第19話
深い眠りから覚める様に身体がすごくゆっくり動いている。近くではコトコトと鍋の音が心地よい音を奏でる。
あちこちパタパタと動くニコの姿はなんだかとても癒やされる。
「あっ、起きた?」
俺が返事を返すとニコリと笑いながら
「今日のメニューはシチューとパンと海老のカリカリ揚げ、デザートにバニラアイスもあるからね」
豪勢な料理だ。俺が教えた本の中の料理を食べてみたいって料理本を読み始めた様で偶に昔の世界の料理が出るようになる。
本来、特に食べる必要が無いけど味気ないから食べる様になったらしい。
それにしても身体がだるすぎる。確かに最近は訓練が多い。身体が追いつかなくなる。
「訓練で疲れたよね、ゴメン」
水を持ってきた後俺を覗き込む。覗き込まれるから見える。ニコの目の赤さを。また、泣いたな。いつも泣くよなコイツ。俺の視線に気付いたのかすぐに鍋の方に向いてもうすぐ出来るって。
風に当たりに出るかな。すぐに戻るからと言って庭に出る。夕暮れの静かな庭に溜め息を吐く、いつもの疲れから開放された気分がする。空よりもっと遠くの方が見える気がする。軽く散歩したら戻るつもりなので畑にでもと思ってた所で声をかけられた。
「ちょっとコッチ来て」
あぁ、なんだかせっかくの気分が台無しな声が聞こえた。
無視した。また声が聞こえる。無視する。何か足でどんどん床を踏む音が頭に浮かんできたので諦めて返事する。
「なんか用か?」
「嫌そうな声出すんじゃないわよ、ちょっとコッチ来て」
「嫌だ、もうすぐ飯が出来るんだ」
「いいから、来なさいよ・・・ニコの事」
「・・・わかりましたよ」
家に戻って、もう出来るって言うニコにすぐ戻るからと断わりを入れて花の屋敷に向かう。
ファナリスの家についたらイキナリピコハンで頭を殴られる。
「はっ?痛だ。痛い痛い。なんなんだ花妖精」
「神様です〜。ピコハンはそこまで痛くありません〜」
なんなんだよ。ピコハン片手にファナリスがニコが最近辛そうと言ってきた。確かにソレは感じていた。特訓の中でテンション上げて殺ってる。俺を殺ってる。正直糞痛いから怒ろうと思ってた。でもニコの顔をみて辞めた。
俺は殺されてる。けど死ぬ程辛いのは実はニコの方で顔面蒼白で死んでるのに無理にそれを解らせない様に振る舞う。俺の精神を支えようとする。
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ。身体中にピコハンが降り注ぐ
ピコハンだ〜!と妖精が顔面にピコハンを当ててきた。それは痛い。
うんやめろ。
「それで、俺にどうしろって?」
「あんたに承諾してもらいたいわけ」
「何を?」
明日、1人呼んでるからニコと訪ねて来いと。そこで承諾しろ。と、それだけ言うと帰って良いわと言われた。おいおい、呼んでおいてピコハンで殴る。そして命令かよ。
帰ってニコに明日ファナリスの家に呼ばれた事を伝える。ニコが不思議そうな顔をするが俺にも分からん。
とりあえず今はこの夕飯だった。美味そう。いやもう美味いのだ。匂いに逆らう余裕なんてない。いつの間にか席に座りいつの間にか手を合わせ食べ始めてしまう。美味い。
「結婚してくれ!」
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