出来たって本当ですか?3
「まこと、豚カツとかつ丼どっちが食べたい?」
かつ丼じゃないの?一瞬思ったが、たえがスーパーで山積みになっている特売のキャベツの前で考え込んでいる姿を見て、成る程ねと心で呟く。
特売のキャベツは気になるよな?重いし、かさ張るけど、キャベツは色々な料理に使えるし、とにかく豚カツにキャベツは美味い!!
幼馴染みの、主婦っぽい部分を見て思わず微笑んでしまった。
(あいつ、良い奥さんになれそうだよな?)
なんて考えて、まだ早いか?と苦笑いする。
今日は、たえの事ばかり考えてるな俺、たえの事好き過ぎないか?
何となくニヤケながら、未来の奥さん(予定)の献立相談を考える事にした。
「うわっ悩むなー、豚カツの食べた時のジュワッと出る肉汁も良いし、色んなソースとかで味変しながら食べるのも良いし……」
「添え物のキャベツの千切りが豚カツと合って無茶苦茶美味しいんだよね」
頭の中で、出来上がった豚カツ定食を思い浮かべ、喉を鳴らす。
ポテトサラダなんかがついてくると、なお嬉しい。
「あー、そんな事言われたら、口が豚カツの口になっちゃうじゃない、うーん山盛りキャベツ食べたいなぁー、最近野菜不足だしなー」
たえがキャベツを一玉取って、考え込んでいる。
「でも、かつ丼の卵トロットロの半熟卵にして、掻き込んで食べたいかなぁー!!俺、かつ丼の上に刻み海苔いっぱい乗せて食べるの好きなんだよね?」
トロットロの卵がかかった、かつ丼を想像して、思わず深い溜め息をつく。
たえの作ってくれる、かつ丼は俺達二人の地元の方でしか手に入らないカツオ出汁の麺汁を使っていて、本当に箸が止まらない旨さなのだ。
あー、どっちも食べたい。
今回の料理は、今夜テレビで、放送されるサッカーの贔屓チームの試合があり、たえが勝つに験を担いでかつ丼を作ってくれると言うのだ。
まぁ、スポーツの試合の前に俺が良くかつ丼やカツカレーを食べていた事をたえは良く知っていたからな。
今日は、家で二人でサッカー応援をする予定だったのだ。
二人で、悩みながら晩の献立を考える。少し面倒臭いが、凄く楽しいんだよね。
なんかホラさ、新婚みたいじゃん。
「どっちも食べたーい」と言うたえの声に、二人で顔を見合わせて大笑いした。
☆☆☆
今現在、俺のマンションは揚げたてのカツの香ばしい香りが充満している
「まこと、玉ねぎ切った?」
さて、クエスチョンです。
たえの、これだけの言葉で夕飯がどちらになったか解るだろうか?
「うん、これで良いか?うぅ目がきついな」玉ねぎが目に染みる。上手い人なら目に染みない切り方とか知ってるんだろうな。
実際、普段から自炊をする、たえにとっては当たり前に出来る事が、程々にしかしない俺にとっては、玉ねぎの涙腺への攻撃は防ぐ手立てが無かった。
もうちょっと普段から頑張ってみようかな?
具材を切って煮込んで……、麺汁や調味料を入れて味を整える。キッチンに.甘じょっぱい匂いが充満している。
今日のかつ丼も美味しそうだ。
「まこと、どんぶり取って?」
「あぁ」俺は食器棚から、緑とオレンジのペアになっている猫の絵が書かれたどんぶりを取り出す。
少し、恥ずかしいけど、二人の物が増えていくのが嬉しい。
それが、もっと増えていって、いずれは大きさの違う可愛らしい容器も増えていって……。
横を見ると、ニコニコした顔のたえ。
「どうした?」
「えっ?うん、二人の物が増えてくのって嬉しいかな?って」
「ほいよ」
少し恥ずかしがりながらも嬉しそうに微笑むたえにどんぶりを渡し、
「俺も同じ事考えていた」と笑うと、
たえは、何も答えずそっと、寄り添って来て俺の肩に自分の額をそっと乗せる。
「たえ……」言いかけた言葉はたえの言葉で途切れる。
「今は……食べよ?サッカー始まっちゃうよ?」
時間は19時少し前そろそろ、サッカーが始まる時間だ。
俺は、ご飯がっつり目に、たえはご飯控え目に手元にはビールを添えて。
たえ用に買って来ていたクラフトビールを何本か持ってくる。取り敢えず買って来たのはペールエールと黒ビールそして、良く解らなかったが可愛らしい猫のパッケージの缶の白ビール。
白ビール以外はお店の人のお勧めを買ってみた。
そして、俺はゼロなコーラを飲む。普段はウーロン茶か麦茶だけど、何となくシュワシュワした奴が飲みたくなるんだよな。
「この白ビールの缶可愛いっ!!」
モダンな色彩に書かれた、少しすました顔の猫が可愛らしいパッケージの缶に、たえは上機嫌だ。
「味はどう?」
缶からグラスに移し変えて一気に飲み干すたえに味を尋ねると嬉しそうに、
「フルーティーで飲みやすいかなぁ?軽いんだよね。スポーツ観戦って、ビールとかの炭酸系が飲みたくなるんだ」
ちょっと無理して買った55インチのテレビから軽快なサッカーの応援チャントが響いてくる。
楽しそうにチャントに合わせて体を動かし、
「オーレオーレ」と小さく口ずさんでいる。
「何となく分かるかも」そんなたえを嬉しそうに見ながら手元にあったグラスに入ったコーラをぐぃっと飲み干す。
「お酒あんまり飲めないくせに」ジトッとした目でこちらを見ながら、たえは 1.5リットルのペットボトルからグラスにコーラを注いでくれる。
コーラは盛大にグラスで泡をたてた。
「そりゃ酒飲みの気持ちはわからないけどさ、応援で渇いた喉に炭酸のジュワッって感じは旨いよな」
まるでビールを注いで貰ったかの様に、慌てて溢れそうな泡を、チビッと小さく飲む。
まるで反射の様に、たえの空いたグラスにビールを注ぐ。
社会人になって何となく、そうするのが当たり前になってしまったんだよな。
「まことありがとー」
「んっ、こっちこそ」嬉しそうなたえを見て目を細めて微笑んでいると、
「……妊娠中ってお酒駄目なんだよね」
たえの突然の言葉に少しむせる俺、
「ゴホッ!!ケフッ、何だよ急に」
慌てて、たえは俺の背中を擦り、から笑いをしながら、
「あっゴメンね、昨日隣の席の先生と何となくそんな話したんだよね、雑談見たいに」
「何だよ、流石にちょっとびっくりいや、気になるだろ?」少し荒い息をしながらティッシュで鼻をかむ俺に、たえはゴメンねと謝って来る。
まぁ俺もたえと、そういう関係になっているし、まぁ気をつけてはいるものの、絶対なんて事は無い。
いずれ責任は取るつもりでいる。
でも、まぁ、びっくりする位良いだろ?
たえも、仕事上、色々責任がある立場にいるしね。
あんまり、驚かすなよと言おうとした時だった。
「まぁ、生理がまだ来ないなってのはあるんだけど」
たえが、アハハと笑いながら言った言葉は、俺の顔を硬直させるには充分だった。
「えっ?」
55インチのテレビから、
『ゴール!!』という、アナウンサーの絶叫が響き渡っていた。
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