第六章・炙り出し

生徒会の部屋。

此処は他の教室とは違い、一番角の部屋であった。

少し、丸みを帯びた部屋の中で、上田邑百と温泉津月妃が椅子に座る。


「末路不和神霊の討伐、ですけど…現状はどうなんですか?」


恐る恐ると聞く上田邑百。

温泉津月妃は背凭れに体を押し付けながら項垂れつつも言う。


「一体は祓った、だけどまだ複数、この学校に居るけど」


一体。

この学校に転入してきて一か月と半分。

既に末路不和神霊を討伐したと聞いて、上田邑百は驚いている。


「…す、ごいですね。一年くらい、この学校に居ますけど、全然、何処に居るのか、分からないのに」


「祓ったのは、一体だけ、それも、自欲に作用されて表に出て来たから、だから祓う事が出来た、本来なら憑いている人間の内部に秘境神域を作るから、それだと存在は感知出来るけど誰かは分からなくなる」


だから面倒臭いと、温泉津月妃は思っていた。

大きく息を漏らして、今のペースだと不味いとも、思っているらしい。


「偶々、運が良かっただけ、それだけの事」


体を起こす、温泉津月妃は決意表明をする。

このまま、こんな牛歩で末路不和神霊を討伐する気など毛頭ないと言いたげに。


「だけど、受け身になる気は無いから、さっさと終わらせるつもりだから」


「え…どうするつもりなんですか?」


上田邑百が解決法を聞く。


「面倒臭いけど、一人一人、直接」


指を一本ずつ立てて、温泉津月妃は五指を広げた。


「…直接?」


何か、その先の言葉を聞くのは恐ろしかったが、一応は聞いてみると。


「術儀を食らわせる」


そして、開いた五指を思い切り閉ざした。

彼女の行動に慌てて上田邑百が叫んで言う。


「だ、ダメですよそんなのッ!何を考えてるんですか!!」


「いや、別に女子にはそんな事をする気は無いから」


術儀を食らわせる対象者は男子限定であるらしい。

何処までも、人間嫌いな彼女らしい選択だった。


「男子にもしたらダメですよ!!」


「全員死ねば良いのに?」


彼女の言葉に、それはダメだと首を振る上田邑百。


「酷い思考ですよそれは…」


「じゃあ、とにかく、術儀は使わず炙り出すから…行って来る」


仕方が無く、別の方法を使って末路不和神霊を炙り出す事に決めた。

そうして椅子から立ち上がると、彼女は生徒会の部屋から出ていく為に扉に手を掛けた。


「ど、何処にですか?」


危険な思考である温泉津月妃に、これから何処に行くのかを聞いている。

すると彼女、温泉津月妃はさも当然であるかの様に言った。


「放送室」


これから何をするのか…想像は難くない。

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