六人兄弟と六つの不思議な球
@Rui570
六人兄弟と六つの不思議な球
ここは地球のどこかにある国・シャイニングランド。この国ではミステラーボールという6つの不思議なボールが存在していた。いつどこで誰の手で作られたのかは分からないそのボールは全部そろえると願いをかなえることができるのだ。そのため、大昔から人々の間で戦争が繰り返された。そんなある日、その国に6人の戦士が現れて争いが繰り返されないようミステラーボールを国のどこかに封印したのだった。こうしてシャイニングランドの平和は守られた。だが、地球に新たなる脅威が迫っていたことをまだ誰も知らない。
シャイニングランドのどこかにある家。その家に赤い服を着た青年が入ってきた。
「ただいま!」
赤い服を着た青年はそう言って家に入ると母親が出迎えた。
「お帰り、ジュン。確か今日体力テストだったとか聞いたけどどうだったの?」
「ああ。どれも楽勝楽勝!満点の自信あるよ!」
ジュンと呼ばれた赤い服の青年は笑いながらそう答えた。そこへ、青い服を着た青年が近づいてきて言った。
「アニキ、そんなこと言って勉強の方はダメじゃん。だから調子に乗らない方がいいぜ。」
「なんだよ?…そうか…レイジお前僕に嫉妬しているんだろ?」
「別に。」
レイジはそう答えた。ジュンが自分の部屋に戻ろうとするレイジに声をかけた。
「そうだ。レイジ、僕がお前の得意なテコンドーの練習付き合ってやるから今からやらないか?」
「いいぜ。俺のキックを耐えきれればだけどな。」
庭に出た二人は早速準備を始めた。
「準備で来たぞ、レイジ!」
ジュンがそう言った直後にレイジは右足を勢いよく前に出した。レイジの右足によるケリにジュンは避けられずにそのまま倒れてしまった。
「イテテテ…」
レイジが倒れている兄を見下ろして言った。
「なんだよ…耐えられねえじゃん。」
「悪い悪い。疲れがたまっているみたいだな。」
「おいおい。だから言ったろ…調子に乗るなって。」
レイジが呆れた表情で言ったのに対してジュンはゆっくりと起き上がりながら言った。
「待ってくれ。もう一回…」
「やめとけ。またぶっ倒れるぞ。」
「お前なぁ…なんでいつもそうなんだよ?」
そこへ黄色い服を着た青年が歩いてきた。
「やあ兄ちゃんたち、またテコンドーやってるの?どうせならバスケでもやろうぜ!」
「いいぜ。僕が受けて立つぜ、リョウ!」
そう言うとジュンはゆっくりと立ち上がった。だが、レイジは冷たく言った。
「けどアニキには無理だと俺は思う。俺のテコンドーでぶっ倒れるほど疲れてるならやめた方がいいだろ。」
それを聞いたリョウはがっかりした。
「そっか。それは残念だね。自分は明日でも大丈夫だから今日はゆっくり休んでくれ。」
リョウがそう言った直後に二人の少年が走ってきた。一人目は緑の服を着たハヤトで二人目は黒い服を着たジンだ。ハヤトが庭にいる三人の兄に声をかけた。
「こんなところで何やってるんだよ?またスポーツか?」
「おいおい、お前だって高校の陸上部に入っているやん!」
ハヤトに対してジンがツッコミを入れた。
「はぁ?お前だってボクシングやってたくせに何言ってるんだよ!」
「なんだ、やるのか?」
ジンはハヤトをにらみつけた。ハヤトもジンをにらみつける。
「上等だよ!」
今にも喧嘩が始まりそうな空気だ。リョウが二人の間に割って入った。
「お前ら何やってるんだ!やめろ!」
それを聞いた瞬間、二人は黙って家に入っていった。ジュンが他の二人に声をかけた。
「それじゃあ僕らも家に入るか。」
「そうだな、行こうぜ。」
レイジはそう言うとリョウもうなずいた。
家の中で料理している母にハヤトが声をかけた。
「母ちゃん、今日の晩飯なんだよ?」
「今日はハンバーグだよ。あんたたち誰でもいいからあいつを呼んできて。」
それを後ろで聞いていたジンが言った。
「あいつって誰のことなんだよ?」
「タクオのことだよ。」
レイジが代わりに答えた。ジュンたちがリビングに集まっている一方で紫色の服を着たタクオは一人で部屋に閉じこもって格闘ゲームをやっていた。あと一歩で負けてしまい、タクオは一人でふて腐れた。
「またかよ…いつもあと一歩というところで…」
そう言った直後にジュンがドアをノックして部屋に入ってきた。
「タクオ、お前またゲームばかりやっているのかよ。」
「ああ。悪い?」
タクオはふて腐れた表情だ。そこへ、レイジもやってきた。
「とにかく晩飯ができたから下に降りてこい。」
「ああ。わかった。」
タクオはゲームの電源を切ってコントローラーを床に置いた。階段を下りながらジュンが声をかけた。
「タクオ、お前少しは運動したらどうだ?」
「そんなの僕の勝手だろ?というかスポーツ苦手だし!兄さんたちと違ってな!」
タクオはそう言うと階段を駆け下りていった。
台所に着いたジュンたちは夕飯を食べ始めた。レイジが言った。
「タクオ、なんか俺たちと違ってとか言うの聞こえてたけどなんかあったのか?」
「別に…。ジュン兄さんが少し運動したらどうだとか言うからさ。僕は兄さんたちと違ってスポーツ苦手だし…。」
タクオはハンバーグを食べながらうつむいた。
「誰かと違って当然なんだから気にしなくていいんだぞ、タクオ。」
三男のリョウが励ました。
「僕も何かやろうかな…」
励まされたタクオは小さな声でそう言うと飲み物が入ったコップを持って口にした。
ここははるかかなたの宇宙。その宇宙の中を一隻の宇宙船が飛んでいた。その宇宙船に灰色の体の宇宙人が手下を連れて乗っていた。手下の一人が言った。
「ハント様、地球という星にミステラーボールがあると言われています。」
「ミステラーボールとはなんなのだ?」
「ミステラーボールというのはですね全部で6個あってそれを全部集めるとどんな願いでも叶えられる魔法の球です。」
手下である戦闘員・ウォートルーパーはハントに説明した。
「なるほど。素晴らしい。なら今すぐ俺たちは地球へ向かうべきだ。そのミステラーボールさえあれば全宇宙を征服する夢も叶うぞ!」
ハントたちの宇宙船は地球に向かった。
翌日。六人は広場を歩いていた。レイジが言った。
「アニキ、この後どうするのか決まっているのか?」
「いやあそれがさ、どこに行こうか決まってないのよ。」
「「「「え~?」」」」
ジュンの一言にみんなは呆れた。
「ジュン兄ちゃん、それくらい決めておけよ。」
リョウがそう言うとハヤトがジュンをにらみつけて言った。
「まさかジュン、せっかくの休みを無駄にするつもりじゃないんだろうな?」
「そんなことないよ。というかなんでそうなるんだよ?」
ジュンはハヤトにそう言うが、ジンもジュンを見つめて言った。
「言われてみればそれもあり得るな。」
「だから違うと言ってるだろ!」
ジュンは二人をにらみつけて言った。
「また始まったよ。なんでこうなるんだか…」
今にも喧嘩が始まりそうな三人を見てレイジはそうつぶやいた。その時、リョウが空を見上げて声を上げた。
「おい、あれはなんだ?」
それを聞いたジュンたちも空を見上げる。空から灰色の何かが飛んでくるのが見える。
「こっちに来るぞ。」
レイジがそうつぶやいた。それを聞いたジュンが大声を上げた。
「みんな…逃げろ!」
その声を聞いてレイジたちはその場から猛スピードで逃げ出す。灰色の何かは落下してきて地面に落ちた。その衝撃でジュンたちは吹っ飛ばされて地面に倒れこんだ。ジュンはすぐに起き上がって突然落下してきたものを見た。
「なんだ?もしかして…」
「宇宙船なのかな?」
ジュンの言葉を遮ってタクオが言った。レイジが聞いた。
「どうしてそう思うんだ?」
「空から突然何か降ってきたけどもしかしてと思ってね。」
タクオはそう答えた。ジンが近くに落ちていた木の枝を拾った。
「まじでなんなんだ?」
そう言いながら木の枝を当ててみるとコンコンと音がした。どうやら金属でできているようだ。今度はタクオが素手で触った。
「これは…地球に存在しない金属…!」
ジュンたちは驚きを隠せなかった。
「嘘だろ…!これって本当に宇宙船なのか…」
リョウがつぶやいた次の瞬間、灰色の宇宙船が突如動き出し、宙に浮き始めた。その直後に水色の光が地上に向けて伸びてきた。
「まさか…宇宙人?」
タクオがそう言うと何人かの宇宙人が出てきた。それを見てジュンが近くにある大きな岩を指さして声を上げる。
「とにかくみんなあの岩の陰に隠れろ!」
「言われなくてもそうするだろ!」
レイジがそう言うと岩の陰に隠れてた。他の兄弟たちもだ。宇宙船から出てきた水色の光が消えると同時に灰色の宇宙人が黒いスーツを纏った大勢の宇宙人が姿を現した。その宇宙人たちを見てジュンたちは驚いた。
「嘘だろ…。本当に宇宙人だ…。」
タクオはそうつぶやいた。黒いスーツを纏った宇宙人の一人が言った。
「ハント様、こちらが地球という星です。」
「そうか。ではこの星にいる地球人とやらを滅ぼす前にまずはミステラーボールがどこにあるのかを聞いてみるとしようじゃないか。」
ハントはそう言うと近くでピクニックを楽しんでいる幼稚園児たちとその先生たちに目を付けた。ハントは手下に告げた。
「ウォートルーパーども、あそこのガキどもを一人残らず俺のもとに連れてこい!」
「「「御意!」」」
ウォートルーパーたちは強力なレーザーを放つブリッツライフルを構えて近くにいた幼稚園児たちに駆け寄った。
「お前たち、死にたくなければ今すぐに来い!」
「先生怖いよ。」
「だ、大丈夫よ。先生がいるから。」
先生は元気づけようと園児たちに声をかけるが、園児たちは次々と泣き出す。その様子を岩の陰からジュンたちは見守っていた。
「このままじゃ…助けないと…!」
ジュンは小さい声で言った。レイジが言った。
「あんな奴と戦うなんてバカかよ…。勝ち目ないぜ。」
「そうだよ。僕らはあいつらと違って超人じゃないんだよ。」
タクオもそう言った。リョウが言った。
「ジュン兄ちゃんには悪いけど自分もこれは逃げるしかないと思う。」
「そうそう。行きたければ行きたい人だけでいいんじゃない?帰ろうぜ、ジン。」
「そうだな。俺も帰るよ。」
ハヤトはジンと共にその場から帰ろうと歩いて行ってしまった。レイジとリョウもハヤトたちについていく。
「おい、みんな。帰らないでくれ。おーい。」
ジュンは声をかけるが、弟たちはみんな去ってしまった。
「あ~もう!しょうがないぁ…。僕が一人でやる!」
ジュンは弟たちが歩いて行った方を見てから幼稚園児の方を見た。幼稚園児とその先生たちはウォートルーパーに武器を突きつけられている。ハントが言った。
「地球人ども、一度しか聞かないぞ。この国にどんな願いでも叶えられるミステラーボールが存在すると聞いてきたのだが、どこにあるのか教えろ!」
「私たち本当に何も知らないんです!だから今すぐに子供たちだけでも家に帰してあげてください!」
女性の先生はそう言うが、ハントは聞く気はない。ハントは一人の男の子を指さした。
「お前に決めた。」
そう言った直後にウォートルーパーがその男の子を捕まえてハントの目の前に連れて行った。
「もう一度チャンスをやる。ミステラーボールはどこだ?教えないとこのガキを俺が殺すぞ!さっさと言え!」
「本当に何も知らないんです!ですからその子を助けてあげてください!お願いします!」
ハントは必死に命乞いをする先生に顔を近づけて言った。
「もういい…お前らは用済みだ。」
その言葉を合図にウォートルーパーたちが武器を園児たちに向けた。その時だった。
「やめろぉぉぉ!」
大声で叫びながら一人の青年が走ってきた。ジュンだ。ジュンは高くジャンプしてウォートルーパーの一人に飛び蹴りをお見舞いした。飛び蹴りを受けたトルーパーは仰向けに倒れて近くのトルーパーにぶつかってしまった。突然の出来事にハントとその手下たちは唖然としていた。ハントが大声で命令した。
「お前ら、この者を生け捕りにしろ。殺してはならん。ミステラーボールについて聞きだせるかもしれんからな!」
ジュンはウォートルーパーたちと戦いながら幼稚園児たちと先生に声をかけた。
「早く逃げて!」
「は、はい!」
先生は園児たちを連れてその場から逃げて行った。ジュンは一人また一人と相手を殴り倒していくが、次から次へと増えてきて切りがない。ジュンが一人を蹴り倒した直後に後ろからハントに殴られて地面に倒れこんだ。ハントはウォートルーパーたちに言った。
「お前らは下がれ。こいつは俺に任せろ!」
命令を受けたウォートルーパーたちは命令通り後ずさりした。ジュンは立ち上がって反撃をしようと殴りかかるが、簡単に攻撃を避けられて逆に攻撃を受けてばかりだった。
「ミステラーボールはどこにあるのか答えろ!それまで殺すのは待ってやる!」
「ミステラーボール?あの6個全て集めるとどんな願いでも叶えられる魔法の球のことか?」
「そうだ。どこにあるか教えろ!」
ジュンはしばらく黙ってから口を開いた。
「それを使ってどうするつもりだ?」
「俺の目的はシャイニングランドを拠点にしてこの星を征服することだ。そのためにミステラーボールの力が必要なのさ。わかったら今すぐどこにあるのか教えてもらおうか!」
「ミステラーボールはもうこの世にない。とっくの昔に封印されたんだ!」
「そうか…。なら死ね!」
ハントは黒く光る剣・ダークサーベルを構えた。その時、一人の青年が飛びかかってハントに体当たりをした。よってジュンはとどめを刺されずに済んだ。
「誰だ!」
ハントは体当たりをしてきた青年をにらみつけた。そこには先程逃げたはずのレイジが立っていた。これには淳も驚いた。
「レイジ、どうしてお前がここにいるんだ?」
「俺は家族を見捨てたくない。だから戻ってきたんだ。あと俺だけじゃなくてみんなもいるぜ。」
周りを見ると先程逃げたはずのリョウたちがウォートルーパーたちと戦っているのが見える。リョウが言った。
「兄ちゃん、逃げちまってごめん。自分も家族を見捨てたくないんだ。」
ハヤトが言った。
「オラはレイジたちに賛成しただけだから勘違いするなよ!」
タクオは近くに落ちていた木の棒で殴りつけるが、相手はびくともしない。
「やっぱり僕は逃げます!」
そう言ってタクオは逃げようとするが、すぐにウォートルーパーに捕まってそのまま殴られてしまった。レイジたちも圧倒されてその場で倒れこんでしまう。ウォートルーパーに武器を着けられた瞬間、ジュンが言った。
「やめろ!やるなら俺をやれ!こいつらだけは生かしておいてくれ!」
ハントがジュンの喉を片手で締め上げて言った。
「お前の言うこと聞くわけないだろ。安心しろ…お前らまとめて天国に送ってやるよ…!」
その時だった。どこからか6つの光の球が飛んできた。これにはジュンたちだけでなく、ハントたちエイリアンも驚いた。
「ま…まさか…ミステラーボール…?」
次の瞬間、凄まじい衝撃が走ってハントとウォートルーパーたちは吹っ飛ばされた。ジュンたちも強烈な光で目を伏せた。しばらくして光が消えた。気がつくとジュンたちの姿は通常と違っていた。ジュンはいつの間にか赤い鎧を纏っていた。
「うわ!なにこれ?」
周りを見るとレイジは青い鎧、リョウは黄色い鎧、ハヤトは緑の鎧、ジンは黒い鎧、タクオは紫色の鎧を纏っていた。これにはレイジたちも驚いていた。
「アニキ…なんなんだよ…これ…」
「僕にもよくわからないよ!」
レイジに対してジュンがそう言った。タクオがしばらく考えてから口を開いた。
「今気づいたんだけど僕たち兄弟は6人だよな。」
「ああ。こんな時に何を言ってるんだよ…」
ジンはタクオに聞くがタクオの話は続く。
「ミステラーボールも全部で6個。これは偶然とは思えない…。ミステラーボールが飛んできて僕たち兄弟に戦う力を与えてくれたんだ。」
タクオの話にリョウは納得した。
「そうか…。そういうことか!けどどうして…」
「この星を守りたいという僕らの気持ちが奇跡を起こして封印されたミステラーボールが復活したんだ、たぶん!」
ジュンが大声で言った。ハントはウォートルーパーたちと共にジュンたちをにらみつけた。
「貴様ら、生きて帰さんぞ!」
ハントの言葉を合図にウォートルーパーたちが突撃していった。レイジが言った。
「アニキ、黒い奴らは俺に任せて親玉の方を頼む!」
「わかった!」
ジュンはハントに向かって突進していった。レイジが弟たちに声をかけた。
「お前ら、俺たちでこいつらを倒すぞ!」
「「「「おう!」」」」
レイジは近づいてきたウォートルーパーを右足で蹴り倒した。しかし、敵はどんどん来る。ウォートルーパーがレイジの右腕を掴んだ。レイジは左腕で殴り倒した。その瞬間、左手から水のように青く光るエネルギーが放たれ、近くにいた10人ほどのウォートルーパーたちが吹っ飛ばされた。
「そうか。俺は青いから水のようなビームを打てるということか。得意なテコンドーだけじゃなくてこれも使える!」
レイジは回し蹴りで5人ほど敵を吹き飛ばしてから再び腕から水のようなビームを放った。よって大勢のウォートルーパーが吹っ飛ばされた。
「俺の勝ちだぜ!」
レイジはガッツポーズを取ったが、戦いはまだ終わっていないことに気づく。
「そうだ。あのハントとかいうやつがまだ残っていたっけな。」
レイジが得意のテコンドーと水属性の力で戦っている一方、大勢のウォートルーパーにリョウは囲まれていた。
「クッソォ…自分だって…!」
そう呟くとジャンプした。すると、凄く高く体が上昇した。そして急降下して飛び蹴りを繰り出してウォートルーパーの一人を吹き飛ばした。
「自分はジャンプ力がすごいのか…。」
そうつぶやいた瞬間、ウォートルーパーたちがライフルからレーザーを発射してきた。リョウはそれを転がって避けた。
「ほかに何かないのか?必殺技とか…」
そう言って焦る中、手の指先から雷のような光線が出てきた。よってウォートルーパーは倒れた。他のウォートルーパーたちもライフルで攻撃してくる。リョウは雷をいくつか自身の周りに落として身を守った。
「雷を操れるのか…そうだ!」
リョウは何か思いついたようだ。やがて雷が消えた。だが、そこにはリョウの姿がない。いったいどこに行ったのだろう…。ウォートルーパーは攻撃をやめてきょろきょろと周辺を見回したが、リョウの姿は見当たらない。次の瞬間、無数の雷が落ちてきてウォートルーパーたちは吹っ飛ばされた。その直後にリョウが地面に着地した。
「やった!作戦成功だぜ!」
リョウはバリヤーの役目である雷を消すと同時に高くジャンプして空中で雷を落としたのだ。この作戦を達成してリョウは一人で浮かれていた。その近くをたまたまレイジが通りかかった。
「おい、まだ終わってねえぞ!」
「そうだった。ごめんごめん!」
リョウはそう言うとその場から駆け出していった。
その頃、ハヤトは一人で大勢のウォートルーパーから逃げていた。ウォートルーパーたちは武器からレーザーを発射するが、ハヤトは敵に背を向けて走りながらレーザーを素早く避けていく。まるで後ろにも目がついているようだ。
「貴様、逃げてばかりで我々に勝てると思うなよ!」
「フフフ…今度はこっちの番だぜ!」
そう言うとハヤトはUターンしてウォートルーパーたちに突進していった。そしてすれ違い様に強烈なタックルを食らわせて一人また一人と倒していく。
「オラはスピードがすごいんだな。まるで風みたいだな!」
そう言った直後にまたウォートルーパーたちがレーザーを発射しながら突撃してきた。ハヤトもレーザーを避けながら猛スピードで突進していく。すれ違った瞬間に今度は回し蹴りを繰り出した。回し蹴りを受けてウォートルーパーたちはそのまま倒れこんだ。その時だった。ものすごい竜巻が発生して大勢のウォートルーパーが吹っ飛ばされていった。どうやらハヤトは竜巻や突風を発生させる能力も使えるらしい。だが、これにはハヤトも驚いていた。
「嘘だろ…オラこんなことできるんだ…!…待てよ…これ使える!」
そう言うとハヤトは地面に向けてパンチを繰り出すように突風を放ち、高くジャンプした。そして、そのまま回し蹴りを放つように体を回転させた。すると、巨大な竜巻が発生して大勢のウォートルーパーが吹き飛ばされた。そして地面に叩きつけられて動かなくなった。そんなウォートルーパーたちを見てハヤトはにやりと笑った。
「フフフ…オラの勝ちだぜ!」
黒い鎧を纏ったジンはボクシングのような戦闘スタイルで大勢の敵を殴り倒していたが、敵の数が多すぎるため体力に限界が来ていた。
「こいつら…多すぎるぜ…」
もうクタクタだ。ジンは疲れながらもウォートルーパーに殴りかかるが、とうとう避けられてしまった。その時、避けられたジンのパンチが地面に直撃して地割れが起きた。よってできた裂け目に敵は落ちていった。
「もしかして俺は腕力がすごくなったのか…」
そうつぶやいたジンは近くにあった大きな岩を持ち上げようとした。すると、大きな岩は簡単に地面から離れた。ジンに持ち上げられたのだ。
「そうだ。これ使える!」
そう言うとジンは両手で持った岩で勢いよく敵にぶつけた。当然、敵も吹っ飛ぶ。何人か岩で殴り飛ばしてから「これでどうだ!」という言葉を合図に岩を投げつけた。ウォートルーパーたちはライフルで岩を砕こうとしたが、岩が大きすぎて破壊する前に岩の下敷きになってしまった。
「続いてはこれで行くぜ!」
そう言うとジンは枯れた大樹を持ち上げた。ウォートルーパーたちも武器を構えてレーザーを発射する。ジンは持っていた大樹で防御しようとしたが、レーザーが直撃したと同時に先端吹っ飛んだ。
「やっぱり防御は岩の方が向いているかもな。」
そう呟くと大樹をぶん投げてから両手を組んで勢いよく地面に叩きつけた。それによってものすごい衝撃波が発生し、ジンを取り囲んでいたウォートルーパーたちが弾き飛ばされていった。
「決まったなぁ…」
ジンはそう呟くとにやりと笑みを浮かべた。
タクオは20人程のウォートルーパーたちに囲まれていた。ウォートルーパーが武器からレーザーを発射した。タクオはレーザーを避けながら一人に近づいていき、パンチを繰り出した。ウォートルーパーはそれをライフルで防御した。
「や、ヤバい。防御された!」
そう言った直後だった。パンチを受けていないはずのウォートルーパーはなぜか苦しみだし、そのまま倒れて動かなくなってしまった。これにはタクオも何が起きているのかわからない。
「え?どういうこと?」
そう言った直後にウォートルーパーたちがレーザーを発射しながら逃げ出した。タクオは先程倒した敵のライフルを拾うと追跡を始めた。ウォートルーパーの一人が逃げながら言った。
「これってどうなってるんだよ?」
「もしかして自分や自分が持っている物をあいつに触られたら毒が回って死ぬということなんじゃないの?」
そう言った直後にタクオが追いついて強烈なパンチを繰り出した。それを受けたトルーパーが地面に倒れこむ。
「今お前が言っていることが本当なら武器なんていらないな。」
そう言うとタクオは持っていたライフルをウォートルーパーに向けて投げつけた。よそのライフルは近くにいたトルーパーに当たり、そのトルーパーはそのまま倒れこんだ。その際、近くにいた何大家のトルーパーたちにぶつかり、ぶつかったトルーパーにも毒が回ってそのまま地面に倒れこんだ。
「自分で言うのもなんだけど、僕ってすごい!」
タクオはそう言うと今度はウォートルーパーの一人に強烈なキックを繰り出した。ウォートルーパーはそれを避けずに両手で受け止めて笑った。
「さすがに足からは毒を出すことは不可能のようだな。」
「たしかに足だと無理みたい。」
タクオがそう言った直後にトルーパーは苦しみだした。どうやら毒の効果が出たようだ。
「よっしゃあ!ついでにこれも喰らえ!」
タクオはそのままジャンプして左足で強烈なキックを繰り出した。これによってトルーパーは毒が回った状態で他のトルーパーのもとへ飛ばされていき、ぶつかってそのまま動かなくなった。他のトルーパーたちも何もできずに動かなくなってしまった。
「やったねぇ!」
その頃、ジュンはハントとにらみ合っていた。ハントが言った。
「俺の邪魔をするなら死んでもらう!」
「僕だってここで負けてたまるか!」
戦いが始まった。ジュンは炎を纏った右腕で強烈なパンチを放った。そのパンチを受けたハントだけでなく、ジュンも驚いていた。
「僕は…炎を操れるのか…!」
「バカな!貴様いつからそんな力を…」
ハントはダークサーベルで斬りかかっていく。ジュンは右手で剣を受け止める。左手の手刀で反撃するが、ハントは飛び下がって避けて剣から紫色のレーザーを発射してジュンを倒す。ジュンはゆっくりと立ち上がって反撃に出る。ジュンは右足で回し蹴りを繰り出した。ハントは右足をつかんで言った。
「そうか。わかったぞ…これはミステラーボールの一つの力のようだな。それさえ失えばお前は確実に死ぬことになる。」
「僕は生き残ってみせる。負けるのはお前だ!」
そう言うとジュンは右足を掴まれた状態でありながらも左足で地面を蹴ってジャンプし、左足でキックを繰り出した。見事ハントの後頭部に直撃してハントはそのままジュンの方に倒れていく。その際にジュンは強烈なパンチを繰り出した。それと同時に炎のエネルギーが放出されてハントを襲った。
「ぐわああああ!」
ハントはそれを受けて悲鳴を上げた。ジュンはゆっくりと立ち上がった。次の瞬間だった。
「フフフ、引っかかったな!」
ハントは冷酷な笑みを浮かべるとダークサーベルを構えて強烈な斬撃を与えた。
「うわああああああああ!」
ジュンは悲鳴を上げて地面に倒れこんだ。苦しそうに腹を抑えながら横たわっている。そんなジュンに対してハントは剣で容赦なく叩きつけた。それによってジュンの悲鳴が響き渡る。
「ぐわああああああああああああああ!」
苦しそうに声を上げるジュンを見てハントは残酷な笑みを浮かべた。
「俺の邪魔をしようとする者はこうなることくらい簡単にわかるだろ。こんなことも分からないとはなんて哀れな奴だ。フハハハハハ!」
ジュンは反撃しようとするが、体中に激痛が走って体が思うように動かない。ハントはケンをジュンの喉元に突きつけた。
「とどめだ。地球やお前の弟たちは俺がどうにかしてやるから心配するな!」
そう言うとダークサーベルを勢いよく振り上げた。その一瞬のすきにジュンは力を振り絞って右腕をパンチのように突き出した。その時、右腕から炎のようなエネルギーが放出されてハントは熱に耐えきれずに吹き飛ばされた。その際に持っていた剣も手から離れてしまった。その剣をジュンが右手でつかんだ。その瞬間、黒く光るダークサーベルが赤く燃える炎のような剣に変わった。ジュンは立ち上がって剣を構えた。
「この星ではお前のすきにはさせないぜ!」
そう言うとジュンは炎を纏った剣を両手で持ち、ハントに突進していった。そして、すれ違った瞬間に強烈な斬撃を与えた。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
悲鳴と共にハントは大爆発を起こした。
ミステラーボールを利用して地球征服を企んだハントがついに倒された。
ハントを倒したジュンはその場で倒れこんだ。そこへ、レイジたちが駆け寄ってきた。レイジが声をかけた。
「アニキ、生きているか?」
「ああ…。けど疲れたぜ…」
ジュンは疲れた表情だ。その時、ジュンたちが纏っていた鎧がヒカリを放ってボールのような形になってジュンたちから離れて宙に浮いた。ジュンたちが纏っていた鎧の正体はミステラーボールだったのだ。赤、青、黄、緑、黒、紫の6つのミステラーボールを見つめてハヤトが言った。
「ジュン、ミステラーボールがすべてそろっているぜ。願いが叶えられるな!」
「ああ。けど、これは消滅させた方がいい。」
「「「「「ええっ?」」」」」
ジュンの言葉に全員が驚いた。ジンが言った。
「なんでだよ?願いを叶えられるチャンスなのに…」
「たしかにな。けど、みんなは昔起きたミステラーボールを巡る戦争のことを覚えているか?」
「自分は覚えているぜ。それと何か関係があるの?」
リョウがそう言うとジュンは答えた。
「どんな願いでも叶えられるからみんなこのミステラーボールを狙ってくる。そこで二度と繰り返されないように封印したけどまさかの封印が解けてしまった。いや、僕らが封印を解いてしまったんだ。」
「つまり、自分の力で願いを叶えられるほど強くなれるようにというわけでミステラーボールを消滅させたいということなんだね。」
タクオがそう言うとジュンはうなずいた。
「そうだ。それにこれが存在しているといつかまた必ず何かを巡る戦争が起きてしまう。」
その言葉に全員が納得した。ジュンは宙に浮いた6つのミステラーボールに向かって大声で言った。
「ミステラーボールよ、この世から消えろ!」
その瞬間、空に閃光が走った。これにより、ジュンたちは顔を伏せた。しばらくしてジュンたちが空を見上げるとそこにはミステラーボールは無くなっていた。ジュンたちの願い通りミステラーボールは消滅したのだ。
それから数日後。ジュンは弟たちに呼びかけた。
「みんな、たまにはみんなでバッティングセンター行ってみようぜ!」
「バッティングセンターか…。俺ら初めて行くな!」
レイジがそう言うとハヤトも口を開いた。
「最初の目標はホームランじゃなくて球を打つことだな!」
ジンが笑いながら言った。
「俺らの中で誰が一番うまくいくか競争しようぜ!」
「おいおい…自分たちは初心者だから慣れてきてからにしようぜ。」
ジンに対してリョウがそう言った。ジュンが言った。
「そういえばタクオはどこにいるんだ?あいつまたゲーム…」
「兄さん!」
「うわっ!」
ジュンの言葉を遮って後ろから現れたタクオにジュンは驚いた。
「タクオ、どこに行っていたんだよ?」
「さっき暇つぶしに一人でバッティングセンター行ってて帰っていたところだよ。いきなりホームラン打っちゃったけど…」
「まじかよ。嘘だろ…」
ジュンがそうつぶやいた瞬間、タクオが言った。
「兄さん、ボウリングはどう?」
「ハハハ、そ、そうだな。」
世界はすっかり平和になった。この平和は侵略者などといった脅威が現れることがない限りこれからも永遠に続くだろう。
六人兄弟と六つの不思議な球 @Rui570
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