った。

「発見しました!」

それを聞いた黒ずくめの男が大声で言った。

「彼女を捕らえろ!絶対逃がすな!」

琉弥は飛鳥の帽子と眼鏡を彼女にかけさせて言った。

「飛鳥ちゃん、このままショッピングモールに逃げよう!人が大勢いるからうまくやり過ごせると思うから!」

飛鳥はうなずくと琉弥と手をつないでその場から逃げ出した。男たちもその後を追う。琉弥と飛鳥は男たちから逃げながらそのままショッピングモールに入っていった。




 ショッピングモールに入った琉弥と飛鳥はすぐに曲がり角を曲がって本屋に入っていき、本棚の陰に隠れた。ターゲットを見失った男たちは周辺をきょろきょろと見回した。

「どこへ行ったんだ?」

しかし、琉弥と飛鳥の飛鳥の姿はどこにもない。黒ずくめの男は白衣を着た三人の部下に命じた。

「こうなったら手分けして探すぞ。見つけ次第捕らえて俺に報告しろ!」

「「「了解!」」」

男たちは手分けして探すためにそれぞれその場から走っていった。本棚の陰に隠れながら琉弥が言った。

「諦めて帰ってくれるといいが…」

飛鳥が声をかけた。

「ねえ琉弥君、このまま本屋に隠れているといずれ見つかっちゃうかもしれないと私は思うんだけど…」

「そうだね。あの人たちから逃げながら色々なお店に行くのが一番かもしれないね。」

そう言うと琉弥は飛鳥と手を繋ぎながら本屋から出て行き、ゲームセンターに入っていった。ゲームセンターに入った直後に飛鳥が声をかけた。

「琉弥君、あのクレーンゲームやりたいんだけど!」

飛鳥が指さしたのはホワイトタイガーのぬいぐるみのクレーンゲーム。

「わかった。じゃあやってみようか。」

琉弥はそう言うと機械に100円を入れた。飛鳥はレバーを右に動かした。すると、クレーンも右に動いた。その後にレバーを前に倒してクレーンを奥の方に移動させた。その直後に赤いボタンを押した。すると、クレーンがゆっくりと降りていき、ぬいぐるみを掴んだ。ぬいぐるみは見事持ち上げられた。

「やったぁ!一発でゲット出来ちゃった!」

飛鳥は声を上げて喜んだ。琉弥も笑顔で声を上げた。

「一発でゲットできるってすげえじゃん!」

「うん。私、やったよ!」

飛鳥は手に入れたホワイトタイガーのぬいぐるみを抱きしめた。琉弥が指さして言った。

「飛鳥ちゃん、次は僕がやりたいやつやっていいかな?」

「もちろんいいよ。何をやるの?」

琉弥は指さして言った。

「僕はあれをやろうかなと思うけど。」

琉弥が指さしたのはシューティングゲームだ。次々と現れるゾンビたちをビームガンで撃っていくゲームだ。飛鳥が言った。

「私そういう系のゲームあまりやらないから隣で座ってみていていいかな?」

「いいよ。怖かったら遠慮なく言って。」

琉弥は飛鳥に優しく言った。琉弥が今からやろうとしているゲームは二人でプレイできるだけでなく、乗り物のような形をした機械で座席もある。琉弥は座席に座ると飛鳥も隣で座った。琉弥が100円を入れた直後だった。

「わっ!」

飛鳥が声を上げながら右手を琉弥の左肩に当てた。

「うぉっ!」

これに対して琉弥は驚いた。飛鳥はそれを見て笑っている。

「びっくりした?」

「びっくりしたよ。けど今はさすがにやめて。」

琉弥は笑顔で言った。飛鳥も笑顔で琉弥を見つめている。




 ゲームがスタートした。琉弥は銃のような形をしたコントローラーの引き金を引いた。弾丸が連射されて画面に映ったゾンビたちが射撃を受けて倒れていく。画面の下の方から突然ゾンビが出てきた。

「キャッ!」

飛鳥は驚いて声を上げるが、琉弥はそのゾンビを見逃さず撃ち倒した。しかし、ゾンビはキリがない。ついに大勢のゾンビに画面いっぱい覆いつくされてしまい、画面が真っ暗になってしまった。その直後にゲームオーバーという文字が浮かび上がった。琉弥は笑顔で呟いた。

「やられたな…」

「琉弥君、さっきの人たちがこっちに来ている!」

それを聞いた琉弥も白衣を着た三人の男の一人が近くを歩いていることに気づく。

「このままじゃ見つかるから他の店に移動しよう。」

そう言うと琉弥は飛鳥と手を繋いでゲームセンターを後にした。白衣の男はゲームセンターを探すが、琉弥と飛鳥が既に去っていることに気づかなかった。




 ゲームセンターから出た琉弥は歩きながら飛鳥に言った。

「このままではいずれ捕まると思うから今すぐに帰ろう。」

「えぇっ?まだ来たばかりなのに…」

飛鳥は驚いた表情だ。

「冷静に考えてみるとこれ以上ここにいるのは危険な気がするんだ。」

「う…うん…そうだね…」

飛鳥はそう言うが不満そうだった。琉弥と飛鳥はそのまま自宅マンションへと走っていった。自宅マンションに向かっている途中、琉弥が声をかけた。

「お昼って何か食べたい物ある?持ち帰って食べようと思うけど…」

「それならピザ食べたい。」

飛鳥はすかさずそう答えた。それを聞いた琉弥は飛鳥と共に自宅マンションの近くにあるピザ屋に向かった。




 ピザ屋に入ると琉弥と飛鳥は近くのベンチを座った。

「いらっしゃいませ。ご注文の品が決まり次第スタッフにお声掛けください。」

店員はそう言うとメニューの紙を琉弥たちに渡した。

「飛鳥ちゃん、食べたいやつ選んで。」

飛鳥はメニューを見た。そしてしばらくしてからジャガイモやコーンが乗ったピザを指さして言った。

「このポテマヨコーンにするよ。ちょっとトイレ行ってくるから頼んでおいてくれる?」

「わかった。」

飛鳥はベンチを離れてトイレに行った。琉弥が店員を呼んだ。

「すみません。注文決まったんですけど…」

そう呼ぶと店員が歩いてきた。

「ポテマヨコーンを一つ以上です。」

「はい。かしこまりました。出来上がり次第及び致しますので証書お待ちください。」

琉弥は会計を済ませるとピザが出来上がるのを待った。その時だった。ピザ屋に黒ずくめの男と三人の部下が入ってきた。黒ずくめの男が声をかけてきた。

「君、今我々が探しているこの女性を知らないか?」

そう言うと飛鳥の写真を見せてきた。

「すいませんが、見ていませんね。」

琉弥はそう答えたが、黒ずくめの男はまた別の質問をしてきた。

「今日は君一人でこの店に来ているのか?それとも誰かと一緒か?」

「僕は今一人ですが…何か…?」

琉弥はそう言った。

「君一人ならそれでいい…。だがもしも彼女を見つけたら我々に報告してほしい。ではまたどこかで会おう…。」

黒ずくめの男はそう言うと部下と共にピザ屋を後にした。黒ずくめの男たちが去った直後に飛鳥が戻ってきた。琉弥が小さい声で言った。

「さっき君を狙っているあの男がここに来た。もうどこかへ行っちゃったけど近くをうろついていると思う。」

「わかった。帰る時も用心しないとね。」

飛鳥がそう言った直後に店員が声をかけてきた。

「お待たせいたしました。ポテマヨコーンでございます。」

「はい。どうも。」

琉弥はそう言ってピザを受け取って飛鳥と共に自宅マンションに向かった。




 なんとか自宅マンションに到着した二人はほっとした。飛鳥が言った。

「琉弥君、ピザおごってくれてありがとう。」

「いや、僕の方こそごめん。あの黒い服の人たちから君を守りたくて。」

「いいの。そんなことよりピザ冷めちゃうから食べよう。」

飛鳥は笑顔でそう言うとピザを食べ始めた。琉弥もピザを食べ始める。飛鳥が笑顔で言った。

「琉弥君、このピザおいしいね!いくらでも食べれちゃう!」

「本当だ。これは二人で一枚じゃ足りないくらいだね。」

飛鳥が右手でピザを1ピース持つと琉弥に向けてきた。

「琉弥君、あ~んして。」

それを聞いた琉弥は顔を赤くしながら口を開ける。次の瞬間、飛鳥は琉弥に食べさせると思いきやまさかのピザを自分の口の方に持っていって口に入れた。これは飛鳥のイタズラだったのだ。

「あげませ~ん。」

飛鳥はピザを食べながら笑った。

「そりゃないでしょ。」

琉弥も笑顔でツッコミを入れる。




 琉弥と飛鳥が同居し始めて数日が経ったある日の朝。琉弥は大学に登校する支度をしていた。荷物をまとめている際に飛鳥が小さい箱を渡して言った。

「これ私が作ったお弁当。お昼に食べて。」

「ありがとう。今日授業が終わるのは午後の2時くらいだからいつもより授業が早く終わる予定だからね。」

「わかった。気をつけて行ってきてね。」

飛鳥は笑顔でそう言うと琉弥の頬に顔を近づけてキスした。これに琉弥は驚いてその場で凍りついた。そんな琉弥に対して飛鳥は笑顔で言った。

「どうしたの?早くしないと遅刻しちゃうよ。」

琉弥は頬を赤らめて言った。

「そ、それじゃあ…僕も…行ってくるよ。」

そう言った直後に今度は琉弥が顔を飛鳥に近づけて頬にキスをした。すると、今度は飛鳥が頬を赤らめた。琉弥は飛鳥に優しい笑顔を向けると玄関から出かけて行った。飛鳥も笑みを浮かべるとそのままリビングの方へと戻っていき、スマホを見始めた。飛鳥のスマホには遊園地が映っている。どうやらその遊園地に行くためにアトラクションなどを調べているようだ。だが、このことを琉弥は知らない。




 午前中の授業が終了し、学生たちが講義室を出て行った。静かな講義室で琉弥は一人で弁当箱を開けた。お弁当箱にはご飯だけでなく、トマトや唐揚げ、ハンバーグが入っている。ご飯の上にはハートマークが乗っている。

「これが…飛鳥ちゃんが作った弁当…!」

琉弥はそう呟くと一人で弁当を食べ始めた。一口食べた瞬間、琉弥はその場で凍りついた。

「ハンバーグにはソースで…唐揚げにはレモン汁で…味付けがしっかりとされている…!」

そう言うと琉弥は夢中でほおばった。そして、食べ終えると再びパソコンを操作し始めた。

「あとで飛鳥ちゃんに感謝しないとな。」

琉弥はパソコンを見つめながらそう呟くと笑みを浮かべた。そこへ一人の女子大生が講義室に入ってきて琉弥に声をかけてきた。

「ねえ、これって川井沢君のお弁当箱?」

「そうだけどなんで?」

琉弥はパソコンを操作しながらそう言った。

「べ、別に…」

女子はそう言うとどこかへと去っていった。




 授業を終えた琉弥は自宅マンションに帰宅した。

「琉弥君、お帰り!」

リビングにあるベッドの上でゴロゴロしながら飛鳥が声をかけた。

「ただいま!」

琉弥はそう言うと荷物を置いてそのままベッドの上に寝転んだ。その際に飛鳥が持っているスマホに遊園地のホームページが映っていることに気づく。

「飛鳥ちゃん、それって近くにあるピースランドのホームページだよね?」

「そうそう。ここ行きたくてアトラクションとか調べてみたんだ。」

飛鳥は笑顔で言うが、琉弥は真面目そうな表情だった。

「飛鳥ちゃん、君は追われている身だということを忘れていないよね?」

「えっ?忘れてはいないけど…」

琉弥の質問に飛鳥はそう答えた。

「忘れていないならいいけどできるだけ外出は控えた方がいい。」

「どうして?」

今度は飛鳥が質問した。

「あの男たちが君をまだ狙っているかもしれないよ。」

琉弥がそう答えた直後だった。

「でも…あれから何日も経っているからもう大丈夫でしょ…」

「もしも未だに君のことを追っていたらどうするんだい?」

飛鳥はとうとう怒り出した。

「琉弥君、いい加減にしてよ!私はこのピースランドに行きたいの!」

「もしもそこで見つかってそのまま捕まったら楽しみも何もないだろ!」

琉弥は飛鳥にそう言い返した。

「わかった…。もういいよ。私一人で行くから!」

「じゃあ勝手にしていいよ!その代わり家に帰ってこないでくれ!」

琉弥も飛鳥に怒鳴りつけた。飛鳥は目に涙を浮かべてマンションを飛び出していった。琉弥はそんな飛鳥を見届けた。




 家から飛び出した飛鳥は一人で歩いていた。

「琉弥君なんてもう大嫌い…。琉弥君もあのマネージャーと一緒じゃん!」

一人でブツブツ言っていたその時だった。

「ようやく見つけたぞ、飛鳥!」

全身黒ずくめの男が白衣を着た三人の部下を連れて歩いてきた。

「マネージャー…私はもうアイドルなんかじゃないから!おまけにしつこい!」

「何度でも言え。お前は俺に従わなくては所詮ダメな人間だ。」

そう言ってマネージャーは笑みを浮かべて近づいてきた。飛鳥は男たちに背を向けて走り出した。男たちも後を追う。飛鳥は川の上にある橋を渡った直後に転んでしまった。その時、帽子とマスクで顔を隠した一人の青年がどこからか走ってきて飛鳥を連れて橋の下の足場へと移動した。

「ちょっと何するの?」

驚いた飛鳥はそう言うが、青年は人差し指を自分の口に当てた。静かにしろということだ。すると、マネージャーたちが橋の下に飛鳥が隠れていることに気づかずに走り去っていった。飛鳥は自信を救ってくれた青年にお礼を言った。

「ありがとうございます。けどどうして私を助けてくれるんですか?」

そう言われた青年はマスクと帽子を取った。それは琉弥だった。

「飛鳥ちゃん、ごめん。僕は君を守りたかっただけなんだ。」

琉弥は真面目そうな表情で謝罪した。

「うん。私もわがままを言ってごめん。」

飛鳥も目に涙を浮かべて謝罪した。琉弥はズボンのポケットから出したハンカチで飛鳥の涙を拭いた。

「たしかにずっと家にいるのもやっぱりよくないね。あの人たちにバレないように君が行きたがっていたピースランドにでも行かない?ここから歩いて5分くらいで着く。客に紛れればなんとか振り切れると思う。」

「そうだね。わかった。」

琉弥は飛鳥と手を繋いでピースランドへと向かった。飛鳥の背中に小さな機械がついていることも知らずに。




 その頃、マネージャーたちは飛鳥たちがピースランドに向かったことを知らずに飛鳥を探していた。部下の一人が言った。

「彼女は一体どこへ逃げたんだ!」

「あわてるな。」

マネージャーは冷静な口ぶりだ。

「それってどういうことですか?」

「飛鳥が逃げる直後に発信機をつけておいた。レーダーが反応するはずだがなぜ…」

その時、マネージャーが持っていた丸い機械が音を立てた。その機械の画面にはピースランドに向かっているという文字が映っていた。

「なるほど。」

そう呟くとマネージャーたちもピースランドへ向かって行った。




 琉弥と飛鳥はピースランドにたどり着いた。

「飛鳥ちゃん、ここで観光客のふりをすれば奴らから逃げられると思う。けど僕から離れないようにしてね。」

「わかった。琉弥君、私乗りたいアトラクションがあるんだけど付き合ってくれるかな?」

「いいよ。何に乗りたい?」

飛鳥は無言で指さした。飛鳥が指さした先にはジェットコースターがあった。

「わ、分かった。じ、じゃあジェットコースターに乗ろうか…」

琉弥は少し震えている。実は絶叫系のアトラクションが少し苦手なのだ。飛鳥はそんなことに気づかずに琉弥の右手を握った。

「それじゃあ行こうか!」

琉弥はうなずくと飛鳥と共にジェットコースターの列に並んだ。




列を並んでしばらくしてから二人の番が来た。琉弥と飛鳥は乗り物に乗ると安全ベルトを締めた。飛鳥が声をかけた。

「琉弥君、手を握ってもいいかな?」

「えっ?」

琉弥が困惑していると飛鳥は隣に座っている琉弥の左手を握ってきた。それと同時に乗鋭物が動き出し、山のようになっているレールを上り始めた。頂上まで登り切った次の瞬間、琉弥と飛鳥を乗せた乗り物は猛スピードで急降下していった。

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

園内に琉弥と飛鳥の悲鳴が響き渡った。乗り物は山を急降下してからものすごいスピードでカーブを曲がったりする。スピードもとんでもないことになっている。琉弥と飛鳥の絶叫は園内に響き渡った。この時、二人はあのマネージャーたちの魔の手が迫っていることに気づいていなかった。




 ジェットコースターを乗り終えた琉弥はフラフラした状態で近くのベンチに近づくとそのまま座り込んだ。

「ヤバい…目が回る…」

そんな琉弥を見て飛鳥は心配そうな表情を浮かべた。

「琉弥君、大丈夫?」

「大丈夫と言いたいところだけど…ちょっと休憩が必要かな…」

そう言うと琉弥はそのまま目を閉じて眠ってしまった。

「フフフ…可愛い…」

飛鳥はそう呟くと琉弥の頭を自分の膝の上に乗せた。




 琉弥と飛鳥が来ているピースランドにマネージャーとその部下たちが到着した。

「このピースランドのどこかに飛鳥は逃げ込んだ。見つけ次第私に報告しろ。いいな?」

「「「はっ!」」」

マネージャーたちの魔の手は二人に迫っていた。




 マネージャーたちがピースランドまで追ってきたことを知らず、寝ていた琉弥は目を覚ました。

「おはよう。もう大丈夫?」

「うん。もう大丈夫…って…えっ!」

琉弥は飛鳥の膝枕で寝ていたことに今はじめて気づいた。

「僕は…君の膝枕で…寝ていた…」

「大丈夫だよ。この方が気持ちよく寝れたでしょ?」

「ま…まあ…そうだね…」

琉弥は顔を赤くして言った。恥ずかしそうな表情だ。

「そこまで恥ずかしがらなくてもいいのに…。とにかく次あの船に乗りたい!」

飛鳥は笑顔でそう言うと川のようなプールを進んでいく船を指さした。

「わかった。それじゃあ行こうか。」

琉弥と飛鳥は手を繋いで船の乗り場に向かった。近くの橋を渡った次の瞬間だった。

「見つけたよ、飛鳥!」

振り向くと部下を従えたマネージャーが歩いてきた。

「琉弥君、今すぐに一人で帰って。」

「えっ?急にどうしたんだよ?」

琉弥は飛鳥の言っている意味を理解することができなかった。

「これ以上琉弥君を巻き込みたくないの。」

「僕は君を守ってみせる。だから帰らないよ。」

琉弥がそう言った直後に三人の部下のうち二人が琉弥の前に立ちはだかった。マネージャーと残った一人の部下が飛鳥にゆっくりと近づいた。

「君は私の言う通りにしていればいいんだよ。そうじゃなくては君自身も困るじゃないか!君は私の言う通りにしなくては活躍できないのだからな!」

嘲笑うように言うマネージャーに対して飛鳥は何も言い返せなかった。

「おい。あの薬を出せ。」

マネージャーに命じられた部下は白い薬を出した。この薬を飲んだ人間は記憶を失ってしまうのだ。飛鳥は薬を見て凍りついた。だが、逃げても逃げてもしつこく追いかけてくるマネージャーたちには敵わない。そう感じた飛鳥は涙を流して薬を受け取ろうとした。その時だった。琉弥をマークしていた二人の部下が突然倒れたかと思うと琉弥がマネージャーと飛鳥の間に立ちはだかった。

「ちょっといいかな?」

琉弥はそう言うとマネージャーの顔面を殴りつけた。部下が琉弥に近づいて声をかけようとするが、すぐに琉弥に殴られて気を失った。殴られたマネージャーは琉弥をにらみつけた。

「貴様、何をする!」

「あんたこそマネージャーのくせに何を考えているんだよ!応援とかサポートしたりするのがマネージャーだろ!飛鳥ちゃんのことを馬鹿にしやがって!ふざけるなよ!」

殴られたマネージャーはゆっくりと立ち上がった。

「もういい…勝手にしろ…!」

そう言うとマネージャーはその場を立ち去っていった。




琉弥はマネージャーたちを見届けると飛鳥に声をかけた。

「飛鳥ちゃん、怪我はない?大丈夫?」

飛鳥はそれには答えずに琉弥に抱きついた。

「ありがとう…琉弥君!」

飛鳥は琉弥と抱き合った状態で涙を流した。琉弥は優しく言った。

「それじゃああの船に乗ろうか。」

「うん。そうだね。」

琉弥と飛鳥は船に乗った。船からはジェットコースターやメリーゴランドなどといったたくさんのアトラクションが見えた。飛鳥が琉弥に言った。

「次は観覧車に乗りたいんだけどいいかな?」

「いいよ。乗ろうよ!」

琉弥と飛鳥は船を降りると観覧車に向かった。琉弥と飛鳥は水色のゴンドラに乗った。

「琉弥君、私これからどうしようかについてずっと考えてきたんだけど…」

「うん。」

「私、琉弥君のことが大好きだからこれからもずっとそばで琉弥君を支えたいの!」

「僕もアイドルだった頃から君のことが大好きだったんだ。」

琉弥は飛鳥と抱き合い、キスを交わした。




 それから数日が経った。大学の授業を終えた琉弥はまっすぐ自宅マンションに帰還した。

「ただいま!」

「琉弥君、お帰り!今日もお疲れ様!」

琉弥は荷物を置いた。

「今日の夕飯って何にするか決まっている?」

「いや、まだ決まっていないよ。」

それを聞いた琉弥は顔を輝かせた。

「飛鳥ちゃんってシャワルトっていうレストラン知っている?」

「知ってはいるけどあそこ言ったことないなぁ。」

「なら一緒に行こうよ!あそこのハンバーグとかカレーとかピザとかおいしいんだよね!」

それを聞いた飛鳥は笑顔で頷いた。その表情はとても行きたそうな表情だ。

「それじゃあ琉弥君のおごりね。」

飛鳥は笑顔でそう言うと琉弥にキスをした。

「全く…しょうがないなぁ。」

琉弥は照れながら言った。飛鳥も笑顔で琉弥と腕を組む。

「早く連れてってよ。」

「わかった。それじゃあ行こうか。」

そう言うと今度は琉弥が飛鳥にキスをした。飛鳥も琉弥を嬉しそうに見つめる。

琉弥と飛鳥は自宅マンションを出てシャワルトというレストランに向かった。

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