催眠術で好きな子に告白してみた

桜井正宗

第1話 隣の席の清楚系ギャル

 音無おとなし 綾音あやねは、清楚系ギャルでクラスの人気者。俺もファンになった一人だった。なんせ、隣の席。

 毎日、白いフトモモを見せつけられているし、凛々しい横顔なんてカッコ可愛い。惚れないわけがなかった。


 そんな音無さんを狙う男子は、後を絶たなかったけど――玉砕するだけだった。


 音無さんのガードはとにかく堅かった。相手がイケメンだろうと金持ちだろうと関係なかった。バッサリ切ってしまっていた。


 だから俺なんて貧民が告白したところで、陰・即・斬で即死だろうな。



「……」



 でも、なんだろう。

 最近、目線だけはこちらを見ているような気がしていた。……気のせいだろうけど。



 どうしたら、音無さんと仲良くなれるのだろう。



 考えても考えても答えは見つからなかった。




 ――ある日、俺はスマホで怪しいサイトを巡っていた。怪しいといっても、相性占いだとか宇宙の交信だとかピラミッドパワーだとか……明らかにオカルトな内容系で。


 そんな中、ふと『催眠術』が視界に入った。


 催眠術……?


 って、あのたまにテレビとかでやってるヤツだよな。イメージとしては、五円玉の穴に糸を括りつけて相手の目の前で揺らすヤツだ。


 けど、実際は暗示とかで思い込ませるものらしい。


 相手によっては本当に掛かるみたいけど……まさかな。



 でもこれで話すキッカケが作れるのなら、それはそれで美味しい。掛かるか分からないけど、やってみる価値はあるかな。



 ――放課後。



「あ、音無さん……ちょっといいかな」

「…………(チラッ)



 勇気を振り絞って音無さんに声をかけると、目線だけはこちらを見ていた。どうやら、反応は示してくれたようだ。



「見てくれ、音無さん。この五円玉を」

「……(え、なにこれ。催眠術?)」


「音無さん、君は段々眠くなる……」

「……(隣の席の井ノ出いのでくんって、こういうキャラだったんだ。面倒くさいけど、掛かった振りをしてあげるか……)」



 驚くべきことに、音無さんは眠たそうにアクビをして――眠った! ……マジか! これ催眠術が掛かったってことだよな!? 信じられねえ……。

 催眠術て本当だったんだ。



「今君は、俺の命令を聞きたくて仕方ない」

「……(んなわけないじゃん。けど、面白いからいいけど――って、あれ……なんか体がヘンな感じ。あれ……あれ……)」



 おぉ、音無さんの目が虚ろだ。

 これは催眠状態ってことだよな。

 すげぇ、これで俺の命令は絶対聞くってことだよな。試してみよう。



「えっと、その……音無さん、俺と付き合ってくれ!」

「……実は、わたしもずっと井ノ出くんが気になってた。今年の春ごろに消しゴムを貸してくれて……テストで赤点取らずに済んだから……毎日どうやって話しかけようかと悩んでたの」


「へ……え? ええッ!?」



 そ、そんなことまで教えてくれるの~~~!?


 うわ、なんか俺……とんでもないことをしちゃった……。けど、音無さんって俺のこと意識してくれていたんだ!


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