あおしの 幸せの形って何ですか?
まちゅ~@英雄属性
結婚するって本当ですか 1
もう何度目になるかわからなくなった乾杯を交わしている。
あまり酒が飲めない俺は、グレープフルーツサワーを、チビチビと。
良くお酒の好きな人には、こんなのジュースじゃんと言われるけど、俺にとっては充分お酒だ。
のど越しに通るグレープフルーツの渋みとサワーが喉元を熱くする。
対する、あいつは枡の中のコップに入った溢れそうな日本酒を、一気に飲み干す。見事に一気にだよ、凄いな。
名前は大吟醸のなんちゃら錦だったかな?酒の銘柄に疎い俺は良く覚えてない。
確か高い酒だったよな?もっと味わって飲めんでくれよ、勿体無い。
「プハーッ」
勢い良く酔っ払った、おっさんの様に一気に酒をグィッといく。
全く美人が台無しだよ。
俺は軽くため息をつきながら、目の前の美人なウワバミをぼーっと眺めていた。
黒髪ロングを腰まで伸ばした中学から、ずっと変わらない美しい髪。
そして、ここ数年で覚えたらしい薄い化粧が、切れ長の大きな形の良い目や白い頬、形の良い鼻筋を飾る。
淡いピンクのリップも小さく整った唇に良く合っている。
でも、俺は知っているんだよな、その髪は俺が中学の頃、長髪が好きだって言ったのを聞いて伸ばし始めたって事。
まぁ、それをあいつがまだ覚えてるかどうかは知らないけどさ……
こいつの事はそれこそ何でも知っている……と思う。
こいつの名前は
同い年で24歳、小中高ついには大学まで、ずっと一緒の幼馴染み。
家族ぐるみの付き合いのご近所さん良く一緒に泥まみれになって遊んだし一緒に風呂にも入った事がある。
まぁ、仲は良かったと思う。でも結局そういう関係にはなる事は無かった。所詮、幼馴染みは、幼馴染みなんだろうな……。
「プハー!!やっぱり、大吟醸は美味しいわ」
一気に飲み干して、口元を拭う。辞めろ、おっさん臭い。
「全く、ほらハンカチ使え」
俺がハンカチを渡すと、さも当然と言った風に受け取って口元と手を拭って俺に返してくる。
ハンカチに赤い口紅がつく。二十歳を二人で祝ったあの夜の事を急に思い出して恥ずかしくなり嫌になった。
「相変わらず酒が強い奴だな」
呆れた振りをして何でも無い様を装いながら俺は大根サラダと砂肝を、モシャモシャと食べながら幼馴染みを見ていると、たえは、ムッとした顔をして砂肝を食べながらお酒を飲んでいた。
相変わらず実に旨そうにお酒を飲む奴だ。
砂肝はたえの好物、俺も最初は食わず嫌いをしていたが、今では俺もこういう時は、必ず頼むほどハマってしまっている。
歯応えがあって、塩辛い砂肝が酒のつまみに良く合って、つい飲み過ぎそうになって、少し、烏龍茶を飲んで落ち着かせる。
「まことは相変わらず、お酒弱いわね」
約一ヶ月ぶりに再会した彼女は、 ほんのりと頬を赤くして呆れた顔をする。
五月蝿いなと思い、ムッとした顔をすると少し呆れ顔をされたけど、こいつの酒量に会わせていたら、俺なんか一瞬で轟沈する。
「うっさいなぁ、飲んでますー」
わざと浮かれた振りをして、空になっているグレープフルーツサワーの入っていたコップ振ってアピールする。
なんとかジュースの様なサワー系か梅酒スカッシュとウーロン茶やコーラを上手くローテーションしながら上手く誤魔化すのだ。
今日は、酒に潰れるつもりはない。こいつには、色々聞きたい事があるからな。そして、今から一番大事な話を聞こうとしている。
「なぁ、お前、けっこ……」
「ねぇまこと!!もう一杯、日本酒飲んで良い?結構!気になるのあるのよねー!!」
「あのなぁ別に良いけど、いくら奢りだからって少しは加減してくれよ?」烏龍茶を飲みながら呆れて言えば、
「何よケチっ、まぁ後で飲みたいし、ここは他ので我慢しよっと、すみませーん麦焼酎ロックでー!!ふふん後で、何にしようかなー?」
全く、今日はこいつに聞きたい事は山の様にあるのに……。
今日、俺達が一緒に飲む事になったのは、数ヶ月ぶりに会った幼馴染みとの再会を記念したものって訳では無い。
一週間前に急に来た、たえからの電話のせいだった。
本当、単なる世間話だったら良かったのにな……
☆☆☆
仕事が終わり死ぬほど疲れてソファーベットでグッタリしながらボーッと久しぶりに
慌てて手に取ると、それがさっきまで、ボーッと考えてた幼馴染みのたえからの電話だった事に更に焦る。
そう言えば、この数ヶ月あいつからのメールやラインなんて全く無かったな。それまでは頻繁に連絡来てたのに。
まぁ、俺も仕事で新しい部署にまわり馴れない仕事でグダグダだった訳だけど。
慌ててスマホを取ると、たかだか数ヶ月会っていなかっただけなのに妙に懐かしく感じる声がした。
「あのね、おひさ」
その声から何となく気まずさと構って欲しい感を感じて、急に吹き出しそうになった。
「フッ、おひさ、どうしたんだ?急に」
少し、余裕ぶって言ったのが、相手の癇に触ったらしい、
「何?用がなくちゃ、電話もしちゃ駄目なの?」
少し、怒らせてしまった様だ。慌ててご機嫌をとる。
「いやいや、別に、悪く無いけどさ、どうかしたのか?最近、音沙汰無かったけど?」
思えば、この時の俺は、まだ余裕をかましていたんだよな。
「まぁ、今回は、用があるんだけどね。」
後で、思ったんだ、この時こいつはどんな顔で電話をしていたんだろうって?本当に知りたかった。
「あのさ……けっこ……あっ、そっそう!!結婚するんだ!!」
「はっ?」
何を言ってるんだこいつは?
結婚?誰が?誰と?色々頭をよぎったが、自然に出てきたのはこんな言葉だった。
「だっ誰なんだ相手」
「なっ名前言ったって解らないでしょ?」
突き放す様な声に激しく動揺した。
「そりゃそうだけどさ……どんな奴なんだよ?」頭がグラグラしてきた。
「ん?えーと、医者だって、じゃなくて医者」ん?あぁ医者?医者かぁ……。
「えーと、その……おめでとう」
電話先の声で、ばか……と言う小さな声がする。
「何か言ったか?」
「何にも、言って無いわよ!!」
たえの勢いに負けて、つい「悪い」と謝ってしまった。何が馬鹿だよ。
「まぁ良いけど、その件もあってさ、今週末会わない?久しぶりに飲も?」
おい、結婚する奴が他の男と飲んでて良いのか?と思ったが、会って話したい気持ちが俺の方にもあった。
て言うか、これで終わられたら俺が堪らない。
「よし解った、会おうか?場所は、こっちで手配しとくわ……まぁ、その今回は俺が全部出すから」
そんな気分だった。
「なっ何よ、そんなの悪いわよ、だって……」
たえが狼狽えた様に言う。
「うっせぇ祝いだよ、それくらいさせろ!!」
「でも……」
「頼むからさ……それくらいさせてくれ。」
ちっぽけで情けないプライドだけど、それ位は俺にもあるんだよ。
「うん……なら良いけど、ありがとう」
「おぅ、また連絡する」
もっと話していたい、聞きたい事が山の様だ、なのに、今はアイツの声が聞きたく無かった。
「あのさ……ううん、何でも無い」
「そっか、じゃあ……」
「うん、じゃあ……そのゴメンね……あのさ」
何か言いたそうなたえの言葉を無視して通話を切ってからソファーにスマホを叩きつける。
「謝る位なら、結婚なんかすんなよ……」
ソファーベットで、足を抱えて丸くなった。
たえ……馬鹿やろう……結婚なんて俺は……。
馬鹿は俺か。
☆☆☆
幼馴染みかぁ。
いかん、つい嫌な事を思い出して最悪の気分になった。
結局、俺はまだこの幼馴染みに未練タラタラなのだ。
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