第33話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】9

■■■


ついでだから、とユートはつい数時間前のやり取りを書き込むことにした。


***


「それで、なんでそこまでして実力を隠しているんだ??」


生徒会室にて、ユートはそう問い詰められていた。

二度目の茶会である。


「わかりませんか?」


出された茶には手をつけず、ユートはアイリを見返す。


「わからないな。

なにしろ、私は世間知らずの侯爵令嬢だからな」


いけしゃあしゃあと言ってのけるアイリに、ユートはジト目になる。

ちなみに彼女もだが貴族階級の人間は、世間知らずのお貴族様、という陰口を叩かれている。

ネットでちょっと検索すればゴロゴロ出てくる文言だ。


「本人の口から説明してもらわなければわからない。

それとも、君は【察してちゃん】か?」


「……はぁ」


めんどくせぇなー、と態度に出しつつユートは口を開いた。



「俺が生徒会役員に任命されて、なにが起きたかはご存知ですよね?

狡だなんだと言われ、たいした能力もないことを証明しようと暴力を振るわれました。

これは、生徒会役員に任命されたからこそ起きました。

じゃあ、その前に実は戦闘能力があります。

俺はこれだけ強いんです、ってもっと早く示していたらどうなっていたでしょうか?

俺は結果は同じだったと考えています。


ニンゲンは、自分とは違った考え方、違った能力を持った存在を恐れます。

でも、それが身分が上である貴族であったなら畏怖になる。

けれど、身分が同等か下の者なら迫害されます。

それが嫌だったんですよ」


「ふむ。

だが、君は今や騎士の位を賜った準貴族だ。

爵位を継いでいない学園の生徒達よりは、そう言った意味では立場は上、と考えられなくもないが?」


「その発想ができるなら殴ってこないでしょう」


ちなみに、ユートの騎士爵は世襲できない一代貴族にあたる。

学園には各家の爵位継承者と、そのスペアである次男三男がいる。

生徒の大半は、爵位を持っていないのだ。

血は高貴で、家柄もいい。

しかし、爵位はもっていないのである。

アイリだってそうだ。


「ましてや、入学当初から俺は嫌われてましたから」


授業でダラける前から、ユートはこの学園の生徒に嫌われていた。

能力の有無の前に、である。

彼の表向きの事情を欠片も考慮せずに、そもそも庶民がこの学園の土を踏むとは何事か、けしからんという訳である。


(まぁ、それは分かってたことなんだけどさ)


入学前に、この辺のことはラトラから説明があった。

説明を受けたユートは、そんな学校じゃなく、ほかの民間の高校じゃダメなのか、という疑問が出てきた。

ラトラにその疑問をぶつけると、返ってきた答えが、


『魔法が使えることで異端扱いされるのが好みか?』


だった。

魔力が発現するのは、基本貴族だ。

庶民にもいるが、それはどこかで貴族の血がまじったからであることが多いとされている。


ユートは魔法が好きだ。

魔法が使えること、それ自体を誇ってさえいる。

好きなことで異端扱いされるのは嫌である。

それなら、身分で異端扱いされる方がまだマシだった。


「こうなることが予想出来たから、隠してきたんです」


「……くだらない連中だ。見返そうとは思わないのか?」


「そんなくだらない連中の手網はちゃんと握ってて欲しいものですね。

現実を見てくださいよ、会長。

俺が怪我を治した人達は、出来ることをしたんだから感謝する訳ねーだろって陰で言ってんですよ??

まぁ、感謝されるのを目的に怪我を治した訳じゃないですけど。

むしろ、仕事をしただけなんだから調子のんな、とも言われましたねぇ」


これだけ感覚がズレているのだ。

普通の人間だったなら心がとうに折れているだろう。


「それに、爵位や称号もらってから更にイジメが激化したんです」


ほぼ毎日、なにかしらで絡まれるようになった。

だるくて仕方ない。


「もういいでしょう?

毛色の違うペット鑑賞はやめにしましょうよ。

俺を役員から外してください」


直訳すれば、生徒会やめさせろ、である。


「これでも昼寝したり散歩したり忙しいんです」


昼寝はそのままの意味だが、散歩というのはスネーク実況によるお出かけのことだ。

そんなユートの訴えに、アイリはニコリと笑って見せた。

意見が通るかと思いきや、そんなことは無く。


「優秀な人材はちゃんと使わなければな」


なんて笑顔で言われてしまった。

さすがにユートの顔が、ナメクジやカエルを知らず踏み潰してしまったような顔になった。


***


こんなやり取りがつい数時間前にあったわけだ。

それを書き込んだ。

スレ民の反応はというと。


■■■


85:名無しの冒険者

目をつけられたな


86:底辺冒険者

大変でござるなぁ

魔眼保持者氏


87:名無しの冒険者

つーか、今更なんだけど

魔眼保持者って、俺たちにカミングアウトしたことはいいんか?


88:魔眼保持者

え、だってここの連中は【王立魔法学園の生徒】じゃないじゃん

俺が飼い主から言われたのは、【ほかの生徒に魔眼保持者ってバレるな】っことだから

だから大丈夫


89:名無しの冒険者

うわぁ、屁理屈


90:名無しの冒険者

大丈夫、とは??


91:魔眼保持者

まぁ、報告はここまでにして

これ見てくれwww

つ【生徒会からの仕事の書類】


92:名無しの冒険者

これ、社外秘ならぬ校外秘になるやつなんじゃ


93:名無しの冒険者

なにこの書類


94:魔眼保持者

仕事しろってさ

会長から渡された

せっかく力を持ってるんだから、使え、だと

ダリィ、めんどくせぇ


95:名無しの冒険者

>>94

でも、それをわざわざスレを立ててまで晒してる、と

本音は?


96:魔眼保持者

実況すっぞ野郎どもぉぉぉ!!??

イェ━━━゜(∀)゜━━━イ!!


97:名無しの冒険者

そんなこったろうと思ったよ


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