第六章・彼女の目的

末路不和神霊の消滅を完全に確認する。

女子更衣室で倒れる教師は意識を失っていた。

末路不和神霊との接続が途切れた為に、意識を失ってしまった様子だった。


「はい…これでおしま…は?」


何かを感じ取る温泉津月妃。


神霊は土地に住む。

だが、末路不和神霊は神格を失った神霊。

祟りに属する神霊でもある。


基本的には、土地には神霊が住み着くので、末路不和神霊が土地に住み着く事は無い。

神霊同士の諍いでは、根本的に言ってしまえば末路不和神霊の方が圧倒的に不利である為だ。

人間は無意識の内に神霊を信仰している、神霊は信仰を受ける事で強くなる。

その土地に住んでいると言う事だけでも信仰と言う扱いとなり、それ故に古来より存在し続けている神霊の方が強いのだ。


だからこそ、末路不和神霊はどうするかを考える。

自らが生き残る為には、土地に住まう事は出来ない。

神霊の領土に届かぬ場所に秘境神域を敷く事、それ以外にも。

物や人に住み着き、其処から信仰を得て生き永らえると言う方法だ。


人間の守護霊として、願望を成就させると言う条件下にて、その代償として末路不和神霊を強制的に信仰…供物や自らの生命力を持続的に吸収されてしまう。


「面倒くさ…」


教師に住み着いた末路不和神霊を祓ったが、それでも温泉津月妃は、この学園から感じる黒色に近い神力と言うものを感じている。


土地に住まう神霊の暖かなものとは違う為に、未だ、この学園には末路不和神霊が居ると想定した。


「(最低でも、五、六体…珍しくは無いけど)」


末路不和神霊が肉体に住まうと言うケースは珍しくない。

それが複数の人間に住み着いている事も、珍しくも無い。

だからこそ、それらを一人一人探して、祓うと言う行為が面倒で仕方が無かった。


「(なんでつきぴが面倒なことしないといけないの?)」


そう思うが…だが、仕方が無い事だった。

再び、ポケットから写真を取り出す。

春夏秋冬式織の写真を見つめる温泉津月妃は想いを馳せる。


「(さっさと終わらせて、冠位をあげて…逢いに行かないと…シキ…)」


全ては、春夏秋冬式織の為。

中学生時代より、春夏秋冬式織は長期に渡る『天禍胎』へと遠征へと向かっていた。

その選抜メンバーとして選ばれた春夏秋冬式織、恐らくは数年は戻っては来れない。

だから、次回の選抜メンバー選出の際は、冠位が高い巫覡が選ばれる。


その為、温泉津月妃は春夏秋冬式織の元へ向かう為に、自らの冠位の上昇を目論んだ。


そう言った理由で、温泉津月妃は仕事を繰り返して行っている。

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