朝がまた来る
羽弦トリス
第1話職場健康診断
甲斐雄太は電車に揺られ、コックリコックリ舟を漕いでいた。
会社、最寄駅手前で目覚め会社に向かった。
ここ最近、甲斐は非常に倦怠感があり寝ても寝ても疲労が著しかった。
会社は、多目的な木材倉庫会社。
甲斐の仕事は、運ばれた木材のキズのチェックと入荷の際の本数チェック。
この仕事に就いて15年になる。年齢は37歳。
会社の事務所に到着し、タイムカードを押すと席に着き、ビタミン剤を飲んだ。
「甲斐、おはよう。これ、ハイッ」
甲斐に缶コーヒーを渡すのは同期で同い年の南川健一。
「ありがとう。さっそく頂くよ」
「どうぞどうぞ。しかし今日はラッキーだな。仕事、3時には終わるぞ」
甲斐は顔を傾げた。
「ん?お前、忘れてるのか?今日は健康診断日だぞ!」
「あ、あぁ~、忘れてた。終わったら、飲まない?」
「いいけど、検便は?」
「今から採取する。南川、すっごいウンチしてくるね」
南川は、カレーパンを食べていて、複雑な気持ちになった。
職場健康診断は、血液検査、検便、検尿、肺のレントゲン、視力、聴力の内容だった。
5時には検診を終えて、2人はタクシーを呼んだ。
会社からタクシーを20分走らせて向かった居酒屋は千代である。
もう、入社して歓迎会を開いてもらったのがこの店で、それ以来ずっと通っているので、千代婆さんもまだ、バリバリで孫の
あの、おてんば娘が今は巨乳で美人の若女将になるとは、2人はお互いの年齢をつらつらと考えると時間が過ぎるのは早いものだ。
暖簾をくぐると、
「あらっ、いらっしゃい。甲斐ちゃんに、南川ちゃん」
「こんばんは、千代ばぁ。あらっ、凛ちゃんは?」
「今、病院」
「えっ、病気?」
と、甲斐が聞くと、千代婆さんはお腹を丸く描く様に仕草した。
「えぇ~、妊娠」
「そう、おめでた」
「これはこれは、おめでとうございます」
南川が祝福の言葉を述べた。
「じゃ、生ビール」
バイトの男の子が、注文を取っていた。
かんぱ~い
2人は生ビールを牛乳の如く飲み干し、2杯目を注文した。
「健康診断なんて、必要ねぇよなぁ?南川」
「あぁ、こうやって飲めるのは健康の証だよ。しかし、あれだな、お前最近ビタミン剤ばかり飲んでるじゃん」
南川は鯉の洗いを口に運びながら言った。
甲斐は一口飲み、
「最近、疲れが取れないんだ。寝ても寝ても疲労感がハンパないんだ」
「今夜は、酒飲んだから深く眠れるだろ」
「まぁな」
この晩、2人は22時まで飲み帰宅した。
二週間後、健康診断の結果が郵送された。
そこには、
【要精密検査】
と、印字されていた。
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