第6話 邂逅
大島と石田と合流した後、通りを歩いているとキャナルシティが見えたのでそこで時間を潰すことにした。
キャナルシティに向かう橋の途中で、2人から
「ちゃんと一ノ瀬さんって指名した?」と聞かれる。
あ、そういや指名すんの忘れてたわぁと思いつつ、してないと答えると今すぐ電話して指名できないか聞いた方がいいと促された。
さっき一瞬の勇気を出して、もう出したくないと思ったおれは最強の運があるから、絶対キレイな子を引き当てるということで、電話しなかった。
ちなみに瀧本さんとはAmoreで人気第2位の人で、出勤している人の中では最高ランクの人だ。写真でも分かる。カワイイ。
暗いキャナルシティの中で、ほんわかとたたずむスターバックスに入り、ホットのドロップコーヒー(スモールサイズ)を頼み、時間を潰す。
大島と石田は新作のバナナフラペチーノを頼んでいた。
やらかしたのは、コーヒーを飲んだらおしょんが止まらないということだ。
今回は途中で気づいてよかった。
大島が最中にトイレに行く時間の時給を換算した結果とこのドロップコーヒーの値段344円を比較したプレゼンを聞き、おれはコーヒーをほとんど飲まず、捨てることを決めた。22:20、スターバックスをあとにし、近くのスケボーを練習している輩がいる公園のトイレでコーヒーを勢いよく捨て、用も足す。
さぁ、いざAmoreへ。
次は颯爽と行くあのときのおじさんのように、エレベーターに乗り、2人とお別れした。
ドアが開くと「お待ちしておりました」と優しいおじさんが出迎えてくれた。
飲み物を用意しているということで、オレンジジュースを頼んだ。
右手の待機室に案内され、トイレでうがいするよう言われた。
待機室は黒の革の2人用シートが3列ならんでおり、その傍らには爪切りと爪研ぎが置かれている。
最前列の目の前には大きなテレビがあった。
待機室にはすでに2、3人野郎がおった。
トイレに入ると、モンダミンが置いてあったので、うがいってモンダミンかよっ、と思いながらももつ鍋の匂いを消したい欲求にすがるようモンダミンを口に入れる。
さらにバックに歯医者でもらった歯ブラシがあるのを思い出し、惜しみなく使った。
その間に、番号札○番のお客様、と声が聞こえていたので、そういう風に呼び出されるのかと心が躍った。
黒革のシートに座るとすぐに優しいおじさんが入ってきて、オレンジジュースを渡してくれた。
タイミングが良すぎると思ったおれは天井を見ると案の定、監視カメラがあった。
おれ、スパイ向いてんじゃね?
おれの好きな100%オレンジジュースではなかったがそれを飲み干した後、右側に置かれている爪切りで爪を切った。
まるで手マンをするのを意識していたかのように…。
爪を切り終え、少し待っていると、札番号79番のお客様、と案内の若い男の人が入ってきて、デートに誘うななどと色々書かれた禁止事項を見せられ、赤い布のカーテンの前に案内された。
「向こうに姫が待っております」
そう若い男の人は言い、カーテンをめくる
あれ、誰もいないじゃーん、と思って目線を左に落とすと、そこには黒いチャイナドレス様のお辞儀をしている姫がいた。
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