目屋
『目、売ります』という看板に思わず立ち止まり、店の扉を開いた。
淡い橙色の照明に照らされた硝子のショーケースの中に眼球が並んでいた。
意思の宿らない透明な視線を一斉に浴びて思わず後退る。
「いらっしゃい」
店の奥から声を掛けられた。
カーテンの内側から出て来たのは黒いフード付きのローブを羽織った青年。
橙色の髪も紫色の瞳も何処か宝石の様に煌めいて見える。
「どの目にしましょうかね。今なら紅玉がおすすめですよ。再入荷したのは蛍の青です」
流れるように始まったセールストークにしどろもどろになりながら断りを入れる。
青年はそれでも嫌そうな顔せず柔らかな笑みを浮かべた。
「大概この店へ来る客は呼ばれるんだけど……珍しい事もあるものだ。だから商売と言うのは面白い」
何やら勝手に納得された。
冷やかして申し訳ないと謝り店を出ようとする私を追う素振りも無く、青年は「またどうぞ」とだけ言って手を振っていた。
『また』とはどういう事だろうか。
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