第28話・戦の匂い




「ほぉ〜⋯あの悪名高いゲシュペトがついに⋯⋯」


「大ニュースですよね!なんでも、銀槍竜の協力があったとか⋯」


「それ、一部じゃデマって話しよ?魔物が人間に協力するなんて⋯」



ベルトン・ヴィルジール別荘、食卓にて。

ここ最近、違法ギルドとして恐れられた、彼のゲシュペトがついに陥落したという話題で、冒険者達3人は盛り上がっていた。


それはこの3人も例外ではなく、今朝入ってきた新聞の記事に大々的に表記されていた事でこのニュースを知り、朝食の最中にも関わらず、身を乗り出して新聞を囲んでいる所だった。


新聞の見出しは『ゲシュペト撃墜!総長、ゴルザの素顔!』というセンスを疑うものだった。ゴルザを捕らえたとされる、ギルドの捜査員きっての頼みでこの見出しになったとか⋯⋯


記事には、ゴルザという男の異常性や、そのやり口等が事細かに記載されている。だが、ぶっちゃけそんな事どうでもいい3人からすれば、この新聞の焦点はやはり銀槍竜に当てられる訳だ。



「えー、シルビアさんってロマン無い〜」


「何を〜?貴女は身長が無い〜」


「ふーむ⋯⋯」



主に、ヴィルジールだが。

完全に打ち解けた女性陣を尻目に、ヴィルジールは新聞を自分の手元に寄越した。


相変わらず話題が尽きない銀槍竜だが、ここに来て人間とのコミュニケーションが可能という、知能の高さにヴィルジールは少なからず驚愕した。ある程度の知能レベルを把握していたつもりだったが、まさかここまでとは、と。



「やれやれ⋯⋯出会いが待ち遠しいぜ、全く」


「「??」」



サンクイラとシルビアは顔を見合わせた。

銀槍竜のニュースとなると、いつもはニヤついたり、独り言を呟いたり等、近付きにくいオーラを醸し出すの筈なのだが、今日は違うと気が付いたからだ。


彼は確かに笑みを浮かべはいるのだが、今回は穏やかで柔らかい表情で天井を向いている。例えるのなら、旅行でも控えてえいるワクワクが表情に零れている時のソレ。



「今日は違うのね、ヴィルジール?」


「ぉん?何の事だ?」


「⋯⋯⋯⋯いいえ、なんでもないわ」



気になったシルビアが遠回しに聞いてみるが、どうやら彼本人に『いつもと違う』という自覚はないようだ。シルビアはサンクイラに対して両肩を上げ、ストンと落とした。


やれやれ、的なジェスチャーに、サンクイラも同じ動きで返す。状況を理解していないヴィルジールにからして見れば、彼女達が謎の動きで会話している様にしか見えず、口をへの字に曲げる事しかできないのであった。



「⋯っと、もう予定の時間か。お前ら、行くぞ」


「えっ、なんの事ですか?!ぁちょっ、まだご飯少ししか⋯⋯ムグッ」


「移動しながら食べればいいわ、今日は遅刻できないもの」



ふと時計を見たヴィルジールが、2人を急かしながら立ち上がった。新聞に夢中で、半分も朝食を食べていなかったサンクイラの口に、ヴィルジールは強引にパンを突っ込んで牽引した。



ヒョウホヒョヘヒッ今日の予定っヘヒッハイ⋯?て一体⋯?


「あぁ、お前には伝えていなかったか⋯⋯。まあ、簡潔に言えば会議だ」


「ン⋯グッ⋯⋯会議?今まで何でもやっていますし、今回の会議がそこまで特別なんですか?」



頑張ってパンを飲み込んだサンクイラが、ヴィルジールに疑問をぶつけた。彼女の言う通り、会議自体は何度も開いて入念な準備をしていた。


それもその筈。

今度の戦は、数多くの冒険者が動員される大規模なものだ。当たり前だが、この戦に命を捧げる様な者など居らず、全員が無事に生きて帰れる様に、綿密に、何度も会議は開かれた。


それはもう、いい加減呆れてしまう程に。



「⋯⋯特別よ」



シルビアは、静かに言った。

ヴィルジールが今回の会議の内容を、サンクイラに伝えていない事について視線で小突いてから、溜息を零しながらも説明をした。



「いい?今回の会議は絶対に外せない理由は、大きく2つ。

1つは、私達ゼクスの威厳を保つ為ね。⋯ま、威厳って言っても、先輩として欠席だの遅刻だのをしたら顔が立たないって話しね。そして2つ、これが重要。」


「⋯⋯⋯。」



シルビアは彼女に説明した。

今回の会議が如何に重要なのか。


それは、1つ目の理由を聞けばある程度は分かるだろう。

この会議に参加する者達は、大きく分けて2つ。ヴィルジール達ゼクスと、もう1つ。


討伐戦は合同で行われる予定だ。

そう、ギルドランク10番目のツエン達。今回の会議は、ゼクスとツエン達の合同会議だ。シルビアが言ったように、上に立つものして、情けない態度で挑む事は出来ない。


そして、今回初の合同会議という事で、互いの連携の強化と、より一層の緊張感を促すのが何よりの目的。



「⋯─つまり、そういう事よ」


「わ、分かりました⋯」


「なに、俺達はどっしりと構えてりゃあいいんだ。力抜け、サンクイラ」



ヴィルジールが茶化すように言葉を掛けるが、既にカチカチのサンクイラはシルビアに抱えらながら歩いた。ポケットに手を突っ込んで、さっさと前を歩くヴィルジールを追うようにシルビアは歩幅を大きくした。


アンタちょっとくらいは手伝いなさいよ、と内心で舌打ちをしながら──⋯





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数分歩いた後、ヴィルジール達が入ったのは、ベルトンのギルド会場。それも、一般的には解放されない大会議室だった。



「⋯⋯早かったの」



大会議室奥側の壇上に、ある老人が上がった。

以前、バルドールが乗り込んだ屋敷の主。ドワーフ族にして冒険者ギルド・ベルトン支部のマスターを務めるガバン・ビンゴールは、静かに部屋を見渡した。


7人、それが今この大会議室にいる冒険者の数だ。

彼らはゼクスと呼ばれる冒険者達で、ギルドが定めているギルドランクという制度に基づき、様々な観点から考慮した実力によって最低ランクであるツエンから昇格し、ゼクスのランクまで辿り着いた腕利きである。


勿論だが、ゼクスは7人だけでは無い。

この会議のゼクスのメンバーは、ベルトンを戦地への中継地点としている者達が集められているのだ。先に向かっている者や後から追い付く者など、全メンバーが集結するのは、迎撃戦前々日を予定している。


合計ゼクスメンバー、その数23人。

魔物総数1000と幾らかに対して、圧倒的に少数にも聞こえるが、彼らは魔物退治の専門家である冒険者だ。その中でもトップ6に入る実力者集団である彼らにとって、その程度の数は連携さえ取れればなんら問題はない。


しかし、今回の作戦はツエンと合同で決行される為、ゼクス達は彼らとの連携も考えなくてはならかった。この会議は、その課題を少しでも解消する為に開かれた、極めて重要な会議だ。



「⋯⋯来たか」


「「「よろしくお願いしますッ!!」」」



大会議室の扉を開け、入室したツエンメンバー約50人。

威勢のよい挨拶と共に、既に到着していたゼクスの面々を見て、彼らは尊敬の眼差しで見つめた。


が、すぐに部屋の中央に移動し、ゼクス達の後ろに整列を組んだ。自分達は、馴れ合いの為にこの場に来たのではなく、実戦に向けた作戦会議をする為に来たのだと。



(ほ、ホンモノだぁ⋯⋯)


(すげぇ⋯あれがシルビア・アーレンか⋯⋯)


(煙草吸いてぇな⋯⋯)



ツエンのメンバー達が目の前のゼクスの面々に尊敬の念を送る中、ただ1人、この場に立っても大して動じていない男がいた。


男の名はバルドール。

銀槍竜をベルトンの街に引き入れる、という要求と引き換えに、今回の作戦に戦力として参加するという見返りを受けた彼は、渋々この会議に紛れて参加しているのだった。



「さて⋯⋯今回の大規模迎撃作戦について、私がギルドから受け取った幾つかの情報を掲示しよう」



全員揃ったのを確認したガバンが、自身の背後にあった大きな垂れ幕を下ろした。それは横長で無地の垂れ幕だが、縦の長さでもガバンの身長の3倍はあった。⋯⋯因みに、垂れ幕に1番近いガバンが比較対象となった訳だが、ドワーフ族である彼は人間と比べてかなり小さい。


役120cm程の身長の3倍⋯⋯つまり、3m60cm程の大きさである。垂れ幕の横幅はガバンを横倒しにして5倍程だ。


この情報の必要性はナイ。



「現在、魔物の軍勢は【王都クローネ】に進行中。

王都東の平原を、日に1〜2kmの進軍速度で王都に迫っている。


王都の領地まで残り26km。

奴らがこの速度で進軍を続けた場合、ギルド側の妨害工作を踏まえると、8月の20日辺りで領地侵入と想定される」



ガバンが懐から水晶を取り出し、垂れ幕の前に置いた。

彼が水晶を起動すると、それは垂れ幕に向かって光を放ち、映画の様に画像を映し出した。


この水晶は、現世界で言う所のプロジェクターだ。

そして垂れ幕はスクリーンの役割を、という異世界ならではのやり方である。



「魔物総勢は約1200体。

種族は大きく7つ。ゴブリン、トレント、ガムナマール、スケルトン、ワイバーン、ガーゴイルだ。


それぞれ、上位種も混じっているという報告もある。

報告されている限りでは、

ガーゴイルの火属種、フラン・ガーゴイル。

トレントの進化種、ドルン・トレント。

ガムナマールの進化種、シャルフ・ガムナマール⋯⋯この三種が挙げられる訳だが⋯⋯」



チラリとガバンは冒険者達に目をやった。

彼らの表情は何が言いたげな⋯⋯いや、実際にある者が口を開いた。



「前の情報より、魔物の数⋯⋯少し増えていないか?」



質問を投げかけたのは、ヴィルジールだった。

彼の言う通り、今回の迎撃戦について前もって伝えられていた魔物の総数が、約1000体から微妙に増えていた。


その事について、この場の全員が同様の疑問を思い浮かべた訳だが、問題だったのは変化の差だった。計測の漏れがあった、と言うほど少ない増え方ではないが、別の群れと合流したとも考えにくい数。


以前、この魔軍の進行方向付近にオークの群れが生活していて、ギルドが合流を危惧していたが、結局合流はせずに魔軍は通り過ぎたのだった。


では何故、このタイミングで魔物の軍勢に200体程の微妙な増加があったのか?



「⋯⋯それについてなんだが、原因は不明⋯⋯というのが、ギルド側の見解だ」



ガバンが静かに答えると、質問者であるヴィルジールはギルドのずさんな対応に眉を顰めた。腕を組みながら、他ゼクスメンバーと何やら話しているのを、後ろのツエン達は見守った。


正確には、同じ冒険者でも見習い集団である彼らには、口出しする余地が無かっただけだが。



「その増加した200体の魔物の内訳は?」



その質問をしたのは、ツエン側の冒険者だった。

ゼクス達はその冒険者の的確な質問に感心し、振り返って素顔を確認しようとするが、約50人の中に埋もれたその冒険者を発見する事はできなかった。


ただ1人、ヴィルジールを除いて。

彼が、今の質問をした冒険者の判別がついたのは、ただの偶然では無かった。彼自身も、振り返って声の主を探してはみたものの、流石にこの人混みの中での発見は難しいとして断念した。


⋯が、諦めて首の向きを戻そうとした時、ヴィルジールは見た。彼の、茶色の髪と赤混じりの茶の瞳を。防具で顔を覆い、その男の顔自体はハッキリとは確認できなかったが、ほんの一瞬だけ視線が合った。


その刹那に、ヴィルジールはその男が質問者だと直感したのだった。



「⋯⋯残念だが、」



ガバンが質問に答えようと声を発したのをきっかけに、ヴィルジールの集中は途切れ、再び前に向きを直した。



「それについても、不明だ」


「オイ、ふざけんじゃねえぞ!それが都1つを守って欲しいモンの対応かコラ!」


「そうだ、流石に情報の収集がなってないぞ」



場が悪そうにガバンが答えると、ゼクス達は口々に怒りをぶつけた。ツエンの冒険者達も、ギルドの対応と目の前の荒れるゼクス達の両方にざわめきはじめる。


熱気が高まる会議室の中で、ヴィルジールは先程目が合った相手について、静かに考えなおしていた。


目が合って、ヴィルジールが理解したのは、その男がツエンのランクに留まっている様な冒険者では無い、という事だった。何故、それ程の男がツエン程度で足踏みしているのか、ヴィルジールの疑問は増えるばかりだった。


しかし、その思考は他ゼクスが高まりすぎた怒りを行動に移そうとした事によって停止する事となる。



「テメェ、ギルドマスターさんよォ⋯?」


「バカッ⋯⋯待ちなさい、ソール」



荒れた銀髪をオールバックにし、うなじ下まで伸びたソレを靡かせながら、ソールと呼ばれたゼクスは拳を作ってガバンに迫る。


シルビアが前方に立ち塞がり止めに入るが、このままではシルビアにさえ殴り掛かりそうな勢い。見かねたヴィルジールが、ソールの肩を叩いた。



「おいやめろ。で騒ぎを起こすんじゃねえ」



そう言うと、ヴィルジールは目線だけ後ろにやった。

多くのツエン達が見ている中で、先輩である俺達が乱闘なんぞしてはいけない、そう目で訴えた。


ソールは翠色の眼で強気に睨み返すが、ひと呼吸おいてから、肩に乗ったヴィルジールの手を振り払って引き下がった。このソールも本物の実力者であるが故に、この場で感情的になる姿を晒す訳には行かないと理解したのだ。


一触即発の場を乗り越え、サンクイラ他ゼクス達が胸を撫で下ろすと共に、後ろのツエン達は目の前で起きた光景に、冷や汗を流した。


ソールのガタイは、一般的な体格のヴィルジールと比べて一回りほど大きく、しかも単にガタイがデカい訳ではなく、全て筋肉が隆起した結果のデカさ。そしてそれを助長するかの様な、肩から二の腕の筋肉が露出した重装備が、余計に見習い冒険者であるツエン達をヒヤヒヤさせたのだった。


そして何より⋯⋯ゼクス同士とはいえ、そんな相手に立ち塞がれる女の胆力、肩を叩いて牽制できる男の精神力に、心の内で感嘆していた。


密かに目を輝かせるツエン達を背後に、ゼクスの1人が口を開く。彼は、ソールと共に不満を口にした男の冒険者だった。



「⋯⋯全く。この際、大した弁明も期待しないが、事情を聞かせてもらおうか」



紺色のごく短髪に蒼い瞳、同じく青い眼鏡を身に付けた男は、不満げにガバンに言った。この男の名はハクア、ゼクスの中では比較的小柄で、身に纏う装備も鎧と例えるには厳つく、いうなれば着物に近いもの。


日本のさっぱりというよりは、中国のしっとりとした雰囲気に似ている。見た目通りのバトルインテリだ。



「⋯⋯まず、ギルド側の者として、こちらの対応不足に詫びさせてもらう」



ガバンは、そう言うと深く頭を下げた。

腕を組み、その様子を他人事の様に眺めてから、ハクアは眼鏡の位置を指で直した。小さく溜息をつきつつも、彼が『もういい』と言うと、ガバンはゆっくりと頭を上げた。



「さて⋯⋯ここまでの情報不足について、何故不明なのか説明してもらおうか」


「⋯⋯それは─⋯」



その場にいた全員に、ガバンは詳細を話した。

彼の話が終わる頃には、内容についていけずに呆れる者が殆どだった。


その後、なんやかんやと会議は進み、一段落がついた頃。



「⋯ここらへんで、一時休憩とさせて頂く。昼食後、再度集合するように」



ガバンのその台詞を皮切りに、ストレッチをする者や、さっさと部屋を出て煙草を吸いに向かう者など、冒険者達は一時自由となった。



「ん〜⋯っはぁ!疲れましたね〜⋯」


「ホント。ソールのバカは暴走しかけるし、ハクアは嫌味っぽいし、そもそも長い会議は嫌いだし⋯⋯ヤんなっちゃう」



両腕を上に突き出して伸びをするサンクイラと、グルグルと肩と首を回すシルビア。2人を背に、続々と部屋を出ていく者達の中に、先程の男を探すヴィルジールがいた。


既に部屋を出ていると分かると、ヴィルジールはやや残念そうに足で空を蹴ってから、彼女達の方へ振り返る。



「どうかされたんですか?」


「⋯いや、べつに」



ヴィルジールの不審な様子に疑問を持ったサンクイラが質問をするが、彼は首を前後に撫でながら浅く返答した。その様子にますます疑問を覚えるサンクイラだったが、その隣にいたシルビアに限っては、彼が何を考えているかおおよその見当がついていた。


それはヴィルジールが行った『首を前後に撫でる』というクセが大きな要因で、この行為をする時、彼は大抵何かを疑問に思っている時だった。


そして、部屋を出る者達を凝視した後にその行為をしたということは、知り合いに似た人物等がいた⋯⋯若しくは、誰かを探していた⋯⋯そんな所だろうと、シルビアは考察した。



「さぁ、さっさとお昼にいきましょ。休憩が終わっちゃうわ」


「⋯⋯だな」



シルビアは、恐らくあっているであろう自身の考察に胸を張った。ヴィルジールとは長い付き合いであり、語らずとも何かを察せる事は、彼女に特別な感情を抱かせたからだ。


並んで部屋を出るシルビアとヴィルジールを、後ろから見ていたサンクイラは思った。この2人って結構イイ感じなのでは、と。


男女の友情ってイイな的な事をほんわかと考えていたが、自分が置き去りにされていることに気が付き、サンクイラは会議室を飛び出したのだった──⋯





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「⋯⋯⋯⋯。」



ギルド会場外壁にもたれ掛かり、煙草を吹かしているのはバルドールだった。苦手な集団での活動、ギルドの対応不足、ゼクスの暴走未遂⋯⋯。彼にとって、それらがどれ程のストレスとなった事か。


自身の気持ちを鎮めるように、ゆっくりと煙を吐き出す。

空を虚ろに見上げながら、バルドールは考えた。



(あのゼクスの男⋯⋯ヴィルジールとかいったか)




先程、事があった。

ツエンとして紛れるにあたって、周囲に怪しまれてはいけないのは当たり前だ。自ら進んで目立つ行為など、絶対に避けるべきだったのだが、ギルドのいい加減な対応に思わず疑問をぶつけてしまったのだ。


それでも、あの数に紛れていれば注目される事は無いと踏んでいたのだが、あの一瞬で1人のゼクスと目が合ってしまったのであった。その相手が、あのヴィルジールという男。


バルドールは、煙草を咥えたまま軽く笑った。

向こうもあの目が合った一瞬で気が付いたのだろう。互いに、只者では無い、と。



「⋯⋯さて、俺も飯食いにいくか」



煙草を地面に捨て(※真似してはいけません)、足で鎮火してから、バルドールは昼食に向かった。住民や商人、獣人に冒険者⋯⋯数々の者達が生活を営むベルトンの雑踏に、彼は静かに消えていくのであった──⋯




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〖おまけーっ!〗



みんな久し振りーっ!僕だよ、僕僕!


例の如く、登場してみたけど⋯⋯やる事ないっ!


アカシは、毎日毎日歩いてばっかだし!

虎徹君に僕の声聞こえないし!あーもう!ひまぁあ!


⋯⋯あ、因みになんだけど、僕が彼の名前知ったのって、ギフェルタんとこの友達に教えてたのを、僕がたまたま聞いてたからなんだよね。


失礼しちゃうよ!この僕を差し置いて、他のコに先に教えるなんて!


⋯⋯まぁいいもん、別に羨ましくないし。

他のコに名前を付けてあげてたのも、ぜんぜん羨ましくない。


僕にも名前欲しいなんて、ぜーんぜん思ってないからーっ!!



「クエ?」


「いや、気にするな虎徹。⋯ちょっと頭の中がキンキンするだけだ。」

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