■「小説家になろう」の現状

 少し前まで「小説家になろう」でのはやりって、「異世界転生」で「俺、強え!」な、所謂ハイファンタジーだったんですが、今はどうなっているかと言うと「異世界恋愛」一色です。これにも2タイプあるみたいで、「転生しないもの」と「転生するもの」。なんでわざわざ分けるのかな……と思っていたのですが、そこには「小説家になろう」独特な理由があるみたい。


 「小説家になろう」のシステムは読者からのリアクションでポイントが決まり、日間、週間、月間などのランキングが各ジャンルで決まるもの。このシステムの下、数々の有名作が生まれて文庫化、漫画化、アニメ化されてきた訳ですが、近年ではハイファンタジーへの偏向が激しく、その内容もテンプレート化されてきていた様です。つまり、「小説家になろうでランキングの上位に食い込むためのテンプレート」が完成されていて、それに従って書けば読者に受け入れられると言う分けです。何周か遅れでそれらがアニメされて、近頃は所謂「異世界転生もの」のアニメがやたらに多いのはこの様な背景があった訳ですね。


 しかしこうなると「小説家になろう」に登録される作品が似たようなものばかりになってしまうのは理の当然で、運営側もこれに危機感を覚えたのか、はたまた新しい読者の取り込みを図ったのか、ある日「異世界転生/転移」と言うジャンルが作成されて、「恋愛」と分離されたと言うわけらしいです。実際女性読者が一気に増えて、ランキング上位にくる作品もガラッと変わったようなので、これはこれで効果があった様子。


 ただですね、同じ「小説家になろう」と言うシステム内のことですから、結局「恋愛」ジャンルであっても「異世界転移」ジャンルであっても恋愛ものにはテンプレートが出来つつあって、その影響が今回のカクヨムコン8でも如実に現れていると思うわけです。その主たる特徴として


 ・悪役令嬢

 ・乙女ゲーム(転生)

 ・聖女

 ・婚約破棄

 ・追放

 ・スパダリ(スーパーダーリン)

 ・溺愛

 ・ざまぁ


 などが挙げられるみたい。例えば「転生したら聖女だったけど、何かの理由で追放されたので隣国の王子に溺愛されます」みたいなパターンですね。スパダリと言うのは元々BL用語だったみたいですが、ここでのスパダリは「完璧王子」みたいな存在の様です。正直、テンプレートがあるならランダムにワードを選択してAIでもそれなり書けそうだなあ。


 ハイファンタジーの場合、主人公が最強で無双していくことが好まれた様ですが、恋愛ものの場合は追放なりされた主人公が成功して、追放した相手に対して豪快に復讐するようなストーリーが好まれるらしいです。「ざまぁ」とはまさにその過程なんでしょうね。

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