第34話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】10

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次の実況実施を宣告され、スレが盛り上がる。

ユートは自室のベッドに寝転がったまま満足そうにその書き込みを読んでいく。


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110:名無しの冒険者

実況するってことは、え、この仕事一人でやるん?


111:魔眼保持者

まぁな


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スレ民に問われたので、もう一度渡された用紙を確認する。

そこには、とある盗賊退治をするようにと記載されている。

本当なら数人で臨むらしいが、


『英雄なんだから独りでやれるだろ』


ということらしい。

英雄の前に暗殺ならお手の物、な暗部出身なので朝飯前だ。

独りでやれるのはその通りだが、アイリの説明によるとどうにも風紀委員のユートに対する覚えがめでたくないらしい。

つまり、嫌がらせで困らせてやれという意図があるようだ。

ユートには転移魔法があるのだし、危なくなったらしっぽを巻いて逃げ帰ってくる、とも風紀委員は考えているらしかった。

風紀委員はユートの実力に懐疑的なのである。

以前、能力を試された時も治癒で怪我を治した、という認識でしかない。


隠してた強さもバレた。

なんなら、ユートがファントムであった事がイーリスにバレるのも時間の問題だろう。

特に口止めも頼んでないし。


それを知った時のイーリスの反応は気になる。

騙していたのか、と引っ叩きに来そうだ。


「まぁ、でも、【魔眼保持者バケモノ】ってバレるよりはいいか」


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112:名無しの冒険者

まぁ、魔眼保持者なら出来るだろうけど


113:名無しの冒険者

これさ、失敗ありきで回された仕事っぽいな


114:名無しの冒険者

しかし冒険者ギルドじゃなく、学園の方に仕事の依頼が行くとはね

こういう依頼は、普通冒険者ギルドが先だろうに


115:魔眼保持者

その辺は忖度とか色々あるんだと思う

たぶん、これ学園が受けたのは俺が居たからだろうし


116:名無しの冒険者

>>115

どゆこと?


117:考察厨兼迷探偵

盗賊団の名称、出てるだろ


118:名無しの冒険者

【宵闇の月鬼団】か


119:名無しの冒険者

あー、そういえば先日とうとう賞金首になったらしいな


120:名無しの冒険者

全員高ランク冒険者だったからなぁ

全員のクビを取るとなると骨だな

賞金が高額になるのも頷ける


121:考察厨兼迷探偵

>>120

それだけじゃない

とある町にお忍びで視察に来ていた高官を殺害したんだ

そうと知って殺したのか

それともただの金持ちだと考えて殺したのかは

捕まえて聞くまではわからないがな


122:名無しの冒険者

捕まえるって、それ、普通の学園の生徒じゃ手に余るだろ


123:名無しの冒険者

あ、なるほど

学園側は様子見で、死んでも痛くも痒くもない魔眼保持者をあてがうつもりで生徒会に話を持っていった

生徒会は生徒会で魔眼保持者の実力がわかっているから、充てがうことに決めたってところか


124:考察厨兼迷探偵

たぶんな

少なくとも魔眼保持者を向かわせて様子見させるつもりだったんだろ

成功すればよし

失敗しても、ニセモノ英雄が一人殉職したってことで終わる

学園の生徒の間じゃ、魔眼保持者が爵位もらったのも、英雄になったのも嘘っぱちと言われてるくらいだからなぁ


125:名無しの冒険者

うわぁ

えげつねぇ


126:考察厨兼迷探偵

ましてや、デカい貴族の家は多かれ少なかれ密偵や護衛がいるからな

そいつらが生徒を守るんだよ


127:魔眼保持者

え、俺、貴族になったけどいないんだけど

雇った方がいいの??


128:考察厨兼迷探偵

魔眼保持者には必要ないだろ


129:名無しの冒険者

(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-


130:名無しの冒険者

とりま、魔眼保持者は

今回は普通に手柄立てるってことでおk?


131:魔眼保持者

>>130

趣味のついでに、普通に与えられた仕事をやるだけだよ


132:名無しの冒険者

あ、やっぱり趣味のほうが優先度高いのね


133:名無しの冒険者

学園での風当たり

もっと強くなるんでないか?


134:魔眼保持者

>>133

それこそ今更だろwww


135:魔眼保持者

とりあえず、特定班に盗賊団のアジトを特定してもらって襲撃すればいいかな


136:特定班

ほいよー

お呼びかな??



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そこから特定班が、いつも通りのノリで情報を提供してくれた。

どうやら、盗賊団は居場所を転々と変えているらしい。

特定班の情報によると、今は王都郊外の廃屋に潜伏中との事だった。

さらに最悪な情報が齎される。

どうやら、その廃屋の近くにはまばらではあるが民家も存在しているとのことで、最近女性への性的暴行事件があったらしい。


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155:特定班

関係があるかはわからないが

つい先程警察に、近隣に住む女子高生が帰宅していないと親から警察に捜索願が出されたみたいだ


156:名無しの冒険者

え、とりあえず早く行った方よくね?


157:魔眼保持者

だな!

あ、そうだ

底辺冒険者!!

来れたらきてほしい!!


158:名無しの冒険者

おや、珍しい


159:名無しの冒険者

魔眼保持者から来て欲しいって珍しいな


160:底辺冒険者

モンスター討伐、ちょうど終わったんでいいでござるよ

場所もちょうど近くでござるし


161:考察厨兼迷探偵

万が一、話に出てた女子生徒が事件に巻き込まれてて、すでに暴行されてた時のことも考えてだろ


162:名無しの冒険者

あ、なるほど


163:魔眼保持者

んじゃ、現地で落ち合おう


164:底辺冒険者

了解でござる

(*`・ω・)ゞ


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十分もしないうちに、ユートとヴィンセントは廃屋近くで落ち合った。

ユートは転移魔法で、ヴィンセントは走ってきた。

英雄は、車並みの時速で走れるらしい。

三大英雄が全員、人間辞めてると言われる理由である。

一部のスレ民には、交通費かからなくて羨ましいと言われていたりする。


ユートはまず、魔眼を発動させた。

廃屋全体を視る。


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217:魔眼保持者

着いたー

廃屋、鑑定中


218:魔眼保持者

あ、あー、まずいな

とりま女の子が襲われてる

たすけてくるわ


219:名無しの冒険者

おー、いてらー


220:名無しの冒険者

てらー


221:名無しの冒険者

ノシ


222:名無しの冒険者

後で報告忘れんなよー


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ユートの目に、小柄な少女に伸し掛る男と、それをニヤついた顔で見ている、二人の男の姿が映った。

手早く掲示板に書き込みをして、ユートは駆け出した。

ヴィンセントもそれに続く。

少女はじたばたともがいている

ヴィンセントが剣を振るって、廃屋の壁を壊す。

二人同時に突入する。

三人の男たちが驚く。

構わず、ヴィンセントが剣を振るった。

様子を眺めていた男二人の首が落ちる。

血しぶきが舞う。

その間に、ユートが魔法陣を展開する。

発動させたのは、水の魔法だ。

水流で、少女にのしかかっていた男を吹っ飛ばす。

男は壁に激突して、気絶した。


「おい!大丈夫か?!」


押し倒されていた少女は、涙でグチャグチャだった。

着ていた制服も胸元が引きちぎられ、肌が露わになっている。

あちこちに殴られた跡もある。


「あ、あああ」


「大丈夫、落ち着け。

助けに来たんだ」


少女がユートに怯えた視線を向ける。


「ヴィンセント、頼む!」


ユートはすぐに、ヴィンセントを呼んだ。

落ち着かせるには異性より同性のほうが、まだマシと考えたからだ。

そうしてヴィンセントの陰から、ユートは少女を見た。

どうやら未遂だったようだ。

しかし、こんな体験は心の傷になる。

とりあえず、殴られたところを魔法で治してやる。

引きちぎられた制服も魔法で直した。


「え、あれ?」


少女が戸惑った声をあげる。

魔法に戸惑ったのかなと思えば、違った。


「もしかして、ユートさん??」


「へ?」


思わず、ユートは少女を見た。

いつかの心霊スポットに凸激した時に知り合った少女、ルルだった。

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