祭りの灯火
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Prologue
「明日って夏祭りあるんだっけ?」
「そうなの? 去年あったっけ?」
「あったような、なかったような」
「あったようで、なかったような?」
喧騒の中、すれ違う生徒の会話を聞いて、思う。
祭りに対するイメージなんて、その程度のもの。それでも、そこに携えられただけで幸せだったと思う。改めて沸き立つ「わくわく」を抑えつつ、今は。
下駄箱の前に立ち、大きく深呼吸をする。
言葉で言い表せない緊張が体をほとばしり、足が止まる。いや、ここで立ち止まっては自分の気持ちなんてこの先ずっと伝えられない。そう決心し、無理やり体を動かす。
あの人は、どう、思うだろうか。
もしかしたら、なんて可能性を考えてるとそれを理由にここから逃げてしまいそうだ。
言い訳だなんて今この場にはいらない。必要なのは、気持ちを伝えるための行動力。
前と同じように、また、一つ一つ丁寧な動作で、それを下駄箱の中へ入れる。
これは、今までの、お礼。
そして、明日の祭りから、また灯火がつく。
このひが消えませんようにと、願う―
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