ありがとうを何度でも11

 美人姉妹から左右同時の可愛がりを受けて、恥ずかしいやら、照れるやら。


 野郎共の目が怖いけどな!!やるかっ!?「「ウーッ!!」」お互いに歯を剥き出して威嚇する。


「何馬鹿やってんの?」たえに頭をポンと叩かれて、ふて腐れた顔をしつつ、テーブルの上のいかソーメンを食べる。あっ、うまっこれ。シコシコとした歯触りが良い、新鮮で生臭さも無いし、多分自家製で作ったんだろう、刺身ダレがこれまた旨い。


「たえ、これ旨いな」心底感心していると、ゆえ姉さんが嬉しそうに「でしょう?タレ作ったの私だからね!!」フフンと胸を張る、ゆえ姉さん。プルんとはねる胸部装甲を見て、野郎共が、おぉ~~!!と感嘆の声を上げる。


「やーだ、最低、男バーカ!!」女の子達の声に「俺も!?」と抗議を上げるけど、男なんて皆一緒だと怒っている女の子達には届かない。


 唯一あきれ笑いしていた、柊さんがニヤリと笑って「まこと君は、どれくらいの大きさが好き?」あれ?、嫌な流れだぞ?


 まぁ、その答えは決まっている。ニコリと笑って、「まぁその……たえ位あれば良いんじゃないかな?」その瞬間みんなの視点がたえの胸部に集中する。


 待て待て待て、野郎共の視線はたえとの間に入ってカバーするぞ!!


 ムッとした野郎共の顔は無視すると、


 恥ずかしそうに、たえが「まこと、よく言うんだよね。別に大きいとか小さいとかじゃなくてお前位が良いんだよって」


 その言葉に俺は、うつむいて照れながら「だって俺はお前しか知らないし……」


 辺りがしばらくシーンとした後、悪友の「あーー!!やってられねぇ!!」と言う言葉が、「あームカつくー!!」や「俺のたえちゃん返せー!!」と言った声がする。


「イケメンにあれやられると何も言い返せないな」「イケメンなんて皆消えれば良いのに!!」「誰か、俺を消してくれー!!」


 悪友達と馬鹿話をして盛り上がり、からかわれて、不貞腐れて、大笑いする。


 そんな時間が鬱陶しくて愛おしくて……。


「ねぇ、まこと。ちょっと付き合ってくれない?」お酒が回り始めて、皆酔い始めた頃ゆえ姉さんが俺を誘ってくる。


 あまり浮かない顔をしているのを見ると、きっとゆえ姉さんの結婚話なのかな?


 たえは……、柊さん達と盛り上がっている。相変わらず強いな。


「いっすよ」俺は短く言うと、その場で立ち上がる。


「たえ、ちょっとゆえ姉さんとコンビニ行ってくる」嘘じゃない、帰りにコンビニ寄れば良いだけだ。


「あーい、行ってらっしゃい」右手をヒラヒラさせて酔った、たえが上機嫌で答える。


「悪いね」玄関を出て、靴を履いているとサンダル履きのゆえ姉さんが、優しい、それでもって少し寂しそうな笑顔をしながら俺に一言言った。


 その笑顔を最後に見たのは俺とたえが東京に旅立つ日の夜だったななんて、その時思った。


 その時の彼女は、「たえの事、よろしくね」と言って今見たいな笑顔をしていた。



 たえの実家から、数百メートルも歩けば、港に着く。


 津波避けの堤防の工事をしていて、完成すれば二十メートル超えの堤防になるらしい。


「どんな津波が来るのかね?」ゆえ姉さんが、苦笑いしながら堤防の隣を歩く。


 その右斜め後ろを俺は、ゆっくり歩きながら、ゆえ姉さんと他愛ない話を続けていた。


 少し低くなっている堤防に上がると、そこから海が見える。


 ゆえ姉さんは、堤防の上に座ると、俺に隣に座るようにとポンポンと隣を叩く。


「ハイハイ」俺は、隣に座るとゆえ姉さんの優しい笑顔が月明かりに照らされている。


 こう見るとやっぱり、たえとは姉妹なんだなって、横顔がそっくりで……。


 俺は、少し前から、気になっていた事を聞いてみた。


「ゆえ姉さん今日、お酒飲んでないですよね?少なくても俺の見ている前では」ゆえ姉さんは、忍野家のご多分に違わず、お酒が好きで、特に明るい席でのお酒を楽しみながら飲むのが大好きだった。


 姉さんは少し、ビックリした顔をして、

「まこと凄いね、良く見てるね?」そう言うと少し嬉しそうな顔をした。


「私ね、赤ちゃん出来たんだ……」それを聞いて、やっぱりと言う気持ちとビックリした気持ちが混じった様な気持ちになってしまう。


「成る程……」そう言った俺に、驚いた顔を期待していたのか、ゆえ姉さんは少しムッとした顔をして、

「あれ?あんまり驚いて無いね~?」そう言って俺の頬をグリグリされる。

「やめて下さいよ、子供の頃じゃあるまいし」恥ずかしがりながらも、拒否できずにいると、

「本当、大きくなったもんね……私が中3の時に、ランドセル背負ってた子がだよ?」嬉しそうに、もう一度、俺の頬を人差し指でさした。


「やっぱり、子供が出来たのがが理由なんですか?」


「私の結婚の話?」ゆえ姉さんの言葉に俺は、少し躊躇いながら頷く。


「その前に教えて、どうして子供の事分かったの?」不思議そうに言う姉さんに、俺は恥ずかしがりながら、真相を話す。


 なんて事は無い、俺とたえにも、少し前に似たような出来事があったからだった。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る