第21話【ねえwww】同級生の女子に暗殺されそう( ̄∀ ̄)【聞いて聞いてwww】後編4

■■■

715:魔眼保持者

やっべぇwww

緊急速報!!


716:名無しの冒険者

今度はどうした?


717:魔眼保持者

例の女子生徒闇堕ちした!

んで、あの指輪で魔族になった!!

突然学園内に魔族が出たってことで

もう学園内大パニックだ!!


718:名無しの冒険者

はい?


719:名無しの冒険者

ごめん、もうちょいkwsk


720:名無しの冒険者

お祭り騒ぎってことでおk?


721:特定班

あー、魔眼保持者を暗殺しようとしてた女子生徒と、ドラゴンの墜落から逃れた魔眼保持者が鉢合わせしたんだ

たぶん、女子生徒は指輪で変換した魔力を使ってドラゴンを召喚、墜落させたことで確実に魔眼保持者を仕留めたと思ったんだろうな

でも、そうはならなかった

ピンピンしてる魔眼保持者を見て、さらに負の感情が爆発してしまった

その感情を指輪が吸収、いや、喰らうが正しいな

とにかく、指輪が女子生徒の負の感情を喰らって魔力に変換した

その魔力が女子生徒にまとわりついて、魔族へ姿を変える、という形で影響した

と、こんな感じだな、ドローンで見てただけだけど

魔力をドローン越しで視認できるほどだったから、やばいくらいの量が変換されたってことになる


722:名無しの冒険者

うっわぁ


723:名無しの冒険者

まじか


724:名無しの冒険者

ちなみに、その女子生徒、元に戻すってことは可能??


725:考察厨兼迷探偵

無理だろうな

前回のドラゴンの子の件から数日しか経過していないし

魔眼保持者から、その時の術式が解析できた、とも聞いていない

解析出来てたら、連絡来てただろうし


726:名無しの冒険者

どうなんだ?

魔眼保持者??

解析出来てないの??


727:魔眼保持者

わるっ!!

いま、けけこめね!!

あ、ごじった!!


728:名無しの冒険者

書き込めないっぽいな


729:特定班

今、魔眼保持者は普通に素顔晒してる状態だからな

つまり、ただの落ちこぼれ生徒状態だ

ド派手な魔法を使えないからそのまま逃げてる

魔眼保持者ってバレるからな


730:名無しの冒険者

あちゃー


731:特定班

仕方ない、ちょっと助けてやるか


732:名無しの冒険者

特定班

何するつもりだろ?


733:名無しの冒険者

さぁ??



■■■


突如、空から声が降ってきた。

そう、降ってきた、という方が正しい。

それもどこかで聞いたことのある声が降ってきた。


《あーあー、そこののっぺり顔で胴長短足の黒髪の子。それと王立魔法学園の生徒たちに告ぐ、三つ数えたら耳を閉じて体を伏せろ。いいな??》


「え、なに?なに??」


自分の身体的特徴を言われ、戸惑う。

見上げると、ドローンが魔族女子へと飛んでいくのが見えた。

ユートが振り返った時。

そのドローンは、なにやらガシャガシャガッチャンと変形したかと思うと、軍のヘリコプターが搭載しているような銃口を露出させる。

その銃口の先に、魔法陣が現れた。

魔法陣が明滅したかと思うと、魔族女子へ向かって発砲した。


ダーンっ!!!!

ダーンっ!!!!


発射されたのは、二発の銃弾だ。

武器に関して、ユートはそこまで明るくないので何口径だとかはわからない。

ただ、


「うっそーん」


ユートの目が点になる。

ただ、そう呟くしか出来ない。

その呟きが届いていたのか、ドローンから、


《ほんとーん♪》


という、楽しげな声が降ってきた。

小さいが、笑い声も含まれている。

発射された銃弾二発は、まっすぐ魔族女子へ飛んでいき、当たった。

瞬間。


ちゅど、ちゅどーんっ!!


爆裂魔法もかくやという大爆発を起こした。

近くの校舎の窓ガラスが全て割れる。

幸い、校舎は無事だった。

爆風で、ユートも吹っ飛ばされる。

辺りが煙に包まれた。


「げほげほっ」


転がり、咳き込むユートにまた声が降ってくる。


《あー、そこののっぺり顔で胴長短足の男子、聞こえるか?聞こえたら右手を上げてくれ》


ユートは言われた通りにする。


《よしよし。とりまお膳立てはしてやった。後は好きにしろ。あ、後始末もヨロピク》


見れば、周囲はまだ煙は晴れていない。

ユートは手早く、コートを纏おうとする。

しかし、


「ううっ」


「たす、たすけて」


「いたい、いたいよぉ、だれかぁ」


周囲でそんな声が上がる。

先程の爆発に巻き込まれた生徒たちだ。

魔眼を発動させる。

魔眼特有の禍々しい赤い光が煙の中に浮かび上がる。

その瞳が、巻き添えを食い、傷つき倒れている生徒たちを映し出す。

中には運悪く死亡した者もいた。


「チッ」


ユートは、舌打ちすると煙の中指を中空に走らせる。

そして、一体に【回復】と【治癒】、そして【蘇生】の魔法陣を同時に展開させた。

幸い、手足が損傷した者は見受けられなかったので【再生】の魔法は使わなくてよさそうだ。

この学園に入学するにあたり、表向きユートが得意とし認められたと書類にも書かれている魔法である。

これなら、なにか問われても言い訳できる。

生徒たちの回復、治癒、そして蘇生が始まる。

あとは魔法陣が勝手にしてくれるはずだ。

改めて、コートを纏おうとするが。

それを魔族女子は許してくれなかった。

魔法の猛攻撃が飛んできたのである。

魔法で回復しつつある生徒達へ、さらに防御の魔法を展開させる。

これで凌げるはずだ。

そうこうしていると、


「ククク、あーははははは?!?!

みぃつけた♡」


魔族女子が高笑いを上げ、ユート目掛けて攻撃魔法をあびせるように叩きつけてきた。


「あー!!もうクソっ!!」


ユートはコートを投げ捨て、魔法陣を展開する。

まだ煙は晴れていない。

まだ、大丈夫なはずだ。

ユートは、煙の向こうにいる女子生徒を魔眼を使って視認する。

そして、魔法陣を描き出した。


「闇色の金字塔、敵を穿て!!」


確実に仕留めるため、ユートは無詠唱ではなく力ある言葉とともに魔法を発動させた。

暗黒魔法である。

魔族女子の体を、漆黒の円錐が貫く。


「っ?!?!」


円錐に貫かれた女子生徒は、驚愕の表情を浮かべ、血を吐いて直ぐに動かなくなった。

その女子生徒を煙越しに鑑定、解析する。

一瞬でそれは終わった。


「ダメか」


ドラゴンの時と同じだ。

彼女を元に戻すことはできそうにない。

魔族の姿のままなので、蘇生もしてやれない。

ユートは呟くと、その場から寮へ転移する。

やがて煙が晴れ、魔族に姿を変えた王立魔法学園の制服を着た女子生徒の死体が顕になった。

そこに、学園の生徒や教師たちが集まってきた。

さらにそこへ、特定班と考察厨兼迷探偵が情報をリークしたためやってきた警察が加わることとなった。


それはそうと、寮に戻ってきたユートは今のことをスレで報告しようとしていた。


「さて、と携帯携帯っと」


ポケットに入れて置いた携帯端末を取り出そうとして、そこに何も無いことに気づく。


「え??」


いつぞやのダンジョンの時のように、身体中をぺたぺた、と叩く。

どこにも、ない。


「え?えぇ??」


サーっと、ユートの顔が青ざめる。

落としたのだ。


「うっそだろ?!」


場所は、考えるまでもない。


「とにかく、携帯を落としたことをスレで報告……って!!

だから携帯ないんだっての!!」


パニクりつつもユートは直ぐに、先程までいた場所へ転移魔法で戻ろうとする。

しかし、今頃大騒ぎになってるはずだ。

そんな中に転移魔法でノコノコ出ていくことはできない。

そのことに気づいて、仕方なく走って向かう。

案の定、廃倉庫周辺は生徒会関係者やら警察やらで大変な騒ぎになっていた。

魔族女子の死体があったあたりは、すでにブルーシートで覆われていた。

他の生徒たちも何事かと集まってきて、ごった返しつつあった。

そんな人混みの向こうに、ユートはイーリスとエディの姿を見た。

二人は、ユートが戦闘時投げ捨てたコートを手にしている。


(まじかよ。うっわ、どうしよう)


すでに陽が落ちかけている。

こんな中で魔眼を使うのは自殺行為だ。


(しかたない)


ユートは携帯捜索を一旦諦めた。

深夜、皆が寝静まった頃にもう一度来ようと決めたのだった。

一方、その頃のスレ民はというと。


■■■


950:名無しの冒険者

魔眼保持者

戻ってこねーなぁ


951:名無しの冒険者

トラブったんかね?


952:名無しの冒険者

もしかして、携帯落としたとか?


953:名無しの冒険者

ありうるかも


954:名無しの冒険者

魔眼保持者、なにげに抜けてるからなぁ


955:名無しの冒険者

(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-



■■■


こんな感じで、雑談をしつつ魔眼保持者ことユートの現状を見事言い当てているのであった。

そして、深夜。

ユートは、現場に戻ってきた。

しかし、そこら一体には立ち入り禁止のテープが張られ、さらに、見張りが立っていた。


「ちくしょー、確認にいけねーじゃねーか」


人間、パニックになると判断力が低下する。

この時のユートもそうだった。

とにかく携帯端末を回収しようと、焦っていた。

普段、いじくりまくっているからか、ユートは立派な携帯依存性であった。

つまりは、落ち着かなかったのである。

普段、手元にあるものが無い。

それがこんなにも、ソワソワするものだとは思っていなかった。


だから、気づけなかった。

ユートは、気づけなかった。

背後から近寄る、その人物の気配に。


ぽんっと、肩を叩かれた。


「ブニャッ?!」


ビクッと体を強ばらせ、驚きで妙な声が出た。


「こんな時間になにをしてるんですか??」


「……へ?」


丁寧な物言いに、振り返るとエディの護衛だという少年がいた。

名前は、たしか……。


「えと、ルドルフ、さま??」


「俺に敬称は不要です」


「え、でも、エディ様の護衛ですよね?」


エディは公爵家の子息だ。

となれば、身分がしっかりしている者を護衛につけているはずである。

少なくとも、その辺に転がってるような庶民が立てる位置ではないはずだ。


「けど」


「俺は気にしないので」


「でも」


おいそれと、じゃあ呼び捨てにしますね、とはいかない。


「ユート様こそ、なにをしてるのですか?」


「いや、俺の方こそ様付けとか敬語とか畏れ多いんで、呼び捨てで」


「それで、なにをしていたんですか?ユート様??」


ユートは悟った。

きっとルドルフのことを呼び捨てにしない限り、こんなやり取りが続くのだ、と。


「せめて、ルドルフ君呼びでいい?」


ユートは観念して、せめてもの譲歩を提案した。

ルドルフは、まぁ仕方ないか、みたいな顔をして頷いた。


「それで、こんな時間になにをしていたんですか?ユート??」


改めて、ルドルフが聞いてくる。

敬語は改めてくれなかった。

もういいや、とどこか投げやりにユートはここに居る理由を説明した。


「それでこんな時間に探しに来た、と?」


「ま、まぁそんなとこ。ほら色々大騒ぎだったから。

誰もいなくなってからの方がいいかなっておもって」


「ということは、あの時ユートはここに居た、ということですか?

あの魔族が暴れていた、ここに」


(うっわ、やっべー。どんどん墓穴掘ってる、俺)


「あー、いや、その」


しどろもどろになるユートに、ルドルフはさらに畳み掛けてくる。


「そうなんですね?」


「…………」


「なんで、口をつぐむんですか?」


「あー、うー、なんて言うのか、その」


「……なにか、隠してますよね?」


確信を持った問いだった。


「そういえば、ユートはダンジョンの最下層に落下したものの、なんとか助かったとか」


ルドルフは急に話題を変えた。


「え、あ、うん。そうだけど」


「かの英雄ヴィンセントが助けに来てくれた、と聞きました。

それは、本当ですか?」


ユートは、こくりと頷いた。


「では、助けられた時。

英雄ヴィンセントは一人で助けに来ましたか?

それとも誰かを伴っていましたか?」


ルドルフのこの質問で、ユートは彼が何について聞きたいのか察してしまった。

黒衣の人物のことについて聞きたいのだろう、と。

エディから、ルドルフがスタンピードの真相について聞いているということを、【死の谷デス・バレー】の時にユートは知らされていた。


「……あの、ヴィンセントさんに、言うなって言われてるので言えないんだ」


ユートはこう返すに留めた。


「なるほど。

これは独り言なんですが。

彼女はとある人物のことを隠したがっている節がありますからね。

君にも口止めをした、ということなんでしょう」


(うん、そういうことにしておこう)


「それはそうと、君がここに居たのは事実なんですね?」


また、話題が変わった。


「うん、そうだけど、それが??」


ここで黒衣の人物、ファントムを見なかったか?

そう問われると思い、素直に肯定した。


「いや、変だなと思いましてね。

実は、とある人物が忘れ物をしていったんですよ。

コートなんですけどね。

その忘れ物があったから、おそらくその人物――私たちは黒衣の人物ファントムと呼んでるんですが――はこの現場にいたのだろうと、推測されます。

その人物が、突然現れた魔族を倒し、そして、去った。

ここまではいいですね?」


「はぁ、えと、それが?」


「実は、この周辺では怪我人が続出したんです。

証言を聞く限りでは、大怪我だったらしいです。

でも、突然回復魔法と治癒魔法が展開、発動され、気づいたら治っていた、というんですよ。

しかも、怪我人達は全員怪我が治っても、しばらく呆然としていたんですよ。

なのに、ユート、君はさっさと寮に戻り、わざわざこんな時間に紛失した携帯端末を探しに来たということでしたね?


君だって、ここにいたなら怪我をしたはずです。


そして、誰かが展開、発動した魔法で怪我が治ったはずです。

それは、魔族を倒した人物なのかもしれないし、もしかしたら違うかもしれない。

いずれにせよ、当時君はここにいたのなら、他の生徒と一緒に呆然としていなければ不自然です」


そこで、ルドルフは言葉を切ってユートを見た。

そして、


「どういうことか、説明してくれますよね?」


逃がさねーよ?

そんな副音声が、聞こえた気がした。

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